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迷惑防止条例で規制対象のつきまといは、具体的にどのような行為?
待ち伏せやしつこいつきまとい行為といえば、多くの方がストーカー行為をイメージするでしょう。
ところが、これらの行為の原因や目的によっては、ストーカーを規制する法律ではなく、都道府県が定める「迷惑防止条例」の違反となるケースがあり、その判断が困難であるケースは少なくありません。
このコラムでは「つきまとい」と呼ばれる行為が、迷惑防止条例の規制対象になる場合の条件や罰則について、ストーカー規制法との違いとあわせて解説します。
1、つきまといとはどのような行為?
「つきまとい」とは、一般的な用語としては次のような意味があります。
- いつもそばに付き従う
- ついてまわって離れない
一方で、法律が刑罰の対象とする「つきまとい」は、次のいずれかに分類されます。
- 恨みやねたみの感情を満たす目的で、特定の人物やその家族に対してつきまとう
- 恋愛感情を満たす目的で、特定の人物やその家族に対してつきまとう
法律が刑罰の対象とするつきまといは、一般的な用語がもつ「そばをつきまとう」という行為だけでなく、尾行、自宅や勤務先周辺での待ち伏せ、相手の進行方向に立ちふさがるといった行為を指し、それぞれが別の法律によって罰せられます。
そして「迷惑防止条例」は、恨み・ねたみといった感情に基づくつきまといを規制するために定められています。
2、迷惑防止条例が規制するつきまとい行為とは
迷惑防止条例が規制するつきまとい行為について、さらに詳しくみていきましょう。
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(1)迷惑防止条例の概要
迷惑防止条例は、各都道府県が独自に定めているものです。
名称もそれぞれ異なり、多くは「◯◯県 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」という名称が用いられていますが、単純に「◯◯県 迷惑防止条例」とされている地域もあります。内容は最初に制定された東京都の条例をモデルにしており、禁止行為はおおむね共通していますが、懲役・罰金といった罰則の上限には若干の差異があります。 -
(2)迷惑防止条例で禁止される行為
迷惑防止条例で禁止されている行為のうち、主なものを挙げていきましょう。
- ぐれん隊による粗暴行為
- 公共の場所における卑猥な言動や盗撮行為
- 客引き・スカウト・ダフ屋行為
- 痴漢行為
代表的な禁止行為といえば盗撮・痴漢といった卑猥な行為ですが「近所で大声をあげて周辺住民に迷惑をかける」「深夜飲食街で客引きをする」といった行為にも広く適用されています。 -
(3)迷惑防止条例とストーカー規制法の違い
迷惑防止条例において禁止されているつきまとい行為は、その理由がもっぱら特定の相手に対する恨み・ねたみなど、悪意の感情を充足する目的である場合です。特定の相手に対するつきまといのほか、配偶者や親族、彼氏・彼女といった社会生活において密接な関係にある者へのつきまといも処罰の対象となります。
同じように「つきまとい」を禁止する法律としてはストーカー規制法が存在しますが、これは恋愛感情の充足を目的としています。つきまとい行為の対象者に抱く感情によって、迷惑防止条例とストーカー規制法のいずれかが適用されると考えればよいでしょう。
3、迷惑防止条例以外で該当する可能性のある罪(罰則)
つきまとい行為は、主に迷惑防止条例とストーカー規制法のいずれかによって禁止される犯罪です。ただし、ストーカー規制法が適用される場合は、状況に応じてどのような犯罪になるのかが異なります。また、つきまとい行為が迷惑防止条例・ストーカー規制法違反ではなく、さらにそのほかの犯罪に該当するケースも存在します。
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(1)ストーカー規制法の概要
ストーカー規制法では、尾行・待ち伏せのほか、自宅・職場などへの押しかけ、監視していることを告げる、面会や交際の要求、無言電話やしつこいメッセージ送信など、広い行為を「つきまとい等」と定義しています。
そして、つきまとい等にあたる行為を特定の相手に対して繰り返しおこなうことを「ストーカー行為」と呼んで処罰の対象とするほか、警察からの警告や公安委員会からの禁止命令に違反する行為も厳しく罰せられます。 -
(2)ストーカー行為罪
つきまとい等にあたる行為を特定の相手に対して繰り返しおこなった場合は「ストーカー行為」となり、ストーカー規制法第18条の規定によって1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
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(3)禁止命令等違反罪
都道府県公安委員会からの禁止命令が下されたにもかかわらず、禁止命令の原因となったつきまとい等と同じ行為を繰り返した場合は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられます(ストーカー規制法第19条)。
このほか禁止命令に違反した場合は、6か月以下の懲役または50万円以下の懲役が科せられます(同法第20条)。 -
(4)その他、脅迫罪、住居侵入罪など
つきまとい等にあたる行為をはたらく際に「交際しないと殴る」などと脅せば刑法第222条の脅迫罪に、相手の住居や敷地などに無断で侵入すれば、刑法第130条前段の住居侵入罪によって罰せられることがあります。
脅迫罪の刑罰は2年以下の懲役または30万円以下の罰金、住居侵入罪では3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。 -
(5)複数の罪が成立すると併合罪として扱われる
ストーカー規制法に違反する行為があったうえで、刑法の脅迫罪・住居侵入罪などにあたる行為もあった場合は「併合罪」の扱いを受けます。
併合罪とは「確定裁判を経ていない2個以上の罪」を指し、懲役刑の場合は刑期がもっとも長いひとつの罪の1.5倍が、罰金刑の場合は上限額の合計以下が科せられます。より重い刑罰が科せられると考えておけばよいでしょう。
4、迷惑防止条例違反で逮捕される場合
つきまとい行為が迷惑防止条例にあたる場合、警察の手によって逮捕されるおそれがあります。逮捕には、大きく分けると「現行犯逮捕」と「通常逮捕」の2とおりの方法が存在します。
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(1)現行犯逮捕
つきまとい行為の最中や、つきまとい行為を終えて間もないタイミングで身柄を確保された場合は「現行犯逮捕」となります。
現行犯逮捕は、犯人の取り間違いが起きるおそれがほとんどありません。そのため、警察官だけでなく被害者や目撃者といった一般人による執行も認められています。これを「私人の現行犯逮捕」といいます。 -
(2)通常逮捕
つきまとい行為をはたらき、その場で逮捕されなかったとしても、裁判官が発付する逮捕状によって逮捕されることがあります。これを「通常逮捕」といいます。
目撃者の証言、防犯カメラの映像などによって犯行が証明されると、裁判官は逮捕状を発付します。警察が逮捕状を請求するまでの期間は捜査の進行状況によって異なるため、事件の数日後に逮捕されることもあれば、数週間後・数か月後に逮捕されてしまうケースもあります。
5、家族が逮捕されてしまった場合の対応
もし家族が他人に対してつきまとい行為をはたらいてしまい、迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されてしまった場合は、どのように対応すればよいのでしょうか?
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(1)弁護士に相談をする
刑事事件を起こして逮捕されてしまった場合は、早急に弁護士への相談を検討しましょう。
本人が逮捕された直後の72時間は、たとえ家族であっても面会が認められません。この期間の取り調べは逮捕当時の供述として重視されるため、不用意な発言は禁物です。弁護士の接見によって取り調べに際するアドバイスを受けるべきでしょう。弁護士の適切なサポートを得られれば、前科がついてしまう事態を回避できる可能性が高まります。 -
(2)本人と面会をする
逮捕後の72時間が過ぎて家族などによる面会が認められるようになったら、直ちに本人と面会をしましょう。
本人との面会が認められるのは、検察官が裁判所に対して「勾留」を請求し、これが認められたタイミングからです。ただし、裁判所から面会を禁止する「接見禁止」の命令が付されることもあり、この場合には引き続き面会できません。なお、弁護士には接見の制限がありません。依頼を受ければ直ちに接見しサポートすることが可能です。 -
(3)被害者との示談交渉
刑罰・前科を回避するには、検察官が刑事裁判を提起する「起訴」を防ぐことが大切です。そして、起訴の回避には、被害者との示談交渉によって被害届や告訴を取り下げてもらうのがもっとも重要でしょう。
ただし、つきまとい行為の場合は、加害者本人やその家族が示談交渉をもちかけても被害者が応じてくれないケースが少なくありません。示談を拒まれたり、高額の示談金を要求されたりする場合もあるので、弁護士を代理人として交渉を進めていくのが賢明です。 -
(4)社会復帰にむけたサポート
警察に逮捕されてしまうと、身柄を拘束されている期間は仕事へ行くことも学校に通うことも許されません。家族としては、勤務先や学校の担当者に事情を伝えたうえで、無断欠勤・無断欠席にならないようにはたらきかけるほか、スムーズな社会復帰が可能になるように取り組むべきです。
6、まとめ
何らかの恨みやねたみといった感情から、嫌がらせのつもりでつきまとい行為をはたらいていると迷惑防止条例違反の容疑をかけられて逮捕される可能性があります。
逮捕されると一時的に社会生活から隔離されてしまうだけでなく、懲役刑が下されればさらに刑務所へと収監されてしまう事態にもなります。弁護士に相談して被害者との示談などの対策を講じていきましょう。
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