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児童買春の時効はどのくらいで成立する? 量刑判断についても解説
近年はSNSを通じて気軽に児童と出会う機会が増えたことで、トラブルが起こりやすい環境となりました。
令和2年3月には、外務省に勤務する男性が女子高校生に対して金銭を渡す約束をしてわいせつな行為をしたとして、児童買春の疑いで逮捕されています。児童買春をしたことがある人にとって、時効はいつ成立するのか、自首をすれば刑が軽減されるのかなどは、大きな関心事といえるのかもしれません。
この記事では、まず、児童買春という行為が法律でどのように定義されているのかを触れたうえで、時効が成立するタイミングや児童買春がどのような犯罪に抵触するのかを弁護士が説明します。
1、児童買春の成立要件
児童買春は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」で禁止されています。援助交際などとも呼ばれますが、刑事事件として扱われ、逮捕される可能性がある犯罪行為です。
児童買春の罪は次の要件を充たすと成立します。
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(1)18歳未満の児童との性交等
18歳未満の児童と性交等を行い、かつ行為の際に18歳未満だと認識している必要があります。ここでいう性交等とは性交以外に、児童の性器を触る、自己の性器を触らせるなどの性交類似行為も含まれます。
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(2)対償の供与またはその約束
性交等をするにあたり、現金を渡す、ブランド品を買い与えるなど、対価を与える行為や、その約束をした場合に成立します。児童本人だけでなく、買春の仲介者や児童の保護者に対価を与えた場合も同様です。
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(3)相手が18歳未満だと知っていた
相手が18歳未満だと知らずに行為におよんだ場合には、故意がなかったとされ、児童買春は成立しません。しかし、たとえ相手が18歳以上だと言っていても、「若く見えるから、もしかしたら高校生かもしれない」程度の認識があった場合、故意があったとされ得ます。
故意があったかどうかは、年齢確認の有無、行為にいたるまでの児童とのやり取りなどの客観的事実をもとに判断されるため、単に「知らなかった」という主張は通らないと思っておくべきでしょう。
2、児童買春の時効が成立するタイミング
それでは、児童買春の時効はどのようになっているのでしょうか。刑事事件における時効である「公訴時効」について、ポイントを見ていきましょう。
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(1)公訴時効は5年
公訴時効の期間は刑事訴訟法250条で、犯罪の法定刑ごとに定められています。児童買春の公訴時効は5年です。公訴時効が成立すると検察官は起訴できなくなります。
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(2)時効の起算日と停止事由
時効は違反行為が終わったときから起算します。たとえば、令和2年6月30日に児童買春を行った場合、5年が経過した令和7年6月30日を迎えると、時効が成立することになります。
ただし、さまざまな理由で時効の進行が停止する場合があります。
たとえば、犯人が国外にいる場合や逃げ隠れしていて起訴状の送達、略式命令の告知ができない場合、その期間中の時効が停止され、これらの状況がなくなったタイミングで、時効がカウントされることになるのです。(刑事訴訟法第255条)。 -
(3)別の犯罪にあたる場合
児童買春ではなく、別の犯罪が成立している場合には、公訴時効が5年とは限りません。たとえば強制わいせつ罪の公訴時効は7年、強制性交等罪は10年です。
自分のした行為がどの犯罪にあたるのかを、法律の知識のない一般の方が正確に把握するのは困難です。したがって過去の行為の公訴時効が成立したかどうかの判断も容易ではありません。
3、児童買春行為で問われる罪と刑罰
児童との性交等は、児童買春の罪だけに合致するのではなく、次のような犯罪が成立する可能性があります。
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(1)児童淫行罪
18歳未満の児童に淫行をさせると、児童淫行罪に問われます(児童福祉法第34条1項6号)。刑罰は「10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」です。
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(2)児童ポルノ所持罪、製造罪
児童ポルノとは、児童との性交の様子や児童の裸などを撮影した写真や動画などを指します。
自己の性的好奇心を満たす目的でパソコンなどに保管すると児童ポルノ所持罪にあたります。刑罰は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」です(児童買春・児童ポルノ禁止法第7条1項)。
また、児童の下着姿の写真を撮ったり、児童から裸の写真をメールで送ってもらったりすると児童ポルノ製造罪に問われます。刑罰は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」です(同法7条4項)。 -
(3)青少年健全育成条例違反
たとえ対価を払っていなかったとしても、18歳未満の児童と性交等をした場合、各自治体が定める青少年健全育成条例違反となります。交際関係であっても18歳未満と関係をもった、という場合は、条例違反とされるでしょう。
刑罰は自治体ごとに異なりますが、東京都を例にとると「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」です(条例第18条の6、第24条の3)。 -
(4)強制わいせつ罪、強制性交等罪
被害者が13歳未満だった場合には、性交等の合意や対価の提供の有無などは関係なく、強制わいせつ罪や強制性交等罪が成立します(刑法第176条、177条)。被害者が13歳以上で、脅迫・暴行などを用いてわいせつ行為や性交を行った場合も同様です。
刑罰は強制わいせつ罪が「6か月以上10年以下の懲役」、強制性交等罪が「5年以上20年以下の懲役」です。
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4、児童買春における量刑判断
刑期や罰金をどれぐらいにするのか、という量刑判断は、以下のようなポイントをもとに考えられることになります。
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(1)自首をしたか
刑法第42条には「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」との規定があります。
「できる」とあるので必ず刑が軽くなるわけではありませんが、自首の事実は本人に反省の意思があり、証拠隠滅のおそれが低いと判断される材料になります。起訴・不起訴処分の決定や量刑判断に影響する可能性が高いです。 -
(2)示談が成立しているか
示談が成立している場合は検察官や裁判官もこれを考慮するため、不起訴処分や刑が軽減される可能性が高まります。ただし、示談が成立すれば必ず減軽となるわけではありません。
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(3)行為の内容や回数、被害者の人数
児童買春を複数回おこなった場合や被害者がほかにもいる場合には量刑が重く傾く要素になります。商業的に児童買春をした場合や、仲間と共謀して計画的に児童買春をしたような場合にも悪質性が高いとして量刑が重くなると考えられます。
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(4)被害者の年齢
児童の年齢が低いほど悪質だと判断され量刑も重くなる可能性が高いでしょう。特に被害者が13歳未満の場合は、初犯であっても起訴され実刑判決を受けるかもしれません。
5、児童買春をしてしまったときにすべきこと
それでは、児童買春をしてしまったら、どのような行動を起こすべきなのでしょうか。
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(1)自首を検討する
犯罪行為をした場合、何か月、何年も前の事件であっても、捜査が行われ、逮捕・勾留されるケースも珍しくありません。時効の成立まで長期にわたって精神的に不安な日々を過ごすよりも、自首したほうがよいでしょう。
また、前述のとおり、自首をすることで、刑の減軽を受けられる可能性があります。 -
(2)弁護士に相談する
児童買春をしてしまったら弁護士へ相談しましょう。
まず自首する場合は弁護士に同行してもらうのが賢明です。逃亡や証拠隠滅の意思がない点などを的確に主張することで、逮捕を回避し、在宅事件として捜査を受けられる可能性が生じます。
示談交渉も弁護士へ一任するべきです。早期に示談が成立すれば不起訴となる可能性がありますが、児童買春における示談の相手方は児童の両親などの保護者になるケースが大半なので、保護者の心情からして交渉は難航すると予想されます。
また被疑者が児童や保護者に直接連絡をとると、かえってトラブルを招きかねません。弁護士が間に入れば冷静な話し合いができることが期待できます。
弁護士は、ほかにも検察官や裁判官に向けて、逮捕された場合に勾留阻止の意見書を提出する、贖罪寄付をおこなう、反省文を提出するなど、早期の釈放や不起訴処分に向けた活動をおこないます。
6、まとめ
児童買春罪の時効は5年ですが、進行が停止する場合や別の犯罪が成立する場合もあるため一律に判断できません。なにより、いつ逮捕されるのかと不安な日々を過ごすのは精神的な負担が大きいでしょう。また被害者と示談をしたいと思っても、そのハードルは非常に高く、不用意な行動は事態を悪化させかねません。
児童買春をしてしまい、早期解決を望むのであれば、弁護士へ相談するのが適切です。ベリーベスト法律事務所がサポートしますので、まずはご連絡ください。
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