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未成年の子どもが無免許運転で逮捕! 問われる罪は? 親の責任はどうなる?
もしも未成年の子どもが無免許運転をしてしまったら、「子どもはどのような処分を受けるのか?」「親である自身は責任を問われるのか?」などの点が不安になるでしょう。
無免許運転に関しては、過去の道路交通法改正によって厳罰化がなされているものの、いまだに根絶されていない状況です。未成年の無免許運転についても、ニュースなどで目にする機会も少なくありません。未成年による無免許運転は逮捕されないイメージがあるかもしれませんが、それは誤りで、逮捕される可能性もあり得るのです。
本コラムでは、未成年の無免許運転について、逮捕の有無や処分内容、親に課せられる責任などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説いたします。
1、そもそも未成年は無免許運転で逮捕されるのか
そもそも、「未成年が逮捕されることはない」というイメージを持っている方も多いでしょう。本コラムでは、未成年と「逮捕」の具体的な関係について、解説します。
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(1)14歳未満の未成年は逮捕されない
14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした未成年は、「触法少年」として扱われます。
触法少年は刑事責任を問われない存在であるため、逮捕されることはありません。ただし、警察から調査を受ける場合はあります。
また、触法少年であっても、児童相談所から家庭裁判所へ送致されて少年審判に付される可能性があるのです。 -
(2)14歳以上の未成年は逮捕される場合がある
14歳以上で刑罰法令に触れる行為をした未成年は、「犯罪少年」として扱われます。
触法少年とは違い、犯罪少年は、刑事責任を問われる存在です。そのため、未成年であっても14歳以上であれば、犯罪を行うと逮捕される可能性があるのです。
逮捕された未成年は、検察庁から家庭裁判所へ送致されたのちに、審判不開始となる場合を除き、少年審判が開かれて、不処分または保護観察処分や少年院送致などの保護処分を受け、または児童福祉手続もしくは刑事手続へ移行します。
なお、未成年が送致される施設は、主に「少年刑務所」と「少年院」の二つとなります。
少年刑務所は、犯罪少年のうち後述のように刑事手続に移行して刑罰を科された16歳以上の少年が収容される施設です。触法少年と、刑罰は科されなかったが少年院送致が決定した犯罪少年および刑罰を科された14歳以上16歳未満の犯罪少年は、少年院へ収容されます。 -
(3)刑事裁判が開かれる場合もある
原則として、未成年は少年審判によって処分を受けます。
しかし、成人と同じように刑事裁判が開かれて、刑罰を受ける場合もあるのです。たとえば14歳以上の犯罪少年が起こした一定の重大事件では、家庭裁判所から検察官へ逆送されて、刑事裁判が開かれます。
また、事件を起こした当時は未成年であっても、警察が捜査や調査を行っている間に20歳に到達した場合には、少年審判ではなく刑事裁判の対象となります。
さらに、少年審判となるか刑事裁判となるか、またそれによって下される処分の内容は、少年の年齢だけでなく、犯行の悪質性や、初犯・再犯といった点にも左右されるのです。
2、未成年が無免許運転で逮捕された場合の処分
法務省が公開している令和5年版の犯罪白書によると、令和4年中に、検察庁が新規に受理した犯罪少年の罪名別構成比では、道路交通法違反が22.5%で、窃盗に次いで多くなっています。
では、14歳以上の未成年が無免許運転で逮捕された場合、どのような処分を受ける可能性があるのか、解説します。
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(1)不処分や保護観察処分となる場合
無免許運転の初犯であり、事故も起こしておらず、本人が深く反省している場合には、「更生できる可能性が高い」と見なされることが多いでしょう。そのため、少年審判の結果が不処分や保護観察処分となる可能性が高いといえます。
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(2)重い処分になる場合
無免許運転の再犯である場合や、死傷事故を起こしたような場合には、「悪質性が高い」と見なされてしまいます。そのため、少年院に送致されたり、刑事裁判にかけられたうえで重い刑を言い渡されたりする可能性が高くなるのです。もし刑事裁判で刑が確定してしまえば、前科がつくことになり、将来にも重大な影響を与えてしまうことになります。
また、未成年に対する処分は、成人に対する処分よりも「罪の更生」に重きをおいている、という性質があります。そのため、もし本人が犯した罪の重大性を認識していない場合には、より重い処分が下されるおそれがあるのです。
無免許運転は、道路交通法第64条違反により、成人であれば「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」を科せられる悪質な行為です(同法第117条の2の2)。
未成年の子どもが無免許運転をする場合には、「事故を起こさなければ問題がない」といった程度の、軽い犯罪であると感じている場合も多いでしょう。しかし、実際には、数ある交通違反の中でもかなり重い罪が課される犯罪です。
無免許運転という罪の重大さを本人がわかっていない場合には、社会の中での更生は難しいと判断されて、少年院などに送致される可能性が高くなってしまうでしょう。 -
(3)無免許運転が発覚した時点ですぐに対応することが重要
未成年が無免許運転で逮捕されことを回避するためには、本人が罪を自覚して深く反省しており、ご家族が監督できることなどについて、適切に主張する必要があります。
しかし、精神的に未熟な少年本人や、子どもが警察から逮捕されそうで焦っている家族が、冷静な主張を行うことは難しいでしょう。
対応が遅れるほどに、逮捕されてしまう可能性は高まります。そのため、子どもの無免許運転が発覚した時点で、弁護士へ相談することが重要になるのです。
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3、親の責任はどうなる?
未成年の子どもが無免許運転をした場合に、親はどのような責任を負う可能性があるのでしょうか。
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(1)親の刑事責任
子どもが無免許運転をしたからといって、親が子どもに代わって刑事責任を問われることはありません。
刑事責任とは、簡単にいえば、「刑罰を受ける責任」です。刑事責任は、あくまでも子ども自身が負います(14歳以上の場合)。ただし、以下のような事例では、親自身の行為も法律に抵触して、刑事責任が生じることになります。
●車に同乗していた場合
未成年の子どもが無免許であることを知りながら自分を乗せるように要求や依頼をして、同乗していた場合には、親は「無免許運転同乗罪」に問われます(道路交通法第64条3項)。
罰則は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」です(同法第117条の3の2)。
●車を貸した場合
未成年の子どもが無免許であることを知りながら自分の車を貸した場合、親は「車両提供罪」に問われます(道路交通法第64条2項)。
罰則は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です(同法第117条の2の2)。 -
(2)親の民事責任
未成年の子どもが無免許運転をして、さらに事故を起こした場合には、刑事責任と同時に民事責任の問題も発生します。
民事責任とは、事故などにより被害者が負った損害を賠償しなくてはならない、という責任です。
法律上の原則としては、民事責任は事件を起こした子ども本人が負うものであり、親が直ちに責任を問われるわけではありません。
しかし、現実的には、未成年の子どもは損害を賠償できるほどの資産を持っていない場合が多く、親が代わりに賠償することを検討しなければならないでしょう。
また、親が未成年の子どもを監督する義務を怠り、それによって子どもが無免許運転をして事故を起こした場合には、子ども自身だけでなく、親にも固有の不法行為責任が発生します(民法第709条)。具体的には、同居の子どもが無免許であると知りながら、親の車を運転している事実を黙認していた場合などが該当します。
このほか、未成年の子どもが運転した車が親自身のものであり、それにより被害者を負傷または死亡させた場合には、自動車損害賠償保障法第3条に定められている「運行供用者責任」として、事故の損害を賠償する責任を負うことになります。
4、子どもが無免許運転で逮捕された場合にできること
未成年の子どもが無免許運転で逮捕された場合に親として何ができるのか、逮捕後の流れとともに解説します。
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(1)逮捕された後の流れ
未成年の子どもが逮捕された後には、基本的には次の流れで手続きが進められることになります。
- 逮捕から48時間以内:警察からの取り調べ、検察庁への送致
- 送致から24時間以内:検察官からの取り調べ
- 引き続き捜査の必要がある場合:勾留(最長20日間)または勾留に代わる観護措置(最長10日間)
- 家庭裁判所へ送致:少年審判または審判不開始が決定
- 少年審判:保護観察や少年院送致などの処分が決定
- 刑事処分相当と認められた場合:検察庁へ逆送されて刑事裁判へ)
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(2)再犯防止に向けた環境を整える
処分が決定される際には、「再犯を防ぐことができる、更生に向けた環境が整っているか」が重視されます。そのため、逮捕された子どもの親として環境の整備に力を尽くすことで、処分の内容を軽くできる可能性があるのです。
子どもの監督を約束するのはもちろんのこと、無免許運転の場合は今後の免許取得に向けた活動をアピールすることなども、審判で有利にはたらくでしょう。 -
(3)学校や職場へ対応する
逮捕の事実が学校や職場に伝わっている場合には、退学や解雇などの厳しい処分を受けてしまわないように、学校や職場に対して説得を行う必要があります。退学や解雇になることで子どもの将来にもたらされる不利益や、更生のためには学校や職場などの環境が重要であることなどを伝えましょう。
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(4)弁護士へ相談する
再犯の防止や更生のためにどのような環境を整え、審判で何を主張するのか、また学校や職場へどう説得するべきなのかは、親だけで簡単に対応できる問題ではありません。審判の場において適切な主張を行えなければ、子どもが不当に重い処分を受け、更生が遠のいてしまうおそれもあります。
また無免許運転で事故を起こしてしまい被害者がいる場合には、示談を行うことも考えられます。その場合、弁護士が代理人として示談交渉をすることで望む結果を得られる可能性を高めることにつながります。
とくに少年事件では、成人事件以上に、弁護士の役割が重要となります。そのため、未成年の子どもが無免許運転で逮捕されてしまったら、信頼できる弁護士を速やかに選ぶことが必要になるのです。
5、まとめ
未成年による無免許運転は少年事件として扱われますが、14歳以上であれば逮捕される可能性があります。
無免許運転は、交通違反の中でもとくに重大な犯罪に分類される違反です。そのため、未成年といえども、厳しい処分を下される可能性があるでしょう。また、事件の背景にある状況によっては、親自身が刑事責任や民事責任を問われる可能性もあります。
未成年の子どもが無免許運転で逮捕されてしまった場合には弁護士のサポートが不可欠です。ベリーベスト法律事務所には、少年事件の解決実績が豊富な弁護士が多数在籍しております。もし子どもの無免許運転が発覚してしまったら、まずは速やかに、ベリーベスト法律事務所へご連絡ください。
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