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弁護士コラム

2020年05月18日
  • 暴力事件
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暴行罪で緊急逮捕? 緊急逮捕されるケースやその後の対処法を解説

暴行罪で緊急逮捕? 緊急逮捕されるケースやその後の対処法を解説
暴行罪で緊急逮捕? 緊急逮捕されるケースやその後の対処法を解説

令和元年版の犯罪白書によると、平成30年中の暴行事件の認知件数は3万1362件、検挙件数は2万6212件でした。さらに、暴行事件を起こして逮捕された総数は1万6574件で、36.2%の暴行事件が逮捕を伴ったものでした。

逮捕といえば現行犯逮捕や逮捕状による逮捕をイメージしがちですが、逮捕の種類には「緊急逮捕」というものも存在します。緊急逮捕とはどのような状況で行われるのでしょうか? 暴行事件を起こして緊急逮捕されることはあるのでしょうか?

本コラムでは、暴行事件と緊急逮捕の関係を中心に解説していきます。

1、暴行罪で緊急逮捕はされるのか?

暴行事件を起こした場合、緊急逮捕されることはあるのでしょうか?

  1. (1)暴行罪では緊急逮捕されない

    結論から言うと、暴行罪で緊急逮捕されることはありません。

    緊急逮捕は、厳格な条件を満たしていない限り執行できず、条件のひとつとして「罪状の重い一定の犯罪」のみに適用できるとされています。
    暴行罪の法定刑は、刑法第208条によって「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」と定められており、緊急逮捕が可能な「罪状の重い一定の犯罪」にはあたらないのです。

  2. (2)別の事件で緊急逮捕されるおそれがある

    状況次第では、犯行内容が非常に悪質で、暴行罪ではなく「罪状の重い一定の犯罪」に該当するような法定刑が適用された場合は、緊急逮捕が認められるおそれがあります。

    暴行罪と強く密接しているのが「傷害罪」です。他人に暴力を加えた結果、相手にケガをさせてしまった場合は傷害罪が成立しますが、傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」で、緊急逮捕の対象となります。

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2、緊急逮捕される要件について

緊急逮捕は、犯罪が発生し、目撃情報などから周辺を捜索していたところ容疑者と思われる人物を発見したが、いますぐ逮捕状を請求できるわけでもなく、また現行犯逮捕するには時間的にも場所的にも離れすぎているようなケースで用いられます。

緊急逮捕の根拠は刑事訴訟法第210条で、次の要件を満たしている場合にのみ執行が認められます。

  • 死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁錮にあたる罪であること
  • 「長期3年以上」とは、最長で3年以上の懲役または禁錮が科せられるという意味です。たとえば法定刑が「10年以下の懲役」であれば10年までの懲役が科せられるので緊急逮捕の対象になります。

  • 罪を犯したと疑うに足りる「十分」な理由があること
  • 逮捕状請求には「相当」な理由が認められますが、ここではさらに強い嫌疑が求められます。

  • 急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないこと
  • 被疑者が逃走の気配をみせているなど、逮捕状を請求する暇(いとま)がない場合に限られます。


これらの要件を満たし、さらに被疑者に対して「どのような事件について逮捕されるのか」の理由を告げたうえで、直ちに逮捕状を請求することを条件に、緊急逮捕が認められます。緊急逮捕は現行犯逮捕のように「逮捕状が不要」なのではなく「逮捕状をあとから請求する」もので、令状主義に反するものではないとされています。
これは、緊急逮捕ののちに逮捕状を請求したところ、裁判官に逮捕状請求が却下された場合には、直ちに被疑者を釈放しなくてはならないという点からも明らかでしょう。

なお、指名手配のように「逮捕状が発付されているが、その場に逮捕状はない」という場合は、逮捕状の「緊急執行」が行われます。呼び名が非常に似ていますが、すでに逮捕状が発付されているという点で緊急逮捕とはまったく性格が異なる方法です。

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3、逮捕後の流れ

暴行事件を起こして逮捕されるのは「通常逮捕」と「現行犯逮捕」のいずれかの方法に限られます。

通常逮捕の場合は、事件を起こして警察署に任意同行されて取り調べを受けている間に逮捕状が請求されるか、または事件の後日に逮捕状をもった警察官が訪ねてきて逮捕されるかのいずれかになるでしょう。

現行犯逮捕であれば、事件を起こしたそのときや直後、その場で身柄を拘束されます。現行犯逮捕は、事件が起きている最中や事件が起こった直後に行われるため、犯人を取り違えるおそれがほとんどなく、民間人でも逮捕が認められています。これを「私人の現行犯逮捕」といいます。

逮捕後の流れは、通常逮捕でも現行犯逮捕でも同じです。警察署の留置所で身柄拘束を受け、警察官による取り調べを受けたのち、引き続き捜査必要と判断された場合は、逮捕から48時間以内に検察庁へと送致されます。送致を受けた検察官は24時間以内に起訴・釈放を判断しますが、取り調べや捜査が尽くされていない場合は身柄拘束の延長を求める「勾留請求」を行います。

勾留が認められると、原則10日間、延長で10日間、合計で最長20日間の身柄拘束を受けたのち、検察官が起訴・不起訴を決定します。起訴されて刑事裁判が開かれると、裁判所は有罪か無罪かを審理し、有罪の場合はどの程度の刑罰が適当であるかが審理されるという流れです。

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4、暴行罪で逮捕された場合の弁護活動

暴行罪で逮捕された場合は、どのような方針で事件解決を目指すのかによって弁護活動が変わります。

  1. (1)容疑を認める場合

    暴行の事実が明らかで、自分でも反省している場合は、なるべく早く弁護士を交えて被害者と示談交渉を行うべきでしょう。
    被害者に反省の意思を伝え、暴行によって与えた損害について賠償し、示談が成立すれば、検察官が不起訴処分を下す可能性が高まります。起訴のリスクを回避できるだけでなく、身柄拘束を受けていても早期釈放が期待できるでしょう。
    もし、検察官が起訴しても、示談が成立していれば量刑が考慮される可能性もあり、刑罰が減刑される可能性もあります。

    被害者との示談交渉は、被疑者本人やその家族が直接行おうとすると難航するケースも少なくありませんので、弁護士を代理人として交渉を進めることをおすすめいたします。

  2. (2)無罪を主張する場合

    暴行をはたらいた覚えがないなど、暴行が疑われる事実はあるが不可抗力や正当防衛によるものだといった場合は、無罪を主張することも考えられます。
    日本の司法制度では、起訴されてしまうと約99%を超える非常に高い割合で有罪判決が下される状況にあります。弁護士に依頼すれば、無罪であることを合理的に証明できる証拠をそろえて検察官にはたらきかけることで、不起訴処分の獲得が期待できます。
    起訴されてしまった場合でも、法廷において無罪を証明する証拠を提示し、無罪判決の獲得を目指します。

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5、まとめ

暴行事件を起こしても、緊急逮捕されることはありません。
ただし、傷害罪などのように別の重大な犯罪の嫌疑をかけられて緊急逮捕されるリスクはあります。
暴行罪は「罪状の重い一定の犯罪」にあたりませんが、かといって有罪に問われれば前科がついてしまいます。暴行により逮捕されてしまった場合は、なるべく早く弁護士へ相談されることをおすすめいたします。

暴行事件の解決を目指すなら、刑事事件の弁護実績が豊富なベリーベスト法律事務所にお任せください。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

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当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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