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パワハラ・セクハラは強要罪? 脅迫・恐喝との違いや逮捕された場合の対処法とは
歓迎会や忘年会で新入社員に一発芸をさせようとして、従わなかったから物を投げつけた。飲み会で親しみを込めてボディタッチをして、相手もはっきりと嫌がる様子を見せなかったから、さらに触れた。
こうした行為は、いくら悪気がなかったからといってもパワハラやセクハラに当たりかねず、悪質な場合は刑法上の強要罪に該当する可能性があります。
このように罪を犯すつもりのない行為でも、実は犯罪に当たり、逮捕されることがないとは言えません。今回は、強要罪や脅迫罪、恐喝罪の違いとそれぞれの刑罰や時効、万一逮捕された場合の流れについて解説します。
1、強要罪とはどういった犯罪なのか
まずは刑法上の罪に当たる強要罪がどういった犯罪なのかを具体的に見ておきましょう。
強要罪とは、「暴行」または「脅迫」を手段として、人に義務のない行為を行わせ、または権利の行使を妨害することにより成立する犯罪です。
「暴行」とは、相手を畏怖させて自由な意思決定を妨げ、その行動の自由を制限するに足りる程度のものをいいます。
「脅迫」とは、相手方またはその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対し害を加える旨を告知することです。「暴行」と同様に、相手を畏怖させて自由な意思決定を妨げるほどのものである必要があります。
義務のない行為とは、法律上の義務のない行為を指します。パワハラやセクハラは職場などで行われることが多いですが、「暴行」「脅迫」を用いて、業務の遂行とは関係のない事項や適正な範囲を超える行為を強制する場合であれば、強要罪が成立する可能性があります。
たとえば、「暴行」「脅迫」を用いて、上司が部下に土下座を強制するような場合などが考えられます。
中には「自分も上司に似たようなことをされたから」「周りもやっているから」などの理由で、自分でも意識しないうちに犯罪を行っているケースもあります。しかし、悪気がないことや周囲が同様の行為をしていることは、決して免罪符にはなりません。告訴されて逮捕に至る可能性はあるため、注意が必要です。
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2、強要と脅迫・恐喝の違いとは?
似通った面もある強要と脅迫、そして恐喝ですが、きちんと見ていくと別物です。ここでは、それぞれの違いを確認しておきましょう。
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(1)脅迫罪とは
脅迫罪とは、脅迫行為それ自体を処罰の対象とするものであり、それにより相手が現実に畏怖したことは要件ではありません。
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(2)恐喝罪とは
恐喝罪とは、強要罪と同様に暴行や脅迫を手段として、財産を交付させるという犯罪類型です(刑法第249条第1項)。借金の返済を免除させるなど財産上不法な利益を得、または他人に利益を得させた場合も同様です(第2項)。強要罪との違いは、義務なき行為をさせる中でも、特に「財産の交付」という結果に限定されている点です。また、「脅迫」の内容は、相手方またはその親族の生命・身体・自由・名誉もしくは財産に対するものに限られません。
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3、強要罪・脅迫罪・恐喝罪の刑罰と時効
犯罪の内容が違うというのは、刑罰や時効が異なるということでもあります。それぞれの刑罰と時効の違いを見てみましょう。
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(1)強要罪の場合
法定刑は3年以下の懲役です。身体への加害(暴行)も含まれるのに加え、義務なき行為をさせたり権利行使を妨害したりするものでもあるところから、脅迫のみに比べ罪は重く規定されています。
強要罪の時効(公訴時効)は3年です。 -
(2)脅迫罪の場合
法定刑は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。強要罪や恐喝罪との違いは、罰金刑が存在する点にあります。刑務所に行くかどうかは今後の社会生活にも影響する重大な問題です。
脅迫罪の時効も同様に3年です。 -
(3)恐喝罪の場合
強要罪、脅迫罪と比較して重く、法定刑は10年以下の懲役です。
時効は7年となっています。公訴時効は刑罰の重さに応じて定められているため、重い罪ほど時効も長くなるのです。
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4、強要罪で逮捕された場合にすべきこと
以下では、強要罪で逮捕された場合の対処法についてご説明します。
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(1)逮捕へ至る流れ
被害者が警察へ被害届を出すと、警察による捜査が開始されます。そのまま逮捕せずに在宅事件として捜査が継続されることもありますが、悪質性が高い場合などは加害者が逮捕される可能性があります。
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(2)反省を示す
加害者本人が脅迫や暴行をした自覚なしで罪を犯している場合もあります。むしろ相手のためにやったと思い込んでいるケースもあり、率直な反省を示すことの難しさがうかがえます。しかし、反省が見えないと刑が重くなることもありますので注意しなければなりません。
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(3)示談交渉で不起訴を目指す
一般に、起訴されてしまうと9割近くで有罪判決を受けます。したがって、起訴される前に示談交渉をまとめることが大切です。ただ、加害者が直接示談交渉を持ち掛けても応じてもらえない可能性があり、また逮捕されてしまうと示談交渉へ赴くこともできません。
加害者本人ではなく弁護士であれば、被害者も示談交渉に応じるということもありますので、一度弁護士に相談されることをお勧めいたします。
もっとも、強要罪は被害者の告訴を要しない非親告罪なので、示談がまとまって被害届が取り下げられたとしても、なお起訴される可能性はあります。 -
(4)執行猶予付きの判決を目指す
示談交渉が決裂し、あるいはまとまったとしても起訴された場合、なるべく軽い刑となるように活動を行うことになります。
よほど行為態様等が悪質であったり、前科があったりしなければ、執行猶予付き判決となる可能性はありますが、そのためには弁護士による適切な弁護活動が必要となります。 -
(5)逮捕されたらすぐに弁護士へ相談を
逮捕後72時間は、弁護士しか被疑者に会うことができません。示談交渉はできる限り早く取り掛かることが重要なので、なるべく速やかに相談するとよいでしょう。不起訴処分や執行猶予付きの判決獲得に向けて、弁護士は心強い味方となります。
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5、まとめ
会社において、部下に強い言葉をもって何らかの要求を行うことは決して珍しくありません。しかし、それが強要罪に当たる程度の行為となれば、大きな問題です。逮捕されて起訴に至ると、有罪となり実刑判決を受ける可能性もあります。
強要罪との自覚なしに相手を追い詰めてしまった、身近な人が強要罪の容疑で逮捕されてしまったなど、お悩みを抱えている方は、刑事事件の実績豊富な弁護士に相談してみることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、強要罪や脅迫罪、恐喝罪などの容疑で逮捕されてしまった際にも、弁護士が迅速な対応を行っております。被害者との示談交渉や執行猶予付き判決を目指した弁護活動など、刑事事件に関するご相談については、お気軽にお問い合わせください。
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