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準強制性交等罪とはどういう罪? 起訴を避けるための対処法について解説
強制性交(強姦)と言えば、相手の抵抗を無理やり押さえつけて強制的に性交などを行う、といったイメージが強い犯罪ではないでしょうか。
しかし、たとえば相手を酔わせて抵抗不能にして性交等を行った場合も、相手の意思に基づいたものではないという点では変わりません。このような場合は「準強制性交等」と呼ばれますが、「強制性交等」と同じく悪質性が非常に高い行為と言えます。
相手の性的自由や選択権を一方的に奪う準強制性交等は、決して許されるべき行為ではありません。もし犯してしまったのであれば、真摯な反省と再犯防止への確固たる決意が求められるでしょう。
今回は、準強制性交等罪の内容や要件について具体的に確認した上で、家族が準強制性交等罪を犯してしまった場合にどうすればよいのか、その対処法について弁護士が解説します。
令和5年7月13日に準強制わいせつ罪は「不同意わいせつ罪」へ、準強制性交等罪は「不同意性交等罪」へ改正されました。
この刑法改正によって、犯罪が成立する要件が明文化され、処罰の対象となる行為が拡大されました。
1、準強制性交等(準強姦)罪とは
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(1)準強制性交等罪について
準強制性交等罪とは、「人の心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ、または心神を喪失させもしくは抗拒不能にさせて」、わいせつな行為あるいは性交などを行った場合に成立する犯罪です。
何がわいせつな行為なのかは人によっても捉え方が異なりうる難しい概念です。そこで、わいせつな行為の判断基準として判例では、①いたずらに性欲を興奮または刺激させ、②普通人の正常な羞恥心を害し、③善良な性的道義観念に反するもの、という3つの要素が示されています。
具体的には、性器への接触や接吻、裸体の撮影、肛門への異物挿入などが挙げられます。また、性交などについては、性交・肛門性交・口膣性交の3つが規定されています。 -
(2)準強制性交等罪の刑罰
準強制性交等罪は「準」とあるため、通常の強制性交等罪よりも罪が軽いかのように思うかもしれません。しかし、心神喪失や抗拒不能を利用し、もしくはそうした状態にさせることで、わいせつ行為や性交などを行っている点は相手側の合意に基づかない行為であるため、強制性交等罪と罪の重さは変わりません。刑罰も同様であり、5年以上の有期懲役と定められています。
改正前の刑法における準強姦罪は刑罰の下限が3年でしたが、準強制性交等罪も強制性交等罪と同じように厳罰化されています。また、非親告罪とされたことや被害者の性別を問わなくなったこと、姦淫に加え口腔や肛門での性交も対象とされたことも同様です。
なお、仮に心神喪失・抗拒不能状態となる前に性交などへの同意があったとしても、相手が13歳未満だった場合は犯罪が成立します。
2、心神喪失・抗拒不能とは
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(1)強制性交等罪との違い
準強制性交等罪の成立要件について、強制性交等罪と大きく異なる点は、脅迫・暴行が行われずに「心神喪失・抗拒不能」の状態に乗じるか、または「心神喪失・抗拒不能にさせて」性交などが行われるところにあります。そこで、心神喪失・抗拒不能とはどういう状態を言うのかが問題となります。
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(2)心神喪失と抗拒不能
心神喪失とは、精神の障害により正常な判断力を喪失した状態を言います。また、抗拒不能とは、心神喪失以外で抵抗することが心理的・物理的に不可能であるか、極めて困難な状態を言います。
典型的な例としては、飲酒による酩酊状態や薬物による睡眠状態が挙げられます。加害者が性交などを目的として酒や薬物を飲ませた場合はもちろんのこと、被害者が自ら酒などを飲んでいた場合であっても準強制性交等罪は成立します。 -
(3)準強制性交等罪と被害者の同意
相手方の同意があった場合、一方的に相手方の自由意思や尊厳を踏みにじって無理やり性交などを行ったとは見なされず、準強制性交等罪は成立しないこともあります。
ただ、男女の情交は人それぞれで異なるため、同意があったのかどうかを一律の基準で判断することは非常に困難です。そこで、被害者の証言や元々の関係性などを踏まえて総合的に判断することになります。たとえば、相手が心を許して積極的に飲酒し酩酊した場合、「同意がなかった」とは見なされない可能性もあるでしょう。
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3、心神喪失・抗拒不能の認識
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(1)加害者側の認識の必要性
準強制性交等罪の成立には、加害者本人が被害者の心神喪失・抗拒不能状態を認識している必要があります。そもそも被害者が心神喪失・抗拒不能状態だと認識していなければ、その状態に「乗じた」とは言えないからです。仮に被害者が大量に飲酒をして酩酊状態にあったとしても、外見上の変化がほとんど確認できず酩酊しているとも気づかなかったのなら、性交などを行ったとしても準強制性交等罪は成立しません。
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(2)認識の有無の判断主体
問題は、加害者側の認識の有無を誰が判断するかです。加害者側の自己申告で足りるとしてしまえば、誰がどう見ても酩酊していると判断できるような状態だったとしても「自分は知らなかったし、気づかなかった」と言い張れば、犯罪不成立となりかねません。
こうした不都合を避けるため、加害者側の認識は、さまざまな具体的状況を基にして判断されることになります。たとえば、酩酊状態の認識であれば、被害者の飲んだ酒の量や種類、顔色の変化やろれつが回っているかどうか、といったことが総合的に判断されるのです。
そして、実際に起訴されるかは検察による判断に左右されますし、起訴された場合に有罪となるかどうかは裁判官の判断に委ねられます。したがって、認識の有無を争いたければ、さまざまな具体的事情をもとに適切な主張を行わなければなりません。そのためには弁護士と相談の上、証拠集めや主張方法の検討を行う必要があります。
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4、準強制性交等罪で実刑を免れるには
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(1)事実関係の確認
準強制性交等罪で訴えられるおそれがある場合、まず重要なのは事実関係の確認です。特に相手は心神喪失ないし抗拒不能の状態にあったわけですので、記憶がはっきりと残っていない可能性も高いと考えられます。仮に合意があったとすれば準強制性交等罪は成立しませんし、加害者とされている側に心神喪失・抗拒不能状態の認識がなければ、やはり本罪の成立要件を充たしません。事実がどうだったのかを確認し、できれば証拠も集めておきたいところです。
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(2)被害者との示談
次に大切なのは、被害者との示談です。示談においてはタイミングも重要です。被害者が警察へ被害届を出す前の段階で示談できれば、そもそも逮捕や取調べに至らず、事件にならずに収めることも可能です。また、被害届を出された後でも、検察の起訴前に示談を成立させて被害者に宥恕意思(許すという意思)を示してもらうことができれば、不起訴処分を得られる可能性もあります。仮に起訴されたとしても、刑の減軽や、執行猶予付判決となる可能性が高くなるのです。
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(3)弁護士への相談
性犯罪は非常にデリケートな事柄ですので、示談をするにも被害者感情に配慮し、繊細な交渉が必要となります。逮捕される前であれば、加害者本人が直接出向いて謝罪するという方法も考えられなくはありませんが、場合によっては被害者をかえって苦しめてしまう可能性もあります。本人や加害者家族が直接交渉をするよりも、被害者感情を考慮して、第三者である弁護士に任せることが適切でしょう。なるべく早い段階で、示談経験の豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
平成29年の刑法改正により、旧強姦罪を始めとする性犯罪は厳罰化され、被害者や行為対象の範囲も拡大されました。性犯罪は再犯性も高いとされており、人々の目も厳しいものとなります。
お酒に酔って前後不覚になった相手などに対して性交などを行うのは、相手の性的自由や尊厳を蹂躙する悪質な行為と言えます。再犯を行わないのはもちろんのこと、相手方への謝罪や反省も不可欠です。罪をきちんと認めて反省することは、被害者の方が立ち直る上でも重要なプロセスとも言えるでしょう。
もしご家族が準強制性交等罪を犯して逮捕され、あるいは起訴されそうだという場合は、ベリーベスト法律事務所の弁護士までご相談ください。関係者のプライバシーを厳守し、迅速で丁寧な対応をいたします。
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