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盗撮で逮捕された家族を保釈してもらうには? 保釈の条件や逮捕後の流れを解説
盗撮の容疑でご家族が逮捕されてしまった場合、できるだけ早く家に帰ってきてほしいと願うのも無理ないことです。
ただ、警察で取り調べを受けている被疑者(逮捕された人)や被告人(起訴された人)の身柄を解放させ、家に帰れるようにするためには、いくつかの条件を満たす必要があります。きちんと対策をとらなければ、身柄拘束期間が長引くことにもなりかねません。
今回は、起訴後も勾留されているご家族を連れ戻す方法である「保釈」について、その条件や盗撮で逮捕された場合の流れを解説します。
盗撮行為は令和5年7月13日に新設された「撮影罪(性的姿態等撮影罪)」によって処罰の対象となります。
1、盗撮事件で逮捕! 保釈の条件とは
まずは保釈の意味と条件を確認しておきましょう。
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(1)保釈とは
取り調べを受ける者を被疑者、起訴されて刑事裁判にかけられる者を被告人といいます。刑事裁判を待つ被告人は、裁判の準備中、その身柄を拘束されることがあります。これを勾留(こうりゅう)といいます。
保釈とは、被告人が保釈金を支払うことで勾留を解かれ、一時的に解放されることです。
また、保釈には権利保釈と裁量保釈があります。前者は被告人が権利として保釈申請を行い、条件を満たしていれば保釈されるというもので、後者は保釈の条件を満たさなかった場合でも裁判官の裁量により保釈されるという制度です。 -
(2)保釈が認められる条件
保釈が認められる前提として、その条件は刑事訴訟法に定められています。
この条件を整理すると、以下の通りです。
- 死刑・無期懲役・法定刑の刑期の下限が1年以上の懲役・禁錮刑ではないこと
- 前に死刑・無期懲役・10年以上の懲役・禁錮刑のいずれかで有罪になっていないこと
- 常習での長期3年以上の懲役・禁錮に当たる罪を犯していないこと
- 証拠隠滅のおそれがないこと
- 被害者や証人、それらの親族への加害の心配がないこと
- 氏名と住所が明らかであること
これらの条件を満たすときに申請を行った場合、保釈を許さなければならないものと定められています。 -
(3)申請について
申請者は被告人本人か家族、事件を担当している弁護士で、申請は裁判所に保釈請求書を提出することにより行います。保釈が認められたら、提示された額の保釈金を納付するという流れです。
2、盗撮で勾留されることはある? 盗撮事件の刑罰について
刑法に盗撮罪という罪は存在しないため、盗撮がどのような犯罪に該当するのかが問題となります。盗撮行為を行った場所や盗撮行為の内容によっても異なりますが、一般的には軽犯罪法および建造物等侵入罪、もしくは都道府県の迷惑防止条例が適用されるでしょう。
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(1)軽犯罪法違反
事例としては、被害者の自宅を動画で撮影したケースなどが考えられます。軽犯罪法には「のぞき見」の処罰が定められており、これが盗撮行為の場合にも適用されるとされています。主として私的な空間で行われた盗撮行為が処罰対象となります。
軽犯罪法違反の罰則は拘留または科料とされており、有罪となれば1日以上30日未満の身柄拘束か、1000円以上1万円未満の金銭徴収がなされます。 -
(2)建造物等侵入罪
盗撮の手段として他者の敷地や住居などに入り込んだ場合、建造物等侵入罪が成立する可能性もあります。正当な理由なく、管理者の意思に反して住居や建造物などへ侵入する行為が該当します。盗撮を目的とした立ち入りは住人の許可を得たものではなく、また許可を得られるとも考えられないため、不法侵入に当たるでしょう。
これは刑法にも定められている犯罪で、刑罰は3年以下の懲役または10万円以下の罰金となっています。 -
(3)迷惑防止条例違反
事例としては、公共とされる駅や広場などの場で撮影したケースなどが考えられます。迷惑防止条例違反の罰則は各都道府県や市町村ごとで異なりますが、多くの場合は懲役刑または罰金刑と定められています。
たとえば都の条例では、常習ではない通常の盗撮行為について、1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑が定められており、軽犯罪法違反の罰則よりも重くなっています。
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3、盗撮事件での逮捕から保釈までの流れ
盗撮をして逮捕された場合、保釈までの流れは基本的に決まっています。順にみていきましょう。
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(1)逮捕から保釈まで
盗撮の場合、⼤半は現⾏犯逮捕、つまり盗撮現場で取り押さえられての逮捕です。しかし、少数ながら後日に通常逮捕されるケースもあります。逮捕からの一般的な流れとしては、以下の通りです。
① 逮捕
② 警察での取り調べ
③ 事件が検察に送致
④ 検察での取り調べ
⑤ 起訴
⑥ 保釈申請・裁判官の裁量判断
⑦ 保釈
まず逮捕され、警察で取り調べを受けて、48時間以内に事件が検察官送致されます。検察では起訴か不起訴かの判断が24時間以内に行われ、起訴処分と判断されれば刑事裁判が行われることとなります。
保釈が可能となるのは、検察で起訴処分とされた後です。ただし、上述のように逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合、あるいは過去に一定の重大犯罪を行っていた場合などには、保釈が認められないこともあります。 -
(2)被疑者勾留と被告人勾留
勾留には被疑者(起訴される前)の段階で行われるものと、被告人(起訴された後)の段階で行われるものがあります。前者を被疑者勾留、後者を被告人勾留といいます。
被疑者勾留は原則として10日間ですが、やむを得ない場合には検察官の請求によって裁判官がさらに10日間以内の延長を認めることもあります。なお、この延長は一度限りです。
これに対し被告人勾留は公訴提起の日から2か月と定められており、特に必要がある場合には原則として一度限りではありますが、延長も可能です。
保釈はこの被告人勾留中に行われるものであり、保釈期間としては一般的に1か月ほどとされています。
4、なぜ盗撮事件で保釈が重要なのか?
盗撮事件で逮捕された場合、保釈されることが重要となります。保釈の重要性については、主に精神面と社会面、そして訴訟対策面からみていく必要があります。
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(1)精神面からの重要性
起訴された後、保釈されなければ被告人はずっと拘置所に身柄を拘束され続けることとなります。不慣れな環境に身を置き続ける羽目に陥るわけであり、精神的な負担は想像を絶します。
特に刑事裁判は数日で終わるほど短いものではなく、1か月から、長ければ年単位でかかることもあります。慣れ親しんだ自宅で生活できるかどうかは、非常に大きな問題なのです。 -
(2)社会面からの重要性
身柄拘束中は外を自由に出歩けないので、当然ながら通勤や通学もできません。そうなると解雇されたり退学処分となったりする可能性も考えられます。勾留によって社会生活上にも多大な影響が生じてしまうのです。
保釈されれば通勤や通学も可能となるため、学校や職場への説明や対応方法について考えることができます。 -
(3)訴訟対策面からの重要性
刑事裁判において罪を軽くするには、被害者との示談も重要となってきます。盗撮事件では盗撮の対象となった被害者が存在するため、相手と交渉して宥恕(ゆうじょ)という「許す」旨の意思を示してもらうことができれば、裁判官もそれを踏まえた判断を下す可能性が高くなるでしょう。
加害者である被告人本人が被害者と接触するのは避けなければなりませんが、弁護士に依頼して交渉へ向けた準備を進めることにより、訴訟を有利に展開することも可能です。
5、まとめ
盗撮事件は主に現行犯逮捕が多く、罰則も科料となる傾向があります。盗撮で逮捕された場合は示談交渉も重要ですが、他方で保釈も重要です。
ご家族が盗撮で逮捕され勾留されている場合は、加害者の社会的立場や精神面を守る目的でも、保釈請求に向けて動くべきといえるでしょう。
保釈が認められるには、一定条件の充足や手続きが必要となります。早期の身柄解放をお求めであれば、ベリーベスト法律事務所にぜひご相談ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が全力でサポートします。
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