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学校内での盗難がバレたら退学処分になる? 窃盗罪の刑罰を解説
多数の未成年が通う環境である学校では、暴行や強要、強制わいせつなどの犯罪が発生する場合があります。そのなかでとくに頻発する犯罪が「盗難」です。
他人のものを盗む行為は、法律的には「窃盗罪」という犯罪にあたります。未成年であっても、窃盗をすると刑罰の対象となる場合があります。また、学校内で窃盗したことが学校にバレてしまったら退学処分などの厳しい処分を受けるおそれがあるのです。
本コラムでは、窃盗行為が学校側に発覚してしまった場合に退学や逮捕される可能性、どのような流れで処分の手続きを受けるのかなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説いたします。
1、窃盗罪とは
まず、「窃盗罪」とはどのような犯罪であるか、未成年の少年が窃盗罪にあたる事件を起こした場合にどのような処分を受けるのかについて解説します。
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(1)窃盗罪とは
窃盗罪は、他人が占有する他人のものを自分のものにしてしまう犯罪です。
刑法第235条では、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」と定められています。
財物とは、高級な物や現金に限られません。同級生の教科書や文房具などを盗んだ場合や、スーパーで100円のお菓子を万引きした場合でも、窃盗になるのです。
窃盗罪では最長で10年の懲役が刑罰として規定されているため、有罪になれば刑務所に収監されてしまうこともあります。ただし、20歳未満の未成年の場合は「少年事件」と扱われて、少年法の定めにしたがい、成人とは異なる手続きを受けることになるのです。
少年法は少年の健全な育成と更生を目的としているため、成人のように刑罰を受けることにはなりません。原則として、少年審判による「保護処分」を言い渡されることになります。保護処分とは、少年を更生させるために行われる、少年法上の処分のことです。 -
(2)少年審判とは
少年審判とは、家庭裁判所で少年の処分を決めるための非公開の手続きのことです。成人の事件における刑事裁判にあたるものですが、検察官と弁護人との対立構造が明確な刑事裁判とは異なり、少年審判では原則として検察官は参加しません。裁判官が少年自身に直接語りかけるような形式で、審判がすすめられます。
また、刑事裁判では犯した罪の大きさに対する罰を与えるのに対して、少年審判では少年の問題に応じた適切な処分が定められます。
したがって、仮に盗んだ物が少額であっても、少年の環境や反省の度合いなどさまざまな事情から社会内での更生が難しい認められる場合には、少年院送致が適切だと判断されることもあるのです。反対に、高額の物を盗んだ場合でも、社会内での更生を図るのが適切だと認められたら、保護観察処分になる可能性があります。 -
(3)少年審判で言い渡される処分
少年を対象とする処分は、以下のような種類に分かれます。
【保護処分】- 保護観察……家庭などで生活し、保護観察官や保護司の指導・監督を受けながら社会のなかでの更生を図る処分です。
- 少年院送致……少年院に収容して矯正教育を受けさせる処分です。
- 児童自立支援施設等送致……比較的低年齢の少年を開放的な施設に収容する処分です。
【検察官送致】
犯罪時に14歳以上であった少年について、「保護処分よりも刑罰を科すのが相当だ」と判断された場合や一定以上の犯罪を行った16歳以上の少年は、検察官に逆送されます。検察官は原則として起訴するため刑事裁判で審理されます。
【都道府県知事または児童相談所長送致】
「少年を児童福祉機関の措置に委ねるのが相当だ」と判断された場合は、都道府県知事または児童相談所長に送致されます。
【不処分】
教育的な働きかけにより「少年に再非行のおそれはない」と認められた場合には不処分となり、上記のような処分を受けることなく審判が終了します。
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2、学校内での窃盗がバレたらどうなる?
学校内での盗難がバレた場合に、退学処分になったり逮捕されたりする可能性について解説します。
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(1)学校内での盗難がバレたら退学?
公立の小学校・中学校は退学になることはありませんが、私立の中学校であれば学校側の判断で退学になるおそれが否定できません(学校教育法施行規則第26条第3項)。高校生以上であれば公立・私立に限らず、学校側の考え方次第では退学になる場合があります。
盗難で退学になるかどうかは、学校側の校則や裁量に委ねられるケースが多いようです。犯罪行為は一律に退学とするケースから、初犯であることや犯罪行為をした事情によっては停学で済まされるケースなど、個別の事情によってさまざまな対応がなされます。
学校内での盗難はいじめが絡む場合などもあり単純な問題ではないため、学校側は校則や被害生徒、その保護者の意見などと照らし合わせながら、慎重に判断するでしょう。 -
(2)逮捕されるケースはあるのか
学校外で窃盗事件を起こした場合、被害者の通報などによって警察が事件を認知すれば、14歳以上の少年は逮捕されるおそれがあります。
学校内で窃盗事件を起こした場合も、学校が警察に連絡を入れたり、被害者自身(または保護者)が通報したりすれば、14歳以上の少年は逮捕されるおそれがあります。警察に通報するかどうかは学校や被害者次第ですが、警察への連絡がとくに必要だと判断すれば通報されるでしょう。
ただし、「警察への通報=逮捕」ではありません。逮捕は逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合の措置なので、学校や保護者の監督に期待でき、逃亡や証拠隠滅のおそれがないなら逮捕はされないのです。
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3、窃盗罪で逮捕された後の流れ
少年が学校で窃盗事件を起こして逮捕された場合の流れについて解説します。
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(1)逮捕される場合があるのは14歳以上の少年
14歳以上で罪を犯した少年を「犯罪少年」といい、未成年者のうち逮捕される場合があるのは犯罪少年に限られます。
14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年は「触法少年」といい、刑法第41条の規定により刑事責任能力がないので罪に問われず、逮捕もされません。ただし、「逮捕」がされないだけであって、警察から調査の名目で事情聴取を受けることや、児童相談所に送致されることはあります。
さらに児童相談所の判断によっては家庭裁判所に送致され、少年審判を受けることもあります。家庭裁判所に送致された後の流れは犯罪少年とほぼ変わりません。 -
(2)逮捕
犯罪少年が逮捕されると警察署の留置場で身柄の拘束を受け、必要に応じて警察から取り調べを受けます。原則として、警察は少年を逮捕してから48時間以内に、少年の身柄と事件の証拠書類を検察官に送致します。
送致後は検察官からも取り調べを受けます。検察官は送致から24時間以内に、裁判官に勾留を請求するか、勾留請求せずに一旦釈放するのか、少年を家庭裁判所に送致するのかを決定します。また、少年事件では勾留ではなく「勾留に代わる観護措置」を請求する場合もあります。 -
(3)勾留
裁判官が勾留を認めると原則10日間、延長が10日間、最長で20日間の身柄拘束を受けます。
「勾留に代わる観護措置」だった場合の拘束期間は10日間です。勾留のような延長はありません。この場合に身柄を拘束される場所は警察の留置場ではなく少年鑑別所です。 -
(4)家庭裁判所への送致
捜査が終了すると少年の身柄は家庭裁判所へ送致されます。少年事件では成人の事件のような不起訴処分による釈放はなく、原則としてすべての事件が家庭裁判所へ送致されます(全件送致主義)。
逮捕・勾留されている事件について送致を受けた家庭裁判所は24時間以内に少年を「観護措置」にするかどうかを決定します。観護措置とは、審判を行うために必要がある場合に少年の身柄を少年鑑別所に送致する措置のことです。
観護措置の期間は原則2週間ですが、ほとんどのケースでは1回更新されて、4週間の収容となります。
なお、特別更新が認められた場合には、最長で8週間まで観護措置がとられることがあります。
観護措置の間、家庭裁判所の調査官は少年の非行の原因や更生の可能性などについて調査を実施します。具体的には、少年や保護者などと面談しながら少年の生活、環境などについて質問する、心理テストを実施するなどの方法が用いられます。
観護措置が終わると、少年審判が開始されます。家庭裁判所の裁判官は、審判のなかでの少年の受け答えや調査官による調査の内容をふまえて、最終的な処分が言い渡されることになるのです。
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4、未成年の窃盗罪は弁護士に相談を
未成年の少年が学校で窃盗事件を起こした場合には、早急に弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)早期の身柄釈放に向けた活動
勾留や観護措置による長期の身柄拘束を受けると、少年は肉体的・精神的に負担を強いられ、学校からも退学などの厳しい処分を受けるおそれが大きくなります。
また、少年審判で少年院送致などの施設送致が決定すれば、少年の生活は一変して、保護者や身近な友人と気軽に会うこともできなくなります。少年院送致の場合には退学処分がくだされるおそれがさらに高まります。
弁護士は検察官や裁判官に意見書を提出するなどして勾留や観護措置の必要性がないことを主張して、少しでもはやく社会復帰できるよう活動します。また、少年審判では、裁判官に更生の可能性や再犯防止策について具体的に示すなどして、少年院送致などの重い処分を受けないよう働きかけられます。 -
(2)示談交渉
被害者との示談を成立させることも重要です。示談が成立すれば、学校や被害者の通報を回避して事件化されない可能性や、事件化されても逮捕されない可能性が高まります。
しかし、少年本人やその保護者が直接被害者と交渉するのは難しいケースが多いでしょう。学校内の窃盗事件では被害者も未成年の場合であることが多いため、示談の相手方は被害者の保護者となりますが、被害者の保護者は加害者の少年に対して不快感や嫌悪感を抱いている場合が多数です。冷静な話し合いができずに示談が難航するおそれや、法外な示談金を求められるおそれがあります。
少年やその保護者がむやみに被害者側に接触しようとすれば、証拠隠滅を図る危険が大きいとして、逮捕されてしまう場合もあるでしょう。
客観的な第三者である弁護士が示談交渉を行うことで、冷静な話し合いが可能となります。また、弁護士が法的根拠を示すことで被害者も示談に応じやすくなるでしょう。 -
(3)更生のアドバイス、保護者へのサポート
少年に事件と向き合わせて更生に導くのも弁護士の重要な弁護活動のひとつです。もちろん少年の更生は保護者が中心となって行うべきですが、少年は精神的に未成熟な部分が多く、保護者に対して本心を伝えられない場合も多々あります。
また、家庭環境が事件の要因となっているなど、保護者だけの対応では更生が難しい場合もあります。そのため弁護士は少年と信頼関係を築き、少年の気持ちに寄り添いながら内面からの働きかけを行います。保護者に対しても、更生のために必要なサポートについてアドバイスします。
退学を回避するための交渉も、弁護士が代行することができます。
保護者が学校側と交渉をする際、再非行を防ぐために今後どのような監督指導をしていくのかを具体的、説得的に示さなければなりません。保護者だけでは説得が難しい場合であっても、「少年の更生に学校が不可欠な場所であり、退学処分は適切ではない」ということを、弁護士が保護者の代わりに説明することができるのです。
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5、まとめ
学校内でとくに起こりやすい犯罪である盗難は、法律的には「窃盗罪」にあたります。「出来心だった」「ちょっとした嫌がらせのつもりだった」などの理由による盗難行為でも、退学になってしまうおそれは十分にあります。また、14歳以上であれば、逮捕される可能性もあるのです。
学校内で起きた盗難の加害者だとバレてしまった、自分の子どもが盗難の加害者だと発覚したなどの事情でお困りの方は、弁護士に相談して、適切なサポートを求めてください。少年事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所が、事件の早期解決や少年の更生に向けて力を尽くします。
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