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ナンパしただけなのに逮捕! ナンパが犯罪行為になるのはどんな時?
令和元年5月、自転車で帰宅中の女性をナンパした男が、強制わいせつ致傷の容疑で逮捕されました。男は女性をナンパしたが無視されたことに腹を立て、女性を自転車ごと押し倒して体を触り、ケガをさせたとのことです。
この事例のようにナンパした相手を押し倒す、ケガをさせるなどの行為がなくても、ナンパが犯罪にあたる場合があります。断られたのにしつこく声をかけ続ける、相手の進路を妨害するなどの行為は犯罪となりうる行為です。ナンパの現場では比較的よく見られる光景ですが、どのような行為をすると法律に触れてしまうのでしょうか。
今回はナンパがどのような犯罪にあたり得るのか、具体的な行為や罰則の内容を含めて弁護士が解説します。
1、ナンパは犯罪なのか?
面識のない異性に声をかけて親しくなろうとする行為を一般的にナンパといいますが、そのこと自体がただちに犯罪になるわけではありません。声をかけたが断られてすぐに引き下がるという流れであれば、犯罪に発展することは考えにくいでしょう。
しかし、ナンパの行為様態によっては犯罪に該当する場合があります。
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(1)迷惑や不安感を与える行為は違法となる場合がある
しつこいナンパをすれば罪に問われるおそれがあります。たとえば次のようなケースです。
- 無視されたのに何分も隣を歩いて話しかける
- 両手を広げて相手の前に立つなどし、進路を妨害する
- 断れたのにその場から立ち去ろうとしない
人は待ち伏せや進路妨害によって自由を奪われると、迷惑に感じ、怖い気持ちにもなります。法律や条令ではこのような迷惑行為を禁止しており、具体的には、軽犯罪法や迷惑防止条例に違反する可能性があるのです。 -
(2)軽犯罪法違反
軽犯罪法第1条28号では次の行為を規制しています(追随等の罪)。
- 他人の進路に立ちふさがって立ち退こうとしない
- 身辺に群がって立ち退こうとしない
- 不安や迷惑を覚えさせるような方法で他人につきまとう
しつこいナンパは、まさにこの規定にあたるでしょう。
軽犯罪法に違反した場合の刑罰は「拘留または科料」です。
拘留は1日以上30日未満の間、刑事施設で拘置される刑を、科料は1000円以上1万円未満の金銭を徴収される刑です。懲役や罰金と比較すれば軽い刑とされていますが、拘留や科料でも前科がつきます。その影響は決して小さくないといえるでしょう。 -
(3)迷惑防止条例違反
都道府県が定める迷惑防止条例には、つきまとい行為などを禁止する規定があります。
東京都の場合は第5条の2前段で、つきまといや待ち伏せ、立ちふさがる行為などを禁止しています。
罰則は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」です(常習の場合は2年以下の懲役または100万円以下の罰金)。
なお、迷惑防止条例は都道府県によって内容に違いがあります。どの地域でナンパをしたのかによって、条例違反となる可能性や罰則の内容が変わる場合があると知っておきましょう。
2、行き過ぎたナンパで問われる罪
ナンパの行為様態が「しつこい」というレベルを超えて「行き過ぎ」になった場合は、別の法律に抵触する可能性があります。
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(1)暴行罪
まずは暴行罪(刑法第208条)です。暴行と聞くと殴る、蹴るなどの暴力行為をイメージする方が多いでしょうが、直接的な暴力行為でなくても暴行罪は成立します。
ナンパでは、たとえば次のケースで暴行罪に問われる可能性があります。- 相手の腕や衣服をつかんで引っ張った
- 壁に両手をつき、相手が逃げられないようにしたうえで胸を押しつけた
- 断れたことにイライラして相手に物を投げつけた
暴行罪の罰則は「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」です。 -
(2)強制わいせつ罪
次に強制わいせつ罪です(刑法第176条)。暴行や脅迫を用いてわいせつな行為をする重大犯罪なので「たかがナンパで強制わいせつ罪なんてあるのか」と感じる方がいるかもしれません。しかし実際、ナンパが強制わいせつ行為に発展し、逮捕となった事例は多数あります。
行き過ぎたナンパが強制わいせつ罪にあたるのは、次のようなケースです。- 相手の後ろをつけまわして胸をもんだ
- 嫌がる相手に抱きついた
- 壁に押さえつけて体を触った
強制わいせつ罪の罰則は「6か月以上10年以下の懲役」です。罰金や科料のような金銭を徴収される刑は設けられていないため、不起訴となるか執行猶予がつかない限りは必ず刑務所へ収監されます。
また冒頭の事例のように、強制わいせつをはたらく際、相手にケガをさせてしまうと強制わいせつ致傷になります。罰則は「無期または3年以上の懲役」と、いっそう重いものです。相手のケガが軽微であっても成立する可能性がある点にも注意が必要でしょう。
3、未成年をナンパした場合の法的責任は?
ナンパをした相手が未成年だったときには、飲酒の問題、ナンパのあとに性交・性交類似行為にいたった場合にはさらに別の問題が生じます。
未成年の飲酒は「未成年者飲酒禁止法」で禁止されていますが、未成年である本人が処罰されるわけではありません。法の趣旨が未成年の健全な育成にあることから、周囲の成人に法的責任が発生します。
たとえば第1条2項で、親権者や監督代行者は未成年が飲酒しようとしたときは制止しなければいけないと定められており、違反すると科料に処せられます。
ナンパをした人は未成年者の親権者や監督代行者にはあたらないため、実際に処罰されるわけではありませんが、社会的・道義的責任は問われるでしょう。勤務先から何らかの処分を受ける可能性も否定できません。
ナンパのあとに未成年と性交・性交類似行為をすると、それ自体が犯罪にあたる可能性があります。相手が18歳未満であれば、都道府県が定める青少年健全育成条例違反にあたるでしょう。
13歳以上の相手の同意を得ずに性交・性交類似をする、または13歳未満の相手と同様の行為をした場合には、強制わいせつ罪や強制性交等罪(刑法第177条)が成立します。
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4、弁護士に相談すべき理由
しつこいナンパや行き過ぎたナンパをしたために被害届を提出されたり、警察署に駆け込まれたりすると逮捕される可能性があります。このようなおそれが生じている場合は弁護士へ相談しましょう。ナンパと聞くと軽い印象を受けがちですが、犯罪が成立すれば刑罰を受け、前科がつく可能性があるため速やかな対応が必要です。
逮捕された場合には、弁護士が早期に面会して取り調べへの対応をアドバイスします。ナンパがどの犯罪にあたるのかなどの法的知識や、捜査機関への対抗策も有しているため、長期の身柄拘束を防げる可能性が高まります。
弁護士は同時に、ナンパにまつわる犯罪でとくに重要な示談交渉をおこないます。「被害者に謝罪して許しを得られている」という事実は、検察官による起訴・不起訴の判断に際し、評価され得るひとつの要素だからです。迷惑をかけた相手と示談をすることで、不起訴処分になる可能性が生じるわけです。
ただしナンパの場合は、そもそも交渉しようにも相手方の連絡先を知らないケースが大半でしょう。捜査機関が教えてくれることはまずありません。
連絡先を知っていたとしても、相手方が「迷惑をかけてきた相手とは会いたくない」と考えるのは当然なので、本人が直接交渉するのは避けるべきです。とくに強制わいせつ罪などの性犯罪に発展しているケースでは、示談交渉は非常に難しいものとなります。
この点、弁護士であれば捜査機関を通じ、相手方の許可を得たうえで連絡先を入手できる可能性があります。
交渉の際には弁護士が代理人となることで、相手方の警戒心が緩和されます。加害者に代わって真摯(しんし)な謝罪の言葉を伝え、類似の事例を考慮した示談金を支払えば、被害届を取り下げてもらえる可能性が高まるでしょう。
5、まとめ
ナンパは行為様態によって犯罪にあたる場合があります。相手の進路をふさぐ、しつこく追いまわす、腕や衣服に触れるなどの行為は軽犯罪法や条例違反となり得ます。体を触る、抱きつくなどの行為は強制わいせつ罪などの重大犯罪に発展しかねません。
しつこいナンパや行き過ぎたナンパで被害届をだされた、逮捕のおそれがあるといった場合にはベリーベスト法律事務所へご相談ください。刑事事件における加害者弁護の実績が豊富な弁護士がサポートします。
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