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家族が強制性交等致死傷の加害者に…犯罪の定義や刑罰等を弁護士が解説
令和元年版の犯罪白書によると、平成期における旧来の強姦罪、現行法では「強制性交等罪」と呼ばれる犯罪の認知件数は平成15年をピークに減少しており、平成30年は1307件でした。
この件数の中には、通常の強制性交等にあたるもののほか、相手を死傷させた「強制性交等致死傷罪」にあたる件数も含まれています。
非常に重い刑罰が規定されており、もし、容疑をかけられてしまった方は早急かつ慎重に対策を講じる必要があります。本コラムでは、強制性交等致傷罪の定義や刑罰などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
令和5年7月13日に強制性交罪は「不同意性交等罪」へ改正されました。
1、強制性交等致死傷罪の定義
そもそも、強制性交等致死傷罪とは、いったいどのような罪なのでしょうか。その内容を見ていきましょう。
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(1)強制性交等の機会に死傷させた場合に成立する
強制性交等致死傷罪は、強制性交等罪の成立が前提となります。強制性交等罪は「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という)をした者」と「13歳未満の者に対し、性交等をした者」に刑罰を科す犯罪です。
そして、強制性交等の機会において、被害者を負傷、もしくは死亡させてしまうと、強制性交等致死傷罪が成立します。
「強制性交等の機会」とは、まさに強制性交等にあたる行為におよんでいる最中に限らず、強制性交等を目的とした暴行や、性交等にあたって陰部に裂傷を伴った場合も含まれます。さらに、逃走を試みた被害者が転倒して負傷した場合も同様に扱われる可能性があります。 -
(2)致死・致傷にわけられる
強制性交等致死傷罪は、被害者に与えた結果に応じて「強制性交等致死」と「強制性交等致傷」にわけられます。被害者を死亡させた場合は「強制性交等致死傷罪」となり、被害者が負傷した場合は「強制性交等致傷罪」で処罰されるのです。
逮捕されたときに告げられる罪名や検察庁に送致された際の罪名、起訴され刑事事件となった際の事件名は、強制性交等致死傷罪ではなく「致死」または「致傷」のいずれかになります。
逮捕の段階では被害者が重傷を負っているため「致傷」とされた場合でも、容態が悪化し死に至った場合は、送致や起訴の段階で「致死」に罪名が変更されることも考えられます。
2、強制性交等致死傷罪の刑罰
強制性交等致死傷罪にあたる行為をはたらいた場合、どの程度の刑罰が下されることになるのでしょうか?
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(1)最長で無期懲役が科せられる
刑法第181条2項では、強制性交等致死傷罪の法定刑は「無期又は6年以上の懲役」と規定されています。つまり、最長で無期懲役となり、最短でも6年以上の懲役は免れられません。
犯した行為・罪が「致死」にあたる場合は、重たい刑罰が科せられると考えておくべきでしょう。 -
(2)未遂も罰せられる
刑法第181条2項には「またはこれらの未遂罪を犯し」という文言が付け加えられています。つまり、強制性交等致死傷罪では、たとえ未遂で終わった場合でも処罰の対象です。
法律の考え方としては、強制性交等を目的として暴行・脅迫におよんだ時点で犯行の「着手」があったものとみなされ、性器・肛門・口腔に一部だけでも挿入すれば「既遂」となると考えられております。
これを考慮すると、強制性交等の目的で被害者に暴行を加えた時点で被害者を死傷させ、性交等にはおよばなかったとしても、すでに着手しているため「未遂」となり、処罰の対象となる余地が生じえます。
3、現行法で知っておきたいポイント
強制性交等致死傷罪は、平成29年の刑法改正によって従来の強姦致死傷罪から大きく変更された点があります。強制性交等致死傷罪について知りたいと思い調べても、インターネットや書籍には古い情報が残っていることもあり、混乱しやすい状態です。
そこで、現行法で改めて把握しておくべきポイントを確認しておきましょう。
- 構成要件 旧来の強姦致死傷罪では、前提となる強姦罪が「姦淫」のみを処罰の対象としていました。
- 性別での分類を撤廃 旧強姦罪では、被害者を「13歳以上の女子」または「13歳未満の女子」に限定していました。改正前の強姦罪で女性が処罰の対象となるのは共犯として処罰されるケースに限られていましたが、改正によって「女子」が「者」となり、性別での分類が撤廃されています。
- 非親告罪化された 現行法の強制性交等致死傷罪は「非親告罪」です。非親告罪の場合、被害者が告訴を取り下げても検察官の判断によって起訴をすることが可能となります。
- 裁判員裁判の対象事件である 強制性交等致死傷罪は法定刑に無期が定められているため、「裁判員制度」の対象事件です。裁判員制度対象事件の場合、刑事裁判において、裁判官だけが審理するのではなく、国民から無作為に選出された裁判員も合議に参加します。
現在の強制性交等では、肛門や口腔に性器を挿入するなどの行為も含まれます。
一般市民の判断が判決・量刑に影響を与えるおそれがある事件だと心得ておきましょう。
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4、強制性交等致死傷の罪に問われた場合に弁護士に相談できること
強制性交等致死傷事件を起こしてしまった場合は、ただちに弁護士へ相談しましょう。
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(1)裁判員制度を念頭にいれた弁護活動
強制性交等致死傷罪は、先ほど触れたように、法定刑に無期懲役が含まれるため、裁判員制度の対象となります。
裁判員裁判では、一般市民の感情が量刑判断に大きな影響を与えるため、強制性交等におよんだうえに被害者を死傷させてしまったという事実は反感を買いやすく、重い量刑が下されやすいといえるでしょう。
弁護士は刑事裁判において、被告人となった加害者の刑罰減軽を目指します。とはいえ、裁判員裁判では減軽の獲得が非常に難しく、被告人が自身に有利な状況を供述するだけでは裁判官・裁判員を納得させることはできません。
被告人にとって有利な証拠を提示し、さまざまな事情を考慮して重い刑罰は不要であることを主張することは非常に難しいのです。
特に強制性交等致死は人の死が絡む重大な事件です。個人の判断だけで単なる言い逃れにすぎない不合理な供述を展開するのは危険でしょう。
弁護士のサポートを受けて、裁判員が納得するだけの証拠を収集するのが賢い選択といえます。 -
(2)被害者家族への謝罪と示談交渉
強制性交等致死傷事件では、被害者本人が亡くなっている、もしくは対応を拒むことが多いため、その家族らに謝罪の意を伝えて示談交渉を進めることが考えられます。
ただ、犯罪によって大切な家族を失った、もしくは傷ついた被害者家族は、加害者本人からの接触を強く拒む傾向があるため、個人では対応できません。
弁護士を代理人として選任することで、はじめて被害者家族への謝罪や示談交渉が可能になるケースもあるため、まずは弁護士への相談・依頼をおすすめします。
5、まとめ
強制性交等致死は、性犯罪の厳罰化によって改正前の強姦致死傷罪よりも罰則が強化されています。また、裁判員裁判の対象事件でもあり、一般市民が刑事裁判に参加し量刑を判断するため、減軽を獲得するのも容易ではありません。
強制性交等致死傷の容疑がかけられてしまった場合は、早急な対策が必要です。経験豊かな弁護士がサポートするので、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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