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弁護士コラム

2024年09月26日
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傷害事件の慰謝料を払わないと何が起きる? 払えないとどうなるのか

傷害事件の慰謝料を払わないと何が起きる? 払えないとどうなるのか
傷害事件の慰謝料を払わないと何が起きる? 払えないとどうなるのか

人を殴って怪我をさせるなど傷害事件を起こして逮捕されれば、被害者から慰謝料を請求される可能性があります。特に被害者が受けた損害が大きい重い場合には、慰謝料が高額になることも想定されます。できれば慰謝料は支払いたくないと考える方がいるかもしれませんが、支払わないことにはリスクもあるので注意が必要です。

一方で、慰謝料が高額で支払えないケースもあるかもしれません。そのような場合、どのように対処すればよいのか気になる方も多いでしょう。

今回は、身内が傷害事件を起こしてしまったケースを想定し、傷害事件における慰謝料の意味や罰金との違い、慰謝料を支払わない場合のリスク、示談交渉の重要性などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

目次

  1. 1、傷害事件の慰謝料とは? 高額になる可能性はある?
    1. (1)傷害事件における慰謝料の意味
    2. (2)慰謝料はどのように決まるのか
  2. 2、傷害事件の慰謝料と罰金、両方を払わなければならない?
  3. 3、傷害事件の慰謝料を払わない場合どうなる? リスクはある?
    1. (1)慰謝料を払うことはメリットがある
    2. (2)示談を反故にするリスク
    3. (3)慰謝料が高額で支払えないときはどうするべきか
  4. 4、傷害事件の慰謝料に関する交渉は弁護士に相談を
    1. (1)示談成立の可能性が高まる
    2. (2)法外な慰謝料請求を回避できる
    3. (3)身柄を拘束されていても示談交渉ができる
  5. 5、まとめ

1、傷害事件の慰謝料とは? 高額になる可能性はある?

傷害罪は、人に傷害を加えることで身体の安全を脅かす重罪です。したがって、慰謝料は高額になることがあります。

  1. (1)傷害事件における慰謝料の意味

    傷害事件の慰謝料とは、被害者が受けた精神的苦痛に対する賠償金を指します。

    被害者は怪我をしたことで通院や入院を余儀なくされたり、恐怖心を抱いたり、屈辱的な思いをしたりして精神的に傷ついています。これに加え、傷害事件では被害者が怪我などの損害を受けていますので、加害者は治療費や通院費などの実費も負担しなくてはなりません。

    だからこそ、金銭で賠償する必要があるのです。被害者が怪我により仕事を休まざるを得ない場合には休業補償が必要であり、後遺症をもたらしてしまった場合には将来得られたであろう利益(逸失利益)を支払う必要もあるでしょう。

    そのため、被害者と示談をする場合はこれらの金銭をあわせて示談金として支払うことになります

  2. (2)慰謝料はどのように決まるのか

    傷害事件で被害者が受けた精神的苦痛を数値化することは困難であり、損害の程度も事件によって大きく異なります。そのため、傷害事件の慰謝料に相場と呼べるようなものはありません。あくまでも被害者側との合意で決まります。高額になることもあれば、想定していたよりも少額で済むこともあるということです。

    ただし、通常は、事件の悪質性や被害状況を考慮したうえで慰謝料の金額を決めることになります。たとえば、被害者の傷が浅く早期に回復できる状況であれば、慰謝料は高額になりにくいといえます。

    一方、完治までに何か月もかかるような重大な怪我を負わせてしまったのであれば、治療費はもとより、被害者の精神的苦痛は甚大でしょう。慰謝料は相当程度、高額になる可能性があります。

2、傷害事件の慰謝料と罰金、両方を払わなければならない?

傷害罪の刑罰は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。仮に罰金刑で済んだ場合、被害者への慰謝料と罰金を両方払わないといけないのでしょうか。

まず、ここで覚えておきたいことは、慰謝料と罰金はまったく別のものであるということです。
「罰金刑」は、罪を犯して有罪となった者に対し、刑事責任を果たすために科される刑事罰の一種です。罰金の支払先は国であり、国の予算として使われるお金です。そのため、傷害罪で罰金刑となったものの罰金を払えない場合というには、代わりに労役場で労働をしなくてはなりません。

他方、「慰謝料」は被害者に対する民事責任を果たすために払う賠償金の一部です。刑事責任と民事責任は性質が異なるものです。

したがって、罰金と慰謝料はどちらも払う必要があります。

もっとも、「慰謝料」は被害者と合意さえしなければ払わなくて済むと考えることもできます。しかしこの場合、被害者への民事責任を果たしていないことになります。したがって、刑事裁判が終わったあとなどに訴訟を起こされ、賠償金を請求される可能性があります。

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3、傷害事件の慰謝料を払わない場合どうなる? リスクはある?

傷害事件の示談交渉がまとまったものの、慰謝料を払わないでいると何が起きるのでしょうか。慰謝料が高額になった場合に払わない方法はあるのでしょうか。

  1. (1)慰謝料を払うことはメリットがある

    加害者の立場からすれば、慰謝料の支払いは経済的負担が重く、デメリットにしかならないと思うかもしれません。しかし、被害者と示談を成立させて慰謝料やそのほかの賠償金を支払うことは大きなメリットがあります。

    まず、示談においては、慰謝料を含む「示談金」を支払う代わりに処罰を求めないように交渉することができます。被害者の処罰感情は起訴・不起訴処分の決定や量刑判断に大きな影響をおよぼします。したがって、「宥恕(ゆうじょ)」の意志と呼ばれる、加害者を許したという被害者からの表明を盛り込んだ示談書を提出することで、処分の軽減につながる可能性が高まります。不起訴となれば前科がつきません。

    また、示談金の支払いをもって、当事者には何ら債権債務がないことを明白にできるため、今後被害者から民事訴訟を起こされるリスクを回避できることでしょう。

  2. (2)示談を反故にするリスク

    示談で取り決めた約束を破ると、前述した示談成立のメリットを享受できません。被害者は約束を反故にされて厳罰を望むことが予想されますし、検察官や裁判官の心証も著しく悪化させる可能性があります。

    その結果、起訴、有罪判決の可能性がそれぞれ上がってしまうことになります

    また、被害者が慰謝料請求訴訟を起こせば、強制執行により加害者本人の財産や給与などを差し押さえられてしまう可能性もあります。示談金を払わないでいると、少なくとも時効となる前には訴訟を起こされるおそれがあるといえます。

    さらに示談の中で示談金不払い時における違約金の定めをしていた場合には、違約金の支払い義務も生じます。

    これらのリスクを考えれば、約束した慰謝料を払わない方法はないと覚悟しておくべきでしょう。

  3. (3)慰謝料が高額で支払えないときはどうするべきか

    傷害事件で被害者が受けた損害が大きい場合には慰謝料の額が高額になり、本人やご家族には支払いが難しいこともあるでしょう。

    この場合、まずは交渉において減額を求めることが必要です。給与明細や預金通帳などを見せ、本当に資力がないことを丁寧に説明するなどの方法もあります。しかし、むやみに減額交渉すると、示談そのものが不成立となるおそれが生じます。

    次に、金額自体の交渉ではなく、分割払いができるのかを交渉することも考えられます。分割であれば払える可能性が生じますが、あくまでも被害者から分割払いを許可してもらわなければなりません。

4、傷害事件の慰謝料に関する交渉は弁護士に相談を

傷害事件の被害者は精神的、肉体的に傷ついており、処罰感情が強まる傾向があります。示談成立までのハードルは極めて高く、繊細な交渉が求められますので、交渉は弁護士へ一任することが賢明です。

  1. (1)示談成立の可能性が高まる

    加害者本人やそのご家族が示談交渉を求めても、被害者に対して余計に恐怖心を与えたり、怒りの感情を高めたりして、さらなる事態悪化を招くことが往々にしてあります。示談交渉自体を拒否されてしまうケースも珍しくありません。

    刑事手続きは刻一刻と進みますので、交渉の開始時期が遅くなるほど処分が重くなるおそれが生じます。

    この点、弁護士が代理人となれば、被害者側が交渉に臨むハードルが下がり、交渉がスムーズに進みやすくなります。また、被害者の連絡先を知らない傷害事件については、そもそも捜査機関が加害者に対して被害者の連絡先を教えてくれることはありません。しかし、弁護士を介してであれば連絡できる可能性が高まります。

  2. (2)法外な慰謝料請求を回避できる

    慰謝料の額に相場はありませんが、類似の事件が参考にされることが多々あります。

    刑事事件に詳しい弁護士であれば、ご家族が起こした傷害事件と似た事件をもとに示談金の額を交渉しますので、被害者が一方的に法外な請求をしてきても拒否することが可能になります。
    まずは弁護士へ相談し、おおよその慰謝料の額を計算してもらうとよいでしょう。

    傷害事件を起こしてしまった以上、しっかりと慰謝料を支払うことは必要ですが、不当に高い慰謝料を払う義務まではありません。弁護士が交渉することで、事件の内容に即した額に抑え、また、高額となった場合の分割交渉なども、弁護士から依頼したほうが認めてもらいやすくなるでしょう。

  3. (3)身柄を拘束されていても示談交渉ができる

    傷害事件を起こした本人が逮捕・勾留によって身柄拘束を受けている場合でも、弁護士に依頼すれば、代理人として速やかに示談交渉を開始することができます。刑事事件における示談交渉はスピード感をもった対応が重要です。

    起訴前に示談を成立させることができれば、不起訴処分を獲得できる可能性も高まります。そのためには、逮捕された被疑者のために、ご家族が刑事事件の解決実績が豊富な弁護士を探して依頼することも大切です。

5、まとめ

身内が傷害事件を起こして逮捕された場合、慰謝料を支払わなければならない可能性があります。慰謝料を支払いたくないといって支払わなければ、不起訴や量刑判断に影響をおよぼしたり、被害者から訴訟を起こされたりするおそれもあります。

ただし、不当に高額な慰謝料を支払う必要はありません。傷害事件の慰謝料は刑事罰である罰金と異なり、被害者との交渉によって金額が決まるため、この交渉こそ傷害事件を起こした本人の処遇および慰謝料の額を決定づける極めて重要な場面です。したがって、本人はもとより、ご家族であっても安易に被害者へ連絡するようなことはせず、弁護士を介して慎重に交渉するほうがよいでしょう。

ベリーベスト法律事務所では、刑事弁護に関する知見豊かな弁護士が代理人となり、刑事、民事ともに過剰に重い責任を負わされないように全力でサポートいたします。傷害事件の示談交渉は時間との勝負です。家族が傷害事件を起こして逮捕された場合、できるだけ早期にご連絡ください。

本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

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※本コラムは公開日当時の内容です。
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