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盗撮で後日逮捕!? 逮捕の実例と期間を紹介
平成26年犯罪白書(法務省)によると、盗撮の検挙数は3265件となっており、平成24年の2408件と比べると、急激に増加していることが分かります。未成年者が当事者であるケースもあり、たとえば高校生の息子から、「通学の際に利用している駅のエスカレーターで、前に立っていた女性のスカートの中をスマートフォンで撮影してしまった。逮捕されたらどうしよう」と相談されることがあるかもしれません。盗撮をしたその場で現行犯として逮捕されなくても、通常(後日)逮捕される可能性があります。
今回は、盗撮で通常(後日)逮捕されるケースや、逮捕されてしまった場合の対応について、弁護士が詳しく解説します。
盗撮行為は令和5年7月13日に新設された「撮影罪(性的姿態等撮影罪)」によって処罰の対象となります。
1、盗撮では通常(後日)逮捕される場合もある
冒頭で述べたとおり、盗撮してしまった場合、現行犯として逮捕されなくても、通常(後日)逮捕される可能性があります。
まずは、盗撮をして問われる罪について見るとともに、通常(後日)逮捕に至るまでの流れについても見ていきましょう。
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(1)盗撮をして問われる罪
そもそも、盗撮をしたことが発覚してしまった場合、何罪で逮捕されてしまうのでしょうか。これは、盗撮をした場所・状況等によって変わります。
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①迷惑防止条例違反
まず、テレビや新聞で、盗撮をした犯人が問われる罪として耳にする機会が多いのは「迷惑防止条例違反」ではないでしょうか。
迷惑防止条例の内容は各都道府県によって異なっています。
ここでは、東京都の迷惑防止条例を例にとって見ていきましょう。
東京都においては、平成30年7月1日に改正された迷惑防止条例が施行されています。
改正前は、公共の場所や公共の乗り物以外の場所における盗撮行為は規制の対象になっていませんでした。
ところが、スマートフォンをはじめとする高性能なカメラ機能を持つ機器や、小型カメラが一般に普及したことで、さまざまな場所で盗撮行為が起こるようになりました。そのため、そうした盗撮行為が起こらないよう規制が必要になったのです。
改正後の条例では、公共の場所や公共の乗り物以外の場所(住居・カラオケボックスの個室など)においても、衣服で隠されている下着または身体を撮影した場合、迷惑防止条例違反が成立し得ます。迷惑防止条例違反の法定刑は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。 -
②軽犯罪法違反
既に説明したとおり、東京都の迷惑防止条例違反は、公共の場所や公共の乗り物以外の場所においても、盗撮行為を規制しています。また、その他多くの道府県においても、卑猥な言動や羞恥させる行為を規制しています。
その一方で、「人の住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所」での盗撮は、軽犯罪法1条23号の窃視の罪にも該当し得ます。
窃視の罪の法定刑は、拘留又は科料です。拘留の場合、1日以上30日未満の身体拘束をされます。科料であれば、1000円から1万円未満の罰金が科せられます。 -
③刑法(住居等侵入罪)違反
さらに、盗撮をする目的で、人の住居や立ち入りの許されていない建造物に侵入した場合、迷惑防止条例違反や軽犯罪法違反に加えて、住居または建造物侵入罪も問われ得ることになります。住居等侵入罪の法定刑は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。
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④著作権法違反
上映中の映画を盗撮した場合は、著作権法違反に問われ得ます。著作権法違反の法定刑は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方です。
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(2)通常(後日)逮捕に至る流れ
冒頭で例として挙げた、「駅のエスカレーターで女性のスカートの中を撮影する行為」は、公共の場所で、衣服で隠されている下着または身体を撮影する行為ですから、迷惑防止条例違反に問われる可能性があります。
上記行為が発覚した場合、現行犯逮捕されることがあります。つまり、目撃者、被害者本人、通報を受けた警察官等によって、事件現場で身柄を拘束されることがあります。
その一方で、盗撮をした後日、逮捕される場合もあります。そして、逮捕状に基づいて犯人を逮捕することを、通常逮捕といいます。
それでは、通常逮捕に至る流れはどのようなものでしょうか。
まず、事件の被害者や目撃者等が、警察に対して盗撮の事実を申告します。これにより警察は、事件を知ることになり、場合によっては必要な捜査を行います。捜査の結果、犯人を特定することができた場合、警察は、裁判所に対し、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」の存在を明らかにして、逮捕状を請求します。裁判所から逮捕状の発付を受けた警察は、逮捕状を持参して犯人のところに赴き、逮捕状を示した上で逮捕します。
警察による捜査において重要なものは、証拠です。
たとえば、殺人事件現場に残された凶器や指紋、侵入盗の現場に残された足跡など、犯罪の現場に証拠が残されている場合、警察が犯人にたどり着くための有力な手がかりが残されているといえるでしょう。一方、犯罪の現場に証拠が残されていない場合、警察が犯人にたどり着くための手がかりが現場には残されていないため、その分犯人を特定することが困難になります。そして、盗撮は、まさしく現場に証拠が残りにくい犯罪です。そのため、犯人を現行犯逮捕しなければ、通常(後日)逮捕することは難しいでしょう。
しかしながら、盗撮をして、通常(後日)逮捕される場合もないわけではありません。
次に、盗撮で通常(後日)逮捕されるケースを見ていきましょう。
2、盗撮で通常(後日)逮捕されるケース
盗撮で通常(後日)逮捕されるケースでは、目撃者がいる現場で犯人が逃走した、被害者から被害届が出された等の事情が存在することが考えられます。盗撮の証拠や被害者からの証言等をもとに、加害者の身元を特定し、裁判所に逮捕状を請求した後、警察が逮捕状を持参して加害者の自宅等を訪れることで、犯人の身柄を拘束するに至ります。
盗撮は、証拠が現場に残りにくいと説明しましたが、残るケースもあります。具体的には、防犯カメラの映像、第三者の目撃証言、 SUICAなどのIC乗車カードに記録されている入出場記録等です。
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3、盗撮で通常(後日)された事例を紹介
では、実際に盗撮で通常(後日)逮捕された事例を紹介します。
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(1)平成29年6月19日、福岡県で発生した事件です。42歳の男性が、ショッピングセンターで、女児のスカート内にカメラ付き携帯電話を差し入れた疑いで逮捕されました。この男は、女児の母親に声を掛けられてその場を立ち去ったものの、防犯カメラの映像などから逮捕に至りました。
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(2)平成30年10月4日、千葉県で発生した事件です。43歳の茨城県稲敷市の男性職員が、店舗内で、女性店員のスカートの中を盗撮しようとした疑いで逮捕されました。被害に気づいた別の店員が、この男が車で逃走するところを目撃していたことにより逮捕に至りました。
4、盗撮で通常(後日)逮捕されたら弁護士に相談を
このように、防犯カメラの映像や目撃証言等により、通常(後日)逮捕される例がいくつも見られます。そのため、現行犯逮捕されなかったからといって、通常(後日)逮捕されないとは言い切れないでしょう。
逮捕されるんじゃないかとご不安な場合は、すぐに弁護士に相談しましょう。弁護士は、今後の見通し等について説明してくれます。場合によっては、自首をすることも考えられますが、弁護士に依頼していれば、同行してもらうことが可能です。
また、逮捕されてしまった場合も、早急に弁護士を呼びましょう。突然逮捕されてしまった方は、肉体的にも精神的にも厳しい状況に置かれ、支えが必要な状態に陥ります。逮捕後72時間は、家族であっても面会できないことが多いですが、弁護士の場合は基本的に制限がありません。また、このとき、今後行われる警察や検察からの捜査に対し、どのような対応をすべきかについて助言をもらうことは非常に重要です。
さらに、盗撮では基本的に被害者がいます。早期に釈放されたり、不起訴の処分を受けたりするためには、被害者との間で示談し、被害者から寛大な処分を望む旨の意思を示してもらうことが効果的です。ただし、加害者やその家族が、直接、被害者に対して示談の申し入れをしたとしても、なかなか応じてくれないことが多いでしょう。ましてや、警察や検察から、被害者の連絡先を教えてもらうことも難しいでしょう。他方、弁護士であれば、被害者が同意すれば、警察や検察を介して被害者の連絡先を入手でき、示談交渉に応じるよう説得を試みることができます。
早期に釈放するかどうか、不起訴処分とするかどうかは、捜査機関が判断することですが、捜査機関は、弁護士による意見を踏まえてこれらの判断をする場合があります。そのため、依頼した弁護士に、早期釈放ないし不起訴処分を求める意見書を作成してもらう必要があるのです。
そして、万が一、不起訴処分とならず、起訴されてしまった場合であっても、被害者との間で示談を成立させる等、弁護士が尽力することで執行猶予となるケースもあります。
5、まとめ
以上、盗撮で通常(後日)逮捕されるケースや、逮捕されてしまった場合の対応について解説しました。
いま現在、「警察の捜査が及んで逮捕されるのでは」と不安な日々をお過ごしなのであれば、まずは弁護士にご相談ください。自首も念頭に置きつつ、今後の対応や見通しについて助言をもらうことで、少しでも不安な気持ちが和らぐはずです。
仮に逮捕されてしまったとしても、弁護士を通じて示談交渉等をすることで、不起訴や執行猶予となるよう、ベリーベスト法律事務所が力になります。
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