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監護者性交等罪で逮捕されたらどうなる? 罪を認めた場合と認めない場合の違い
18歳未満の未成年者を保護・指導する立場にありながら、その未成年者と肉体関係を持ってしまった場合、監護者性交等罪という罪に問われる可能性があります。
監護者性交等罪は、監護者が未成年者を対象とする点で特に悪質性の高い犯罪とされています。
ここでは、監護者に該当するのは誰なのか、どのような行為が罪となるのか、そして有罪となればどの程度の刑罰が科されるのかを解説し、併せて逮捕された場合の対処方法も解説します。
1、監護者性交等罪とは
監護者性交等罪は、平成29年に行われた刑法法改正で誕生した犯罪です。
新設の経緯や概要について解説します。
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(1)刑法改正による新設の経緯
平成29年の刑法改正以前には、監護者わいせつ罪や監護者性交等罪という罪は存在しませんでした。
監護者による性犯罪は、強制わいせつ罪や旧強姦罪・旧準強姦罪の対象として扱われていたのです。
ただ、旧強姦罪などでは、性交を強制的なものと見なす要件として、「暴行または脅迫」によることを定めていました。監護者と未成年者の間では、性的な行為をするにあたって暴行や脅迫を用いないケースも珍しくなかったために旧強姦罪などの要件を満たさず、より軽い児童福祉法違反などで処罰するしかないという不都合があったのです。
そこで、監護者による性犯罪も厳格に処罰しようということから、これらの罪が新設されたという背景があります。 -
(2)監護者わいせつ罪・監護者性交等罪の概要
監護者わいせつ罪や監護者性交等罪は、被害者を現に監護する者が、その影響力に乗じてわいせつ行為や性交などを行った場合に成立する罪です。
「性交等」には肛門や口腔を用いた行為も含まれ、女子のみならず男子も被害者として想定されています。しかし、加害者が監護者だという点、行為が影響力に乗じたものだという点で違いがあります。
刑罰や処罰対象行為は、強制わいせつ罪や強制性交等罪と変わりません。
刑罰は監護者わいせつ罪では6か月以上10年以下の懲役、監護者性交等罪では5年以上の有期懲役です。
2、監護者に該当するケースとは
監護者の定義について知っておきましょう。
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(1)監護者とは
この罪における「監護者」とは、18歳未満の未成年者を保護・監督する者を指します。
代表的な立場としては親が挙げられますが、それ以外でも監護者と見なされることがあります。
ただ、保護・監督とは事実上のものであり、あらかじめ定型的な要件に当てはめて判断されるものではありません。そこで、監護者とされるケースでの判断ポイントを見てみましょう。 -
(2)監護者とされる判断ポイント
具体的には、以下のような状況が監護者かどうかの判断要素とされます。
- 同居の有無
- 未成年者(18歳未満)に対する指導状況
- 身の回りの世話などの生活状況
- 生活費の支出などの経済状況
- 未成年者(18歳未満)に対する諸手続きの実行状況
たとえば、同居して身の回りの世話をしていれば、親でなくとも監護者と判断されやすくなります。また、食費や日用雑貨、学費などの経済的サポートをしている場合にも監護者にあたると考えられるでしょう。
あるいは、契約時に保護者として保証を行っている、日常生活において指導をしているなどの事情があれば、監護者と判断される傾向にあります。
これらに該当する立場としては、養親や施設の職員などが挙げられるでしょう。 -
(3)監護者にあたらない場合
たとえば教師やサークルの顧問など、指導はしているものの未成年者の生活や経済状況を支えているわけではない者は、本罪での監護者にはあたらないとされます。
これは、あくまでも限られた時間内における指導関係にすぎないためです。
3、被害者からの刑事告訴がない場合でも起訴される場合がある
性犯罪は被害者さえ黙っていれば露呈しない、逮捕されないのではと考えている方もいるようです。
しかし、結論からいえば、監護者性交等罪にあたる行為をすれば、被害者が告訴しなくても逮捕される可能性があります。
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(1)監護者わいせつ罪・監護者性交等罪と告訴
平成29年改正以前の刑法では、致死や致傷を伴わない性犯罪事件を起訴する(刑事裁判として扱う)には、被害者が犯人の処罰を求める「告訴」が必要とされていました。被疑者による告訴がなければ、検察が起訴できないと規定された罪を「親告罪」といいます。
なぜ親告罪に規定されていたのかといえば、性犯罪被害者のプライバシーなどに配慮するための取り扱いでした。しかし、他方で告訴がなされない限り加害者が処罰されないという大きな問題がありました。
傷ついた被害者が泣き寝入りせざるを得ない状況を踏まえ、改正された刑法では強制性交等罪をはじめとする性犯罪が告訴不要で起訴できる非親告罪となっています。
新設された監護者わいせつ罪・監護者性交等罪も同様に非親告罪となっており、被害者からの告訴がなくても起訴される可能性があります。 -
(2)監護者わいせつ罪・監護者性交等罪の特徴と告訴
監護者わいせつ罪や監護者性交等罪が非親告罪とされているのには、それらの罪の特徴も密接に関係しています。
一般的に18歳未満の者は精神的に未熟で、監護者に対する経済的な依存度も高いものです。そのため、監護者からの性的加害に対しては、たとえ暴行や脅迫を受けていなかったとしても逆らうのが難しい状況にあると考えられます。
そのような状況につけ込んでわいせつ行為や性交などを強いるのは、少なくとも強制わいせつ罪や強制性交等罪と同程度には悪質性の高い行為といえるでしょう。
また、監護者からの性的加害に抵抗するのが難しいのだとすれば、告訴もまた心理的に困難なものと考えられます。告訴という要件を設けないのは、刑事裁判や処罰へのハードルを下げることにもつながるのです。
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4、監護者性交等罪で逮捕される可能性
監護者わいせつ罪や監護者性交等罪の事実があれば、認めるにせよ否定するにせよ、警察が必要と判断すれば逮捕されるおそれがあります。
一般的に、罪を否認している場合のほうが、身柄の拘束期間は長引く傾向にあります。
逮捕されると、警察による取り調べが最長48時間行われ、検察に送致されます。
送致を受けた検察は、24時間以内に勾留の必要性を判断し、裁判所に対して勾留請求を行います。勾留とは、身柄の拘束を行ったまま取り調べを行う措置です。勾留が認められたら、最長で20日間の勾留が行われる場合もあります。
身柄拘束期間が長引くほど社会生活上の影響も大きくなるため、早急な対処が必要です。
身柄拘束からの解放を目指すのであれば、なるべく早めに弁護士に依頼して、弁護活動をしてもらわなければなりません。かたくなに犯行を認めない態度は検察官や裁判官に与える心証も悪いものとなりかねません。
なお、否認したまま有罪となった場合、罪も重くなる可能性があります。
本当に無実なら、法律に沿った適切な主張が求められます。弁護士のサポートは不可欠といえるでしょう。
5、まとめ
今回は監護者わいせつ罪や監護者性交等罪について解説しました。これらの罪は監護者という立場に乗じて未成年の被害者に性交などを迫るものであり、自由意志を持つ成人に対する性的加害とは別種の悪質性が認められます。
また、監護者による性的加害は密室で行われることも多く、捜査には時間がかかるため、必然的に身柄拘束期間も長引きがちです。早めの釈放を求めるならば、できるだけ速やかに弁護士への依頼を行い、示談交渉などの対処をしなければなりません。
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