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恐喝罪となる場合の証拠・逮捕の要件とは? 逮捕後の対応について解説
平成30年における恐喝罪の認知件数は1753件あり、決して珍しい犯罪ではありません。友人・知人間など比較的身近な関係でも起こり得る犯罪です。
恐喝行為を行うと、法律ではどのような罪に問われ、何が証拠となって逮捕にいたるのでしょうか。似た犯罪に脅迫罪がありますが、恐喝罪とはどのように違うのでしょうか。
この記事では、恐喝罪の成立要件や逮捕の要件、証拠などについて弁護士が解説します。
1、恐喝罪「刑法249条」とは
暴行や脅迫によって財物を交付させ、あるいは財産上の利益を得たり他人に得させたりする犯罪を法律で恐喝罪として定めています(刑法249条)。
典型的なものとしては、いわゆるカツアゲやタカリなどの行為が該当します。ほかにも、お金を貸している相手に暴力をふるって返済させる、タクシーの運転手を脅して料金の支払いを免除させる、弱みにつけ込み高額商品を購入させるなどの行為も恐喝罪にあたります。
法定刑は10年以下の懲役です。罰金刑はありませんので、有罪になれば執行猶予がつかない限り刑務所へ収監されます。
未遂も罰せられます(刑法250条)。未遂とは恐喝行為を始めたが目撃者がいて逃走したため財物を奪えなかった場合などを指します。既遂と同じ法定刑の範囲内で量刑が言い渡されます。
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2、恐喝罪の成立要件
恐喝罪が成立するには、まず故意が必要です。故意とは、被害者に暴行や脅迫をして財物を交付させて自分の物として扱おうとする意思をいいます。恐喝罪は財産に関する犯罪なので、たとえば単に被害者を怖がらせてやろうと思っただけでは恐喝の故意はなかったことになります。
次に、恐喝の実行行為があったことが必要です。実行行為とは、結果発生の現実的危険性がある行為及びこれに密接に関連する行為をいいます。
さらに被害者が財物を交付するという結果と実行行為との間に因果関係が認められると、恐喝罪が成立します。
恐喝罪の暴行や脅迫は、人を畏怖させる(怖がらせる)程度のもので足りるとされているため、必ずしも殴る蹴るなどの暴力行為は必要ありません。
たとえば、拳をふりあげて暴力をふるうように見せる、脅迫文を送るなどの行為が該当します。「警察に告訴してやる」と告げる行為も、告訴自体が正当な行為だとしても、金銭絡みの強硬な主張は恐喝罪にあたり得るため注意が必要です。
畏怖するかどうかは被害者の感情なので人によって異なりますが、最終的には客観的な観点から判断されることになります。
なお、暴行や脅迫の程度が被害者を怖がらせるのにとどまらず、反抗を抑圧するか著しく困難にする程度に達し、無理やり財物を奪った場合は強盗罪にあたります。
反抗を抑圧する程度かどうかの判断は、暴行や脅迫の様態、犯行場所や時刻、被害者の性別や年齢などさまざまな要素を加味しておこなわれます。
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3、恐喝罪の証拠となり得るもの
恐喝事件は通常、被害者が警察へ被害を相談することで発覚します。証拠があれば警察が捜査を開始し、逮捕されるおそれがあるでしょう。
証拠としては、次のようなものがあります。
- 恐喝の様子が分かるボイスレコーダーや動画
- 恐喝メールやLINE、ブログやネット掲示板などのスクリーンショット、脅迫文書
- 恐喝の直後に被害者が書いた日記やメモ
- 被害者が第三者に被害状況を相談していた事実
- 加害者が反社会的勢力であると示したこと
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(1)脅迫罪との違い
脅迫罪は、被害者本人またはその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対し害を加える旨を告知する犯罪です(刑法222条)。
恐喝罪が財物の移転などの結果をともなう罪であるのに対し、脅迫罪は相手を脅すだけで成立します。したがって、脅迫罪に未遂罪はありません。
また、脅迫罪が害を加える旨を告知する対象は被害者本人とその親族に限定されるのに対して、恐喝罪ではこのような制限はありません。
たとえば「お前の恋人を痛い目に遭わせる」などと告げても脅迫罪の脅迫にはあたりませんが、恐喝罪における要件としての脅迫には該当します。
法定刑についても、恐喝罪が10年以下の懲役であるのに対し、脅迫罪は2年以下の懲役または30万円の罰金です。恐喝罪と比較して懲役の上限が短い、罰金刑となる可能性があるといった大きな違いがあります。
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4、恐喝罪における逮捕の要件
逮捕には主に現行犯逮捕と通常逮捕の2つがあります。現行犯逮捕は逮捕状なしでおこなう逮捕を、通常逮捕は裁判官が発付した逮捕状にもとづく逮捕をいいます。
現行犯逮捕は私人でも可能な行為なので、犯人の取り違えなどが起きないよう犯行の最中やその直後などにしかできないことになっています。
恐喝事件では、目撃者が通報して警察官が駆けつけたところに加害者がまだ現場で被害者を暴行していたケースや、巡回中の警察官が恐喝現場を現認したケースなどが考えられます。
ただ恐喝事件では誰にも見られないように犯行におよぶ場合も多いため、現行犯逮捕されるケースはそれほど多くないといえるでしょう。
通常逮捕は、その人が罪を犯したと疑う相当な理由があり、逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合におこなわれます。
具体的には、証拠があるのに逃げ隠れする、共犯者と口裏合わせをした、住所が不定といった場合です。犯行様態が悪質で被害額が大きい、犯行にあたり凶器を使用したなどの場合も、重い刑罰を科されるおそれがあることから被疑者が逃亡する可能性があるため、通常逮捕にいたるケースは少なくありません。
反対に、悪質性がそれほど高くない恐喝事件では、警察から任意で事情を聴かれた際に素直に応じて嘘もつかなければ、逮捕されない可能性があるでしょう。
通常逮捕されるまでに定められた日数はありません。したがって現行犯逮捕されていなくても、公訴時効が完成していない限り、逮捕される可能性は残っています。
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5、逮捕されたらどう対応すべきか?
恐喝の容疑で逮捕されてしまったら、被害者との示談交渉がとても重要となります。怖がらせてしまったことを丁寧に謝罪して反省の意思を示し、奪った金銭の返還や慰謝料を払うなどして損害を回復させることで、示談に応じてもらえる可能性があるでしょう。
しかし恐喝事件の被害者は怖い思いをさせられ、財産まで奪われたわけですから、加害者からの直接交渉に応じないことも少なくありません。そもそも連絡先すら教えてもらえないということも考えられます。弁護士であれば、捜査機関を通じて被害者の連絡先を教えてもらえる可能性がありますので、示談交渉は弁護士を通じて行うことをおすすめいたします。
恐喝事件における示談の目的は、何よりも被害者へ謝罪をして被害回復を図ることですが、刑事手続きにおいても不起訴処分の可能性が高まるという重要な意味があります。当事者間での示談が成立し、被害者から許しを得られたのであれば、起訴して裁判を行う必要性が低くなったと検察官が考えるからです。
不起訴処分となれば前科はつきませんので、社会生活への復帰がスムーズになるでしょう。万が一起訴され裁判で有罪判決となった場合でも、示談が成立していれば量刑において考慮されたり、執行猶予がつく可能性もあります。
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(1)「示談成立=必ず不起訴処分」ではない
示談が成立しても、必ず不起訴処分となるわけではありません。
とはいえ、検察官が起訴を判断するうえで、「被害者の処罰感情」を考慮していますので、示談が成立していれば不起訴処分の可能性は高まるでしょう。一方で、示談が不成立となれば起訴されるリスクや重い処罰を受けるリスクが高まりますので、示談は非常に重要といえます。
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6、まとめ
恐喝罪は10年以下の懲役刑しか規定されていない犯罪なので、裁判になれば実刑判決がくだる可能性があります。量刑は犯行の悪質性や被害状況などさまざまな事情をもとに判断されるため、初犯だからといって実刑を免れるとは限りません。しかし被害者との示談が成立すれば不起訴処分や執行猶予付き判決になる可能性を高めることができます。
恐喝行為で逮捕されてお悩みであれば、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。刑事事件における加害者弁護の実績が豊富な弁護士が示談交渉や今後の対応をサポートします。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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