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強制わいせつ行為が未遂だったら刑罰はどうなる? 減軽の可能性はある?
強制わいせつ罪は、新聞やニュースなどでその犯罪名を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
人の性的自由を侵害する重罪ですから、厳しい罰が用意されており、仮に初犯であっても行為様態が悪質であれば実刑となる可能性も十分にあります。また、犯罪行為におよぼうとしたものの、相手から激しく抵抗されるなどして行為が達成できなかった場合であっても、強制わいせつ未遂罪として罰せられる可能性があります。
今回の記事では、強制わいせつ未遂罪について解説します。ご自身やご家族が強制わいせつ未遂罪で逮捕されるのではないかと不安を抱えている方は、ぜひ今回の記事を参考にしてください。
1、強制わいせつ行為は未遂でも罰せられる? 刑罰の重さは?
強制わいせつ罪は、相手に対してわいせつ行為を強制した場合に成立する犯罪です。それでは、わいせつ行為が成し遂げられなかった場合、つまり「未遂」で終わったときには、処罰はどうなるのでしょうか。ここでは強制わいせつ行為が未遂に終わった場合の罰則について解説していきます。
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(1)強制わいせつ罪とは?
強制わいせつ罪は、暴行や脅迫を用いてわいせつな行為に及ぶ犯罪です。ただし、被害者が13歳未満だった場合は、脅迫や暴行を用いたかどうかに関係なく、強制わいせつ罪が成立します。わいせつな行為とは、「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」ものと定義されており、一般的な社会通念に照らして性的と解される行為を指します。具体的には、胸や陰部などの体の一部を触る、無理やり抱きつくなどの行為などです。
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(2)未遂でも罰せられる可能性はある?
強制わいせつ罪は未遂に終わっても罪に問われる可能性があります。刑法180条には、強制わいせつ罪などの未遂を罰することが明記されています。ここでいう「未遂」とは、わいせつ行為に及ぼうとして暴行または脅迫をしたが、相手に抵抗されるなどして、わいせつ行為を遂げることができなかった場合をいいます。こういったケースでは、わいせつ行為は果たされなかったとしても、強制わいせつ未遂罪が成立します。
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(3)強制わいせつ未遂罪にはどのくらいの刑罰が科される?
刑法176条には、強制わいせつ罪が成立した場合には、6か月以上10年以下の懲役を科すことが記されています。強制わいせつ罪が未遂に終わった場合であっても、基本的にはこの幅の中で処罰されることになります。ただし、後記のように、減軽がなされる可能性があります。
2、強制わいせつ未遂罪とは具体的にどんなケース? 強制性交等未遂罪との違いは?
上記のとおり、強制わいせつ罪で起訴されると、仮に未遂であっても10年以下の懲役刑が科される可能性もあり、重罪です。ここでは強制わいせつ未遂罪にあたる具体的なケースや強制性交等未遂罪との違いを解説します。
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(1)強制わいせつ未遂罪の具体例
実際のところ、強制わいせつ罪が「未遂に終わる」とはどのような状態のことなのでしょうか。たとえば次のようなケースが考えられます。
- 道端で歩いている女性の後ろから抱きつき、胸などを触ろうとしたところ、女性から激しく抵抗されて胸などを触ることができなかった場合
- 女性の口をふさいでわいせつな行為をしようとしたところ、大声を出されてその場から逃げた場合
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(2)強制性交等未遂罪との違い
強制わいせつ未遂罪と類似した犯罪で強制性交等未遂罪があります。強制性交等罪は、性犯罪の中でも特に重い犯罪で、暴行や脅迫を用いて、性交等(性交、肛門性交、口腔性交)をおこなう犯罪です。
強制わいせつ未遂罪と強制性交等未遂罪については、境界線があいまいであり、場合によっては、より重い罰(5年以上の有期懲役)を科される強制性交等未遂罪が成立してしまうおそれがあります。この点、強制性交等を行う意思(故意)があったか否かが重要になります。強制性交等の故意はあったが未遂に終わったのであれば強制性交等未遂罪が成立し、強制わいせつの故意で未遂に終わった場合には強制わいせつ未遂罪が成立します。この故意の有無は事件の具体的状況から判断されますが、性交等を行う意思がなかったのであれば、その点をはっきりと主張したほうがいいでしょう。
3、強制わいせつ未遂罪は減軽されるの?
強制わいせつ行為は未遂の場合に減軽されることはあるのでしょうか。ここでは強制わいせつ未遂罪における減軽について解説します。
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(1)減軽の可能性
結論から言うと、上記のとおり、強制わいせつ未遂罪には減軽の可能性があります。強制わいせつ行為が未遂に終わった場合であっても、既遂であった場合と同様に刑罰を科されるのが原則です。ただし、未遂の場合には裁判官の裁量で減軽できるとの規定があるため、強制わいせつ未遂罪も減軽される可能性があります。しかし、そもそも強制わいせつ罪の法定刑が重いため、仮に減軽されたとしても極端に軽い刑が科される見込みは低いでしょう。
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(2)刑法43条との関係
未遂罪の減軽については、刑法43条本文において規定されています。刑法43条には、犯罪行為に着手したものの達成しなかった者については、裁判官の裁量でその刑を軽くできるという旨の記載があります。そのため、強制わいせつ未遂罪において刑が減軽される場合には、3か月以上5年以下の範囲で処罰されることになります(刑法68条3号)。
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(3)現実的な減軽の見込み
強制わいせつ未遂罪が成立する場合、自らの意思でやめるのではなく相手の抵抗によりわいせつ行為を遂げられないというケースが大半であると考えられます。そのため、実際に処罰段階で減軽がなされるか否かは裁判官の裁量に委ねられることになります。
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4、強制わいせつ行為をした覚えがある方は弁護士に相談を
強制わいせつ行為をしてしまったら、仮にそれが未遂に終わったとしても、起訴される可能性をできる限り減らすため、一刻も早く弁護士に相談することが不可欠です。ここでは、弁護士に相談するメリットを解説します。
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(1)示談を成立させられる
強制わいせつ未遂罪では、被害者の方との示談が成立するか否かが非常に重要です。なぜならば、警察からの釈放や、検察の起訴または不起訴処分の決定、あるいは裁判で言い渡される判決など、示談成立の有無は、あらゆる局面で大事な判断材料となるからです。被害届が出される前に示談が成立すれば、逮捕を回避できる可能性も生じます。
しかし、性犯罪において、加害者が被害者と示談交渉を直接行うことは簡単ではありません。そのため、被害者の連絡先を知っている場合でも、弁護士に相談し、被害者との示談交渉を一任するのが得策と言えるでしょう。
弁護士は、事実の確認、わいせつ行為の故意、被害者の同意の有無やわいせつ行為に至るまでの状況などを前提にした上で、被害者感情にも考慮しながら適切に示談交渉を行います。第三者である弁護士からの交渉であれば、加害者本人やその家族からの示談交渉よりも被害者が応じる可能性が高くなるでしょう。
また、被害者から法外な慰謝料を請求された場合も、適正な額となるよう交渉することができます。 -
(2)状況に応じたアドバイスを受けられる
自首をするべきか否か判断に迷っている場合でも、自ら判断せず、まずは弁護士へ相談される方がよいでしょう。また万が一逮捕されても、早めに弁護士へ相談することで、取り調べについてのアドバイスを受けることができ、取り調べで不利な供述をすることを回避することができるでしょう。そしてそれが早期の身柄釈放につながることもあります。
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(3)減軽の可能性が生じる
強制わいせつ未遂罪でも刑罰の対象となりますが、上記のとおり減軽される可能性があります。強制わいせつ未遂罪で万が一起訴されたとしても、弁護士のサポートを受けることで、裁判において有利な証拠を集める、不利な証拠を作らないなどの対応を通じて、刑が減軽される可能性を高めることができます。
5、まとめ
強制わいせつ罪は重罪ですので、起訴されて有罪判決となれば、懲役を科される可能性も考えられます。そして、たとえ未遂に終わったとしても未遂罪として処罰されます。
このような事態を極力回避するためには、被害者との示談を成立させることが非常に重要です。しかし、性犯罪では加害者本人が被害者との示談を成立させるのは容易ではなく、加害者本人はもちろん、ご家族が直接交渉しても逆効果になるおそれがあります。まずは弁護士に相談して、総合的なサポートを受けることをおすすめします。
もしも強制わいせつ未遂罪で逮捕されそうになったら、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。性犯罪の加害者弁護実績の豊富な弁護士が、事件の早期解決に向けて、徹底的にサポートいたします。
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