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弁護士コラム

2021年06月29日
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放火罪とは? 失火罪との違いや種類によって異なる刑罰の重さ

放火罪とは? 失火罪との違いや種類によって異なる刑罰の重さ
放火罪とは? 失火罪との違いや種類によって異なる刑罰の重さ

放火罪について、建物などに火をつける重大な犯罪だと理解している方は多いでしょう。
しかし、火をつける対象が建物以外だった場合でも放火罪が成立するのか、中に人がいない建物に火をつけた場合はどうなのか、さらには不注意で出火させてしまった場合はどうなるのかなど、詳しい内容までは知らない方は少なくありません。
放火罪とひとくちにいってもいくつかの種類があり、それぞれ刑罰の重さも異なります。

本コラムでは放火罪をテーマに、放火罪の種類や成立要件、失火罪との違いや刑罰の内容などについて解説します。実際に起きた放火事件でどのような量刑が言い渡されているのかを知るために、裁判例も確認しましょう。

1、放火罪とは

放火罪の概要と放火罪が成立する要件について解説します。

  1. (1)放火罪の保護法益

    放火罪の保護法益は、公共の安全です。ここにいう公共とは、不特定多数または多数人の生命・身体・財産を意味します
    建造物等への放火は、建造物等の焼損にとどまらず、他の建造物等への延焼により不特定多数または多数人の生命・身体・財産に甚大な被害を及ぼしうるものです。
    このような危険に注目して放火を処罰し、公共の安全を守ろうとするのが放火罪です。

  2. (2)放火罪の成立要件

    放火罪は、故意に放火し、物件を焼損することで成立する犯罪です。

    放火とは、目的物の焼損を発生させる行為をいいます。建物などに直接火をつける行為はもちろん、新聞紙や枯れ木などの媒介物に火をつけたうえで建物に火をつける行為も放火にあたります。焼損とは、火が媒介物を離れて目的物に燃え移り、独立して燃焼を継続するようになった状態をいいます。たとえば建物の全部が燃えなくても、建物の天井の約30cm四方を焼いた状態を焼損と認め、放火罪が成立したとする判例があります(最高裁判所 昭和23年11月2日判決)。

  3. (3)不作為による放火罪

    放火罪は通常、積極的に火をつけるという行為(作為)によって成立します。
    しかし、消火の義務がある人が、容易に消火できるのに消火しない場合や、消防署に通報しなかった場合にも、不作為による放火罪が成立する可能性があります

    不作為とは一定の行為をしないことをいいます。たとえば、自分の不始末で着火させた者が、火を放置すれば焼損すると認識していたのに、何の行動も起こさず知らないふりをして逃げたケースなどが該当します。

  4. (4)放火罪には種類がある

    放火罪は、目的物が建物等かそれ以外かによってまず区別され、建物等の場合は現に人が住居に使用し又は現に人がいるか否かによって刑罰が異なります。
    また、現に人が住居に使用せず又は現に人がいない建物等または建物等以外に放火した場合は、目的物が自己所有か他人所有かによって刑罰が異なります。

    さらに、「公共の危険」を生じさせて、はじめて処罰されるものもあります。公共の危険とは、上述のように、建物などから延焼が生じ、不特定または多数の人の生命や身体、財産に対して危険を与えることをいいます。
    公共の危険の有無については、「危険を感じた」などの人の価値基準ではなく、実際に燃えた範囲や程度、まわりの建物の状況などを含む客観的な要素から、被害が広がる危険があったかどうかといった観点から判断されます

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2、放火罪の種類と刑罰

具体的にどんな種類の放火罪があるのか、刑罰の内容とあわせて見ていきましょう。

  1. (1)現住建造物等放火罪

    現住建造物等放火罪とは、現に人が住居として使用し、または現に人がいる建造物などに放火し、焼損させる犯罪です(刑法第108条)。建造物等とは、建造物、艦船、鉱坑を指します。
    たとえば、人の住居や人が働いている日中のオフィスビルなどに放火した場合が該当します。住人が留守中の住居のように、放火の時点で人がいない建物でも、日常的に使用されている建物であれば現住建造物にあたります。

    「人」とは、犯人以外の人をいいます。したがって、犯人が、自分ひとりだけが住んでいる家に放火した場合には、後述の非現住建造物等放火罪が成立します。

    刑罰は「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」です。未遂の場合も同じ法定刑の範囲で罰せられます(刑法第112条)。人がいる建物に放火すれば、人の生命や身体、財産に大きな危険がおよぶことは明らかなので、非常に重い刑罰が設けられています。
    また、同罪は裁判員裁判の対象事件でもあるため、起訴されると一般市民が参加する裁判員裁判によって審理されます。

  2. (2)非現住建造物等放火罪

    非現住建造物等放火罪とは、現に人が住んでおらず、または現に人が内部にいない建造物などに放火し、焼損した場合に成立する犯罪です(刑法第109条)。
    たとえば空き家や誰もいない真夜中のオフィスビルなど、そのとき人がいる可能性がない建物などに放火した場合が該当します。非現住建造物等放火罪は、建造物などが「他人所有の場合」と「自己所有の場合」の2種類に分けられ、それぞれ刑罰が異なります。
    他人が所有する、人がいる可能性のない建物を放火した場合は「2年以上20年以下の懲役」です(刑法第109条1項)。未遂の場合も同じ法定刑の範囲で罰せられます(刑法第112条)。
    自分が所有する、人がいる可能性のない建物を放火した場合は「6か月以上7年以下の懲役」です(刑法第109条2項)。
    自己所有の場合、「公共の危険」を生じさせなければ処罰されません。また他人所有の場合と異なり、未遂罪の規定はありません。

  3. (3)建造物等以外放火罪

    建造物等以外放火罪は、現住建造物等放火罪と非現住建造物等放火罪の目的物「以外」の物に放火して焼損させ、公共の危険を生じさせた場合に成立する犯罪です(刑法第110条)。たとえば自動車やバイク、家具、布団、畳、公園の遊具などが目的物となり得ます

    建造物等以外放火罪も、他人の所有物に放火したのか、自分の所有物に放火したのかによって刑罰が異なります。
    他人の所有物に放火した場合は「1年以上10年以下の懲役」です(刑法第110条1項)。
    自分の所有物に放火した場合は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金」です(刑法第110条2項)。

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3、放火罪と失火罪の違い

自らの意思で放火を行う放火罪に対して、意図せず不注意で火をつけてしまった場合は失火罪が成立します。

  1. (1)失火罪とは

    失火罪は、過失(不注意)で出火させてしまった場合に成立します(刑法第116条)。

    放火罪との大きな違いは、故意によるものか、それとも過失によるものかという点です。放火罪の故意とは、放火によって目的物を焼損することを認識していることをいいます。
    これに対して失火罪は、故意はなかったが、不注意によって出火させてしまう罪です。たとえば、コンロの消し忘れやタバコの火の不始末などがこれにあたります。

    失火罪の刑罰は「50万円以下の罰金」と、放火罪の刑罰と比べて軽く定められています。したがって、実際の事件では、故意か過失かが慎重に判断されることになるでしょう。

  2. (2)業務上失火罪、重過失失火罪とは

    同じ「過失」でも、業務上必要な注意を怠った場合は業務上失火罪として、不注意の度合いが大きい場合には重過失失火罪として重く罰せられます(刑法第117条の2)。
    業務とは、職務として火気の安全に配慮すべき社会生活上の地位をいいます。たとえば、調理師などの火気を直接扱う職や、給油作業員などの火気を発生しやすい物質を取り扱う職があげられます
    重過失とは、不注意の程度が著しい場合を指します。たとえば、寝タバコが危ないと分かっていながら何の対策もしないで吸い続けたケース、石油ストーブの火を消さずに給油したケースなどが該当するでしょう。

    業務上失火罪及び重過失失火罪の刑罰は「3年以下の禁錮または150万円以下の罰金」です。禁錮とは、刑務所に収監される自由刑を指します。懲役との違いは、刑務作業が強制されるか否かです。懲役は刑務作業が課されますが、禁錮は刑務作業がなく、収監のみです。

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4、放火罪の裁判例を紹介

放火罪の量刑や量刑判断に際して考慮される要素を知るために、実際にあった事件の裁判例を確認しましょう。

  1. (1)現住建造物等放火被告事件

    【札幌地方裁判所令和元年7月12日判決】
    当時8名が居住し、現に5名が在室していた木造3階の共同住宅に放火したとして、現住建造物等放火罪に問われた事案です。被告人は住宅の居室内に火を放ち、その火を和室壁面や天井へと燃え移らせ、天井などを焼損しました。

    この事案では、被告人が犯人であるかどうかについて争われました。裁判官は、被告人の動機は明確ではないものの、被告人が犯行の時間帯に共同住宅付近に所在していたこと、妻らに黙って居室の合鍵を作成していたことなどから、被告人が犯行におよんだことが強く推認されるとしました。
    また、屋根裏まで火が回るような火勢が生じていたことから、被告人は、5名が在室している木造住宅に火を放つ行為は、多くの者に危険を生じさせるおそれが高い危険な犯行であることを認識・予測し得たとしました。

    判決では、幸いにも、発見と消火が早く、生命や身体に具体的な被害が生じた者はいなかったが、居住者に与えた恐怖感や財産的被害が大きいこと、被告人が不合理な弁解に終始して反省が見られないことなどから、懲役6年の実刑判決が言い渡されました。

  2. (2)現住建造物等放火および重過失致死被告事件

    【大阪地方裁判所 令和2年7月8日判決】
    ガレージ内の可燃物に点火し、木造住宅に燃え移らせて和室などを焼損し、居住者2名を一酸化中毒および酸素欠乏により死亡させたとして、現住建造物等放火罪および重過失致死罪に問われた事案です。

    この事案では①被告人に故意があったか、②放火した当時、責任能力を有していたかどうかが争われました。
    弁護人は、被告人は認知症やIQが低いことの影響で、誘導による供述をしており、目前の火の意味や内容を正しく理解しておらず、火が住宅に燃え移るかもしれないという認識もなかったなどと主張しました。

    しかし、裁判官は①について、被告人の行動や供述から、放火した時点で火が住宅に燃え移るかもしれないと認識し、居住者が火によって死亡するかもしれないと十分に予見できたとしました。
    また、②について、被告人は軽度の血管性認知症に罹患(りかん)していたものの、鑑定結果や犯行時の行動などから、放火行為に対する認知症の影響は全くなく、完全責任能力を有していたと認めました。

    裁判官は、2名が死亡するという重大な結果が生じていることなどから被告人の刑事責任は非常に重いと非難しました。被告人は放火のほかに自転車の横領なども行っていたため併合罪加重となり、懲役16年の実刑判決を言い渡されました。

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5、放火罪に対する弁護活動

放火罪に問われたら、速やかに弁護士へ相談することが大切です。弁護士は、以下の活動を通じて被疑者をサポートします。

  1. (1)逮捕直後から面会する

    放火罪は故意か過失かによって法定刑が大きく異なり、量刑も犯行の様態や放火の動機・経緯などが考慮されるため、取り調べで何をどのように供述するかが極めて重要です。
    しかし、逮捕されてから勾留が決定されるまでの72時間は、たとえ家族であっても面会が許可されないため、取り調べに関するアドバイスを与えることはできません。勾留段階に入ると通常は面会できるようになりますが、共犯者がいる場合などには証拠隠滅のおそれから接見禁止が付くことがあり、引き続き面会できない可能性があります。

    この点、弁護士だけは唯一、逮捕直後や接見禁止中でも面会が認められており、取り調べに関するアドバイスを与えられます。今後の見通しや手続きの流れなどについても知ることができ、精神的な不安が緩和されるでしょう。

  2. (2)示談交渉を行う

    被害者に対して真摯な謝罪を行い、示談を成立させることで、不起訴処分の獲得や刑罰の軽減を目指します。

    しかし、放火罪は身体や生命、財産に危険を生じさせる重罪です。被害者は加害者に対して強い怒りの感情をもっており、示談を拒否される可能性が高いでしょう
    また、放火罪は法定刑の重さから、加害者が逃亡や証拠隠滅を図るおそれが高いため、逮捕・勾留による身柄拘束が継続されやすく、加害者本人が示談交渉をするのは物理的にも困難です。

    そのため弁護士が代理となり、被害者の感情に配慮しながら粘り強く交渉します。加害者本人ではなく、職務上公正さを求められる立場にある弁護士が相手であれば、被害者の精神的負担が少なく、交渉に応じてもらえる可能性が高まります。

  3. (3)放火の故意がなかった場合は失火罪を主張する

    放火の故意がなかった場合はその旨を主張し、失火罪となるよう弁護活動を進める必要があります。しかし、単に故意がなかったと述べるだけでは失火罪であると認めらさせることは困難であるため、弁護士が故意はなかったことを裏付ける客観的な証拠を捜査機関や裁判官に提出し、意見を述べるなどの活動を行います

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6、まとめ

放火罪は火をつける目的物によって複数の種類が存在します。いずれも公共の危険を生じさせる重罪であるため厳しい罰を受けるおそれは高いものの、被害者への謝罪や示談によって量刑が考慮される可能性は残されています。また放火の故意がなければ失火罪にとどまり、罰金刑で済まされる場合もあるでしょう。刑罰を少しでも軽減するためには弁護士に早期に相談することが大切です。
刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所は、その経験に裏打ちされた弁護活動で尽力します。放火罪の疑いをかけられた方は早急にご連絡ください。

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監修者
萩原 達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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