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未成年飲酒で下される処分とは? 誰がどんな罪に問われるの?
令和5年10月、広島市でハロウィーン当日に多くの未成年者が飲酒などをして、警察に補導されたことがニュースになりました。
お酒のパッケージやポスターに書かれた「お酒は20歳になってから」「未成年者の飲酒は法律で禁じられています」などの注意書きを見たことがある方は多いでしょう。日本では「未成年者飲酒禁止法」という法律により、未成年者(20歳未満の者)の飲酒は禁止されています。
しかし、友人らと遊んでいて楽しさのあまり羽目を外して飲酒をしたり、飲み会などで断れずに飲酒をしてしまったりすることがあるかもしれません。
もし、未成年者が飲酒し、あるいは飲酒後に暴行などの違法行為をした場合には、未成年者本人や親、周囲の人などはどのような罪に問われるのでしょうか。
今回は、未成年飲酒が法律で禁止されている理由とともに、未成年者飲酒禁止法の内容や罰則、違反した場合の対応などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が丁寧に解説します。
1、なぜ未成年の飲酒は禁じられているのか?
日本で未成年者の飲酒は「未成年者飲酒禁止法」により禁止されています。理由は、飲酒は心身ともに成長過程にある未成年者の身体や精神、社会生活に次のような悪影響をおよぼす恐れがあるからです。
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(1)身体的影響
未成年者の脳は発育途上なので、飲酒により脳細胞が大きなダメージを受け、脳の健全な発達が妨げられ、学習能力などが低下する恐れがあります。ほかにも、肝臓をはじめとする臓器への影響や急性アルコール中毒の発症、性ホルモンの異常など、身体へさまざまな影響を与える恐れがあります。
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(2)精神的影響
未成年者は短期間でアルコール依存症になるリスクがあると言われています。飲酒をはじめる年齢が低いほど、成人になってからアルコール依存症になるリスクも高くなります。
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(3)社会性への影響
学習・労働意欲の低下による中退や退職、暴行・性犯罪などのトラブル、飲酒運転による事故など、社会生活に悪影響をおよぼす問題行動を起こす恐れがあります。
2、未成年が飲酒したら本人や関係者はどうなる?
未成年者飲酒禁止法第1条1項では、「満20年に至らさる者は酒類を飲用することを得す」と定めています。違反した場合には、本人や親などの関係者はどのように処罰されるのでしょうか。
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(1)未成年飲酒をした本人
未成年者飲酒禁止法は、飲酒の悪影響やリスクから未成年者を守ることが目的なので、飲酒をした本人を処罰する規定はありません。しかし、飲食店などで飲酒をしていることが見つかれば、警察に補導され、学校などに連絡されることもあります。警察に補導されると、名前や連絡先、学校、飲酒していたことなどについて聴き取りが行われ、保護者に連絡がいくケースもあります。また飲酒によるトラブルが原因で、退学、解雇などの重い処分を受けることもあるでしょう。
ほかにも、酔ってケンカをした場合などには、未成年者でも暴行罪や傷害罪で逮捕されることもあります。 -
(2)未成年者と一緒に飲酒した成人や監督者
未成年者飲酒禁止法第1条2項では、「未成年者に対して親権を行ふ者若は親権者に代りて之を監督する者未成年者の飲酒を知りたるときは之を制止すへし」と定めています。
親権者または監督代行者は、未成年の飲酒を知った場合には制止する義務があり、違反すると科料に処せられます(同第3条2項)。科料とは、1000円以上1万円未満の金銭を徴収される刑罰のことです。金銭を徴収されるだけとはいえ、前科がつくことに変わりありません。
親権者は基本的に親を指します。監督代行者とは、親権者に代わって日常的に未成年者を監督する義務を負っている人のことで、具体的には次のような場合に該当する可能性があります。- 親権者に代わり、同居して弟妹の面倒を見ている兄姉
- 親戚や知人の子どもを預かり、同居して面倒を見ている者
- 従業員を住み込みで雇っている雇用主
- 学生寮の舎監 など
大学や会社の先輩などは原則として監督代行者にはあたりません。しかし、部活の監督・顧問などが学生を引率した合宿先で未成年飲酒を制止しなかった場合には、監督代行者として罪に問われる可能性が高くなります。
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(3)酒類を提供したお店
未成年者飲酒禁止法第2条3項では、「営業者にして其の業態上酒類を販売または供与する者は満20年に至らさる者の飲用に供することを知りて酒類を販売または供与することを得す」と定めています。
酒類販売店や飲食店が未成年者であることを知りながら酒類を販売・提供することは禁止されており、違反した場合には、50万円以下の罰金に処せられます(同第3条1項)。
また、第2条4項では、酒類の購買者や注文者に対する年齢確認のほか、ポスター掲示などによる注意喚起、従業員の教育など、未成年飲酒防止のための必要な措置を求めています。
なお、3条1項に違反した場合には、酒類を販売・提供した従業員だけでなく、雇用者である事業主も罪に問われます(同第4条)。加えて罰金刑に処せられた場合には、酒類販売業の免許を取り消されることもあります(酒税法第10条・14条)。
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3、飲酒させてしまった側はどのような罪に問われる?
大学の先輩や会社の先輩・上司は、未成年者に飲酒させても監督代行者に該当することはあまりないので、未成年者飲酒禁止法違反の罪に問われる可能性は高くありません。しかし、イッキ飲みを強要するなどした場合には、刑事上の法的責任と民事上の法的責任が生じます。
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(1)強要罪
飲酒を断っているのに強い口調で飲酒を迫ったり、無理に飲酒させたりした場合には、強要罪(刑法223条)に問われる可能性があります。
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(2)傷害罪・過失傷害罪・重過失傷害罪
故意に泥酔させる目的でイッキ飲みを強要した、飲まなくてはならない雰囲気をつくり急性アルコール中毒になってしまったなどの場合には、傷害罪(刑法204条)に問われる可能性があります。
泥酔させる目的がなかったとしても、過失傷害罪(同209条)または重過失傷害罪(同211条)にあたる可能性があります。結果として死亡した場合には、傷害致死罪(同205条)、過失傷害致死罪(同210条)、重過失傷害致死罪(同211条)などの犯罪が成立し得るでしょう。 -
(3)保護責任者遺棄罪
酔いつぶれてしまった人がいるにもかかわらず、被害者を介抱したり救急に連絡したりせずに放置して立ち去った場合には、保護責任者遺棄罪(刑法218条)、結果として被害者が死亡した場合には保護責任者遺棄致死罪(刑法219条)に該当することがあります。
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(4)現場助勢罪
直接に飲酒を強要してはいないが「イッキ」コールをするなど、被害者を助けずに飲酒をあおった場合には、現場助勢罪(刑法206条)に問われる可能性があります。
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(5)民事上の法的責任
飲酒を強要し、未成年者が急性アルコール中毒になったり負傷したりした場合には、民事上の不法行為責任(民法709条)に問われ、慰謝料や治療費を請求される可能性もあります。
また、会社の飲み会であった場合には、不法行為責任だけでなく、上司や会社が使用者責任(同715条)を問われることもあります。
死亡や後遺症などの重大な結果が生じた場合には、未成年者は余命が長く、将来得られるはずだった逸失利益が大きくなるため、莫大(ばくだい)な損害賠償額を請求されるケースも考えられるでしょう。
4、未成年者が飲酒におけるトラブルに悩んだ場合にするべきこと
飲酒を強要されて被害を受けた場合には、相手に対して法的責任を求めることができます。しかし、まずは飲酒の強要を上手に避けて、自分の身を守ることが大切です。
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(1)飲酒を断る
飲み会などでは飲酒を強要する先輩の隣に座らないようにしましょう。強要されても場の雰囲気に流されず、毅然(きぜん)とした態度で「未成年者であるから」ときっぱりと断ることが大切です。
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(2)ひとりで悩まずに周囲に相談する
被害を受けて悩んでいる場合には、信頼できる友人や先輩に相談しましょう。大学の学生課や会社の上司、人事部門などに相談して、加害者に対する注意や指導をしてもらうのもよいでしょう。
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(3)弁護士に相談する
飲酒の強要により急性アルコール中毒になったなどのトラブルに巻き込まれ、加害者への告訴や損害賠償請求を検討する場合には、弁護士に相談しましょう。
また、飲酒が原因で器物損壊などのトラブルを起こして逮捕された、損害賠償を求められたなどの場合にも、すみやかに弁護士に相談し、示談交渉などの対応を依頼するべきです。
5、まとめ
未成年飲酒の刑罰や対応などについて説明しました。未成年者本人は飲酒しても処罰されることはありません。しかし、飲酒による暴行などのトラブルが原因で逮捕される可能性もあり、事件を起こして逮捕されれば前科がついてしまう事態にもなりかねません。逮捕されると、さまざまな不利益を被ることにもなるので弁護士に相談して適切に対処することが大切です。また在籍する大学によっては退学などの重い処分を受ける恐れもあります。
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