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少年(未成年)が起こした強盗致傷事件の量刑は? 親の責任や家族ができること
未成年の家族が強盗で人を負傷させ逮捕された場合、今後どのような厳しい処分を受けるのか、量刑はどうなるのか、不安でたまらない気持ちになるはずです。一方で、未成年という点が考慮され、軽い処分で済むのではないかとの期待を持つかもしれません。
大原則として、個人が起こした事件の責任は、本人のみが負うことになり、未成年でも同様です。ただし被害者の保護や未成年の更生は重要な問題であるため、一定の例外があります。
今回は、少年(未成年)の起こした強盗致傷事件をテーマに、少年はこれからどうなるのか、親の責任範囲はどこまでおよぶのかを解説します。減刑のために家族が何をするべきなのかについても知っておきましょう。
1、強盗致傷事件、少年(未成年)が加害者の場合
強盗をして人を負傷させると、ニュースなどでは強盗致傷事件と呼ばれることがありますが、正式には刑法第240条の「強盗致死傷」罪に問われることになります。成人であれば厳罰に処される重罪ですが、時折、少年(未成年)が加害者となる事件も起きています。
事件を起こした少年が今後どうなるのかは、年齢によって大きく異なります。
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(1)14歳未満の場合
刑法第41条では、14歳未満を罰しないと定めています。
したがって、強盗致傷事件を起こした少年が14歳未満であれば逮捕されることも、罪に問われることもありません。ただし、調査という名目で警察による取り調べは行われます。また、一定の重大事件の場合には少年の身柄が児童相談所に一時保護され、その後家庭裁判所へ送致されることもあります。さらに、調査の過程で少年や保護者の方が警察から話を聞かれたり、家宅捜索を受けたりすることもあるでしょう。 -
(2)14歳以上の場合
14歳以上の場合は未成年でも刑事責任能力があると判断されるため、逮捕され、取り調べを受けます。
ただし、罰を与えて罪を償わせることを目的とした成人が犯した刑事事件と異なり、更生を目的とした処分が行われます。したがって、原則として家庭裁判所の少年審判にかけられることになるでしょう。
少年審判は成人の場合における刑事裁判の役割を果たす場所ですが、更生後の少年が社会生活において不利益を被らないために非公開で行われます。そこで保護観察や少年院送致などの処分が決まります。
ただし、未成年であっても、一定の重大犯罪は家庭裁判所から検察へ「逆送致」されることがあります。その際は刑事事件として扱われ、刑法で処罰されることがあることを知っておく必要があります。なぜなら、強盗致傷事件であれば、刑事裁判にかけられる可能性があるためです。
なお、強盗致傷、つまり強盗の末、人を負傷させてしまったときの刑罰は「無期または6年以上の懲役」です。そして強盗致死、つまり強盗の末、人を死亡させてしまったときは「死刑または無期懲役」の刑罰が、いずれも刑法第240条において設定されています。
有罪になればこの範囲で量刑が言い渡され、前科もつくことになります。
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2、少年(未成年)事件における親の責任について
自分の子どもが犯罪の加害者になっても、親自身が逮捕されたり刑事罰を受けたりすることはありません。しかし、民事上の損害賠償責任を負うケースがあります。
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(1)少年に責任能力がある場合
民法第712条では、未成年のうち責任能力のない者は賠償責任を負わないと規定されています。
ここで示す「責任能力」とは、自分の行為の結果として何らかの法的責任が生じるかどうかを判断する能力です。そして責任能力がないとみなされるのは、おおむね12歳程度までとされています。したがって、強盗致傷を犯した少年がこの年齢を超えている場合は、原則として少年自身が責任を負うことになるでしょう。なぜなら、民法では「個人責任の原則」を基準に判断するためです。
ただし、親が通常の監督義務を尽くさずに発生した損害については、少年とともに親にも民法第709条の不法行為による賠償責任が生じることがあります。仮に少年本人のみに責任が認められても資力がないことが多いため、実際には親が賠償金や示談金を肩代わりして支払うケースがほとんどでしょう。 -
(2)少年に責任能力がない場合
民法第714条では、責任能力のない者の責任は、監督義務者が代わりに負うとしています。多くの場合は親が監督義務者にあたります。
ただし親が責任を負うには、以下の要件があります。- 当該行為が責任能力以外の(一般的な)不法行為にあたる
- 親が子どもの監督義務を怠った場合、もしくは監督義務を怠らなくても損害が発生したことの証明がない場合
つまり、加害者の親としては、子どもへの監督義務を尽くしていたこと、監督義務を尽くさなかったとしても事件が発生していたことを主張し、立証する必要があるでしょう。それができなければ損害賠償責任を負うことになる可能性が高いといえます。
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(3)親が不在の場合
親の直接的監視下にない状況で子どもが事件を起こした場合でも、前述の通りです。少年に責任能力があれば少年自身が責任を負いますし、親が監督義務を尽くしていなかったと判断されたり、子どもに責任能力がないと判断されたりすれば、原則として親が責任を負います。
もっとも、子どもの年齢が成人に近くなればなるほど、親の責任は否定される可能性が高まります。子ども自身が未成年であってもすでに独立して働いている場合も同様です。
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3、少年(未成年)が犯罪を起こしてしまったとき、親にできること
未成年の子どもが強盗致傷事件を起こしたとき、親は何をするべきなのかを解説します。
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(1)更生に向けたサポート
検察官や裁判官が少年の更生可能性を判断する際、ご家族のサポートが受けられるのかどうかを重要な要素とします。家庭環境に問題があれば、更生できず、再度犯罪に手を染めてしまうおそれがあるからです。
またご家族が全力でサポートする姿勢を見せることで、少年の精神的な支えとなり、更生につながりやすくなります。ご家族としては、被害者への謝罪を促し、少年を監督できる環境を整えることが重要です。 -
(2)被害者との示談
強盗致傷事件において示談が成立すれば、本人が反省して被害者へ謝罪を行ったと判断されます。さらに警察や検察、裁判所は、被害者の処罰感情を非常に重視します。したがって、示談の際、被害者からは許しを得ることができれば、処分や量刑が軽くなり、将来の影響を最小限に抑えられる可能性があります。
示談金には、強奪した金銭の返済やケガの治療費、精神的苦痛に対する慰謝料などが含まれます。事件の性質からして高額になることも想定されますが、子どもに資力がなければ親が負担するという覚悟が求められるかもしれません。 -
(3)学校や会社への連絡
少年の強盗致傷事件では、一時保護や逮捕によって本人は身柄を拘束されることになります。学校や会社を休む必要があるため、少なくとも無断欠席・欠勤とならないように、ご家族が学校や会社へ連絡しなければなりません。
事件を起こした事実が知られる前の身柄解放を目指すことも必要ですが、深刻な犯罪である強盗致傷事件の場合はそう簡単ではありません。適切なタイミングで連絡して事情を説明したほうが有効な場合もあります。
少年が更生するためには、社会復帰できる居場所を用意してあげることがなによりも大切です、退学や解雇処分とならないように働きかけることの重要性は高いでしょう。
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4、少年(未成年)による強盗致傷事件は、早めに弁護士にご相談を
未成年の子どもが強盗致傷事件を起こした場合は、できるだけ早急に弁護士へ相談するべきです。
まず示談交渉ですが、ご家族が被害者と交渉することは非常に難しいでしょう。被害者が加害者側であるご家族との間で交渉に応じてくれない、法外な示談金を要求されるといった点が懸念されます。弁護士であれば、相手方が応じやすくなるためスムーズに交渉が進み、適正な額の示談金での決着に期待できます。
学校や会社への対応も、弁護士が法律上の観点から今後の見込みを説明し、更生の重要性を説くことで、厳しい処分を避けられる可能性が生じるでしょう。
また、捜査機関への対応に関し、精神的に未熟な少年は事実と異なる供述をし、自身に不利な状況を生みだしてしまうことが少なくありません。逮捕されるとご家族でも数日間は面会できませんが、弁護士であれば制限なく接見して対策することで、こうした事態を防ぎます。
さらに、少年審判になったときの付添人(少年の権利を擁護する人)として、少年から丁寧に事情を聴き、家庭裁判所へさまざまな主張を行うことも弁護士の重要な役割です。当然、刑事裁判になった場合の弁護活動も行い、量刑の軽減を目指します。
こうした一連の活動は、弁護士でなければ難しいことです。ご家族は一刻も早く弁護士を依頼し、少年をサポートする土台を整えることが重要となります。
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5、まとめ
重大な犯罪である強盗致傷では、少年であっても逮捕されて刑事裁判にかかり、重い量刑を受けるおそれがあります。同時に、民事上の損害賠償責任を負うことになり、その責任は親にまでおよぶ可能性は十分に考えられます。
しかし、できるだけ速やかに適切な対応をすることで、処分や量刑が軽減され、少年の将来への影響を最小限にとどめることにつながります。示談交渉や学校・会社への働きかけ、付添人や弁護人としての活動などは、弁護士でなければできません。ご家族は早急に弁護士を頼ることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所の弁護士が、刑事事件に対応した豊富な経験をもとに力を尽くします。少年やご家族の話を丁寧に伺い、最適な対処を行いますので、ぜひ一度ご連絡ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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