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覗きはどんな犯罪に問われる? 該当する行為や逮捕された後の流れ
令和2年8月、新潟県内のアパートに住む女性の部屋を覗いた容疑で、県警巡査部長の男が逮捕されました。逮捕の罪名は「軽犯罪法違反」と「住居侵入罪」です。
「覗き(のぞき)」は、ちょっとした好奇心や出来心に端を発する「いたずら」や「モラル違反」だと考えている人も少なくありません。しかし、法律の定めに照らせばれっきとした犯罪です。発覚すれば警察に逮捕され、厳しい刑罰が下される可能性があります。
ここで紹介した事例で逮捕された男に適用された罪名は「軽犯罪法違反」と「住居侵入罪」でしたが、覗きを罰する法律にはどのようなものがあるのでしょうか? このコラムでは、「覗き」行為を罰する法律、科せられる刑罰、逮捕の可能性などを弁護士が詳しく解説します。
1、そもそも覗き(のぞき)の意味とは?
「覗き」という言葉を辞書で調べると「のぞくこと」や「のぞく人」といった意味だと説明されています。
他人が隠しているもの、見られたくないものをひそかに盗み見ることを覗きといい、俗称とし「覗き魔」と呼ばれることもあります。
古い時代の話ですが、明治時代の殺人犯になぞらえて「出歯亀(でばがめ)」という俗称が流行した時代もありました。海外でも、女性の裸体を覗き見した男の伝説に由来して、覗きをする人のことを俗称として「ピーピング・トム」と呼ぶ習慣が存在しています。
法律の定めに照らすと、覗きは「のぞき見」と表現されています。
また、覗き見ることを「窃視」と呼び、一定の状況があれば犯罪となることが明確に定義されています。
犯行を繰り返すうちに内容がエスカレートしてしまう性犯罪において、覗きはまさに「入り口」にあたる犯罪だといえるかもしれません。
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2、覗きはどんな犯罪に該当する?
覗き行為は犯罪にあたりますが、わが国における刑罰法令には「覗き罪」といった名称の犯罪は存在していません。
覗きには、状況次第で次の三つの犯罪が適用されます。
- 軽犯罪法違反
- 刑法の住居侵入罪
- 都道府県の迷惑防止条例違反
いずれも覗きを罰するものですが、適用される条件が異なっており、科せられる刑罰にも差があります。一般の方には、覗きにどの犯罪が適用されるのかを正確に判断するのは難しいでしょう。
覗き行為はどのような犯罪にあたるのでしょうか。
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(1)軽犯罪法違反
「覗き」に適用される犯罪のなかでも、「覗き行為そのもの」を明確に刑罰の対象としているわかりやすいものが「軽犯罪法違反」でしょう。
軽犯罪法とは、軽微な秩序違反行為を罰する法律です。
覗きのほか、騒音・乞食・立ち小便など、刑法などではフォローできない範囲の日常的なトラブルを規制しています。
同法第1条には1号から34号までの行為が挙げられており、削除されたものを除く33の行為が処罰の対象となっています。
覗きを規制する条文は、同法第1条23号に示されています。
【軽犯罪法第1条23号】
正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
条文には明記されていませんが、この号は「窃視(せっし)の罪」と呼ばれています。窃視の罪の条文を分解しながら、成立する要件を確認してみましょう。
- 正当な理由がない 法的に正当な理由がない場合を指しています。
- 人が通常衣服をつけないでいるような場所 条文で示されているとおり、住居・浴場・更衣場・便所など、着替えや脱衣をするのが当然である場所が対象です。つまり、屋外や乗り物の中などは、ここでいう「衣服をつけないでいるような場所」には含まれません。
- ひそかに 周囲の誰にも気づかれないとまでは要さず、相手に気づかれないように隠れていれば「ひそかに」といえます。
- のぞき見る 肉眼で見るだけでなく、望遠鏡やカメラのズーム機能などを使って見る場合も含みます。
法定刑は、拘留または科料です。
拘留とは30日未満の期間で刑事施設に収容される刑罰、科料とは1万円未満の金銭を徴収される刑罰で、比較的軽度の懲役・罰金と理解すればよいでしょう。 -
(2)住居侵入罪
覗き行為を直接的に罰するものではありませんが、冒頭で挙げた事例のように刑法の「住居侵入罪」が適用されることもあります。
住居侵入罪は、刑法第130条前段に規定されている犯罪です。条文によると「正当な理由がないのに、人の住居もしくは人の看守する邸宅、建造物もしくは艦船に侵入」することで成立します。
条文を分解しながら要件を確認してみましょう。
- 正当な理由がない 法的に正当ではなく、不法の目的をもっているという意味です。「覗きをする」と意図していれば不法の目的をもっているといえるでしょう。
- 人の住居もしくは人の看守する邸宅、建造物もしくは艦船 現に人が住んで生活の用に供している住居に限らず、空き家なども含まれます。屋内に入ることだけでなく、周辺を囲った敷地内や屋根・ベランダなども対象です。
- 侵入 住居者や管理者の意思に反して立ち入ることをいいます。
また、アパート・ビル・店舗などのように出入りが自由であっても、不法の目的があれば処罰の対象になります。
立ち入り禁止を表示されている場合はもちろん、管理されている敷地内に許可を受けずに立ち入ることでも侵入とみなされます。
覗きをする目的で他人が住む住居の敷地内に侵入した、アパートやマンションなどの建物に侵入したなどのケースでは、住居侵入罪が適用されることになるでしょう。
住居侵入罪の法定刑は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。軽犯罪法違反と比較すると格段に厳しい刑罰が規定されています。 -
(3)迷惑防止条例違反
覗きは「迷惑防止条例」によって規制されることがあります。
迷惑防止条例とは、都道府県ごとに規定されている条例です。
都道府県ごとに正式な名称が異なっていますが、全国で最初に施行された東京都の条例をモデルとしており、規制される内容に大きな差はありません。
迷惑防止条例が覗きを規制の対象とするのは「盗撮」に関する定めに違反する場合です。
ここでは、全国の迷惑防止条例において覗き・盗撮を規制する部分をピックアップしていきましょう。
【東京都 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例】
第5条(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
(2)次のいずれかに掲げる場所または乗り物における人の通常衣服で隠されている下着または身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、または撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、もしくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室、その他人が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗り物、学校、事務所、タクシーその他不特定または多数の者が利用し、または出入りする場所または乗り物(イに該当するものを除く)
【大阪府 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例】
第6条(卑わいな行為の禁止)
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
2 人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所または公共の乗り物における衣服等で覆われている内側の人の身体または下着を見、または撮影すること。
3 みだりに、写真機等を使用して透かして見る方法により公共の場所、または公共の乗り物における衣服等で覆われている人の身体または下着の映像を見、または撮影すること。
4 前三号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所または公共の乗り物において、人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること。
【愛知県 迷惑行為防止条例】
第2条の2(卑わいな行為の禁止)
何人も、公共の場所または公共の乗り物において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
2 衣服等で覆われている人の身体または下着をのぞき見し、または撮影すること。
3 前号に掲げる行為をする目的で、写真機、ビデオカメラその他の機器を設置し、または衣服等で覆われている人の身体もしくは下着に向けること。
【福岡県 迷惑行為防止条例】
第6条(卑わいな行為等の禁止)
何人も、正当な理由がないのに、第一項に規定する方法で次に掲げる行為をしてはならない。
1 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人の姿態をのぞき見し、または写真機等を用いて撮影すること。
2 前号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、または他人の身体に向けること。
【北海道 迷惑行為防止条例】
第2条の2(卑わいな行為の禁止)
何人も、正当な理由がないのに、次に掲げる行為をしてはならない。
(1)公共の場所または公共の乗り物にいる者に対し、著しく羞恥させ、または不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をすること。
ア 衣服等の上から、または直接身体に触れること。
イ 衣服等で覆われている身体もしくは下着をのぞき見し、または映像面に衣服等を透かして身体もしくは下着の映像を表示する機能を有する機器を使用して当該映像を見ること。
(2)公共の場所もしくは公共の乗り物または集会場等にいる者に対し、著しく羞恥させ、または不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をすること。
ア 衣服等で覆われている身体または下着を撮影すること
イ アに掲げる行為をするため、写真機、ビデオカメラその他の撮影する機能を有する機器を向けること。
(3)住居、浴場、便所、更衣室その他の人が衣服の全部または一部を着けない状態でいるような場所における当該状態の他人の姿態を撮影し、またはこれを撮影するため写真機等を住居等における当該状態の他人に向けること。
(4)公共の場所もしくは公共の乗り物もしくは集会場等にいる者の衣服等で覆われている身体もしくは下着または住居等における前号に規定する状態の他人の姿態を撮影するため、写真機等を設置すること。
ここで挙げたのは東京都をはじめとした一部の地域の迷惑防止条例ですが、一様に「衣服などを着けないでいるような場所」における「のぞき見」または「撮影」を禁じています。
従来は規制を受ける場所が「公共の場所」に限られていましたが、近年では公共の乗り物・学校・事務所・タクシーなどのように、不特定または多数の人が利用する場所も規制対象とするよう改正した地域が増えました。
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3、こんな場合は覗きになるの? 判断が難しい状況
覗きを疑われてしまうと、「些細な動作の変化すら覗きにあたるのか」という疑問を感じることもあるでしょう。
ここでは、「覗きが成立するのか判断が難しいケース」について解説します。
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(1)覗きに該当しないケース
相手が「見られること」を望まない状況を目にしたとしても、法律に照らせば覗きには該当しないケースがあります。
たとえば、公園のベンチなどでカップルがキスや性行為に至っている状況を見た場合は、たとえ相手が「見られたくない」と感じていても覗きにはあたりません。
キス程度であれば特に問題にはなりませんが、公共の場所において性行為などに至っている状況があれば、カップル側は刑法第174条の「公然わいせつ罪」にあたるでしょう。
また、ネットカフェの個室から性行為に至っているかのような声が漏れていたので注意しようと覗いたという状況でも、やはり覗きには該当しないでしょう。
ネットカフェの個室は、軽犯罪法や迷惑防止条例が示す「通常、人が衣服を着けないでいるような場所」にはあたりません。
ただし、覗き目的でネットカフェを利用した場合は、刑法第130条前段に定められている「建造物侵入罪」にあたる可能性があるので注意が必要です。 -
(2)覗きに該当するケース
不測の状況であっても、覗きに該当してしまうおそれがあるケースも存在します。
たとえば、通りに面した家のなかでカーテンを開けて着替えをしている状況を見かけた場合、その姿を覗き見していると軽犯罪法違反が成立する可能性があります。
軽犯罪法では「住居」も人が衣服を着けないでいるような場所として掲げているため、じっと立ち止まって着替えを覗き見していると犯罪になってしまうでしょう。
また、着替えの様子をもっと近くで覗こうと敷地内に入れば、住居侵入罪が成立してしまうおそれもあります。
ただし、覗きの対象が「わざと通行人に見せつけよう」とカーテンを開け放って着替えをしていたのであれば、反対に公然わいせつ罪が成立する可能性もあります。
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4、盗撮行為をした場合はどのような犯罪に該当する?
覗きと並行しておこなわれる犯罪行為として「盗撮」が挙げられます。
盗撮行為が罪に問われる状況や罪名を見ていきましょう。
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(1)覗きと同様で罪に問われる
盗撮を規制する法律は、各都道府県が定める「迷惑防止条例」です。
迷惑防止条例では、人が通常は衣服を着けないでいるような場所だけでなく、公共の場所や不特定多数の人が利用する場所において「身体または下着などを撮影する」行為が禁じられています。
迷惑防止条例の罰則は都道府県によって異なりますが、東京都の場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
ほかの地域でもおおむね同様の罰則が規定されており、さらに「常習」と判断された場合は2年以下の懲役または100万円以下の罰金に加重されます。
盗撮行為に関する規制は全国的に強化されているので、厳しい刑罰を受けるのは必至でしょう。
また、迷惑防止条例違反に該当しない場合でも、覗きと同様に次の犯罪に該当する可能性があります。
- 軽犯罪法違反 盗撮をしようと対象を覗き見している状況で相手に見つかってしまった、目撃者に身柄を確保されて盗撮には至らなかったというケースでは、盗撮に至っていなくても軽犯罪法違反に該当する可能性があります。
- 住居侵入罪(建造物侵入罪) 盗撮の目的で他人が住む家に立ち入った場合は、刑法第130条前段の住居侵入罪に問われます。同様に、盗撮目的で他人が管理するアパート・マンション・ビル・店舗などに立ち入った場合は同条の建造物侵入罪が成立するでしょう。
迷惑防止条例には「盗撮未遂」の規定はないので、撮影や機器の設置に至っていない段階では適用されませんが、盗撮の事前行為として覗きが成立すると考えられるわけです。
たとえ盗撮が未遂に終わっても、侵入があれば住居侵入・建造物侵入は既遂となり罰せられます。 -
(2)児童ポルノ禁止法に抵触するケース
盗撮の被写体が18歳未満で、衣服の全部または一部を着けない姿態であり、性欲を興奮・刺激するものであれば、写真や画像データは「児童ポルノ」にあたります。
児童ポルノについては「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(通称:児童ポルノ禁止法)」によって厳しい罰則が規定されているので注意が必要です。
- 児童ポルノを所持していた場合 児童ポルノ禁止法第7条1項の違反として、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。営利目的などではなく、個人的な趣味として所持することも処罰の対象です。
- 児童ポルノを製造した場合 盗撮によって児童ポルノを製造した場合は、児童ポルノ禁止法第7条5項の違反となり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられます。
盗撮行為そのものを罰するわけではありませんが、警察官による所持品検査や取り調べ、自宅などの捜索によって児童ポルノの所持・製造が発覚すれば、厳しい刑罰が科せられるでしょう。
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5、覗きで逮捕される状況とは
覗き行為が発覚すると、警察に逮捕されるおそれがあります。
覗きで逮捕される状況とはどのような場面なのかを確認しておきましょう。
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(1)現行犯逮捕が多い
覗き行為が発覚するケースでは、被害者・目撃者などの通報によって駆けつけた警察官に現行犯逮捕されてしまう可能性が高いでしょう。
現行犯逮捕は、現に罪をおこない、または罪をおこない終わった者を対象に、逮捕状なしで身柄を拘束できる手続きです(刑事訴訟法第212条、同法第213条)。
犯行を確認されており、犯人を取り間違うおそれがないため、警察官だけでなく被害者や目撃者など、一般の私人にも現行犯に限って逮捕が認められています。これを「私人逮捕」といいます。 -
(2)後日逮捕を受けるおそれもある
覗きは現行犯逮捕を受けるケースが多数ですが、その場から逃げおおせることができれば逮捕されないというわけではありません。
被害者が盗撮犯の人相をはっきり見ていた、逃走する際に通行人が車両のナンバーを見て記憶していた、現場に指紋・足跡・DNAなどの鑑識資料を残していた、といった状況があれば、捜査によって個人が特定され、後日に通常逮捕される可能性があります。
通常逮捕とは、裁判官が発付した逮捕状にもとづいておこなわれる逮捕です(刑事訴訟法第199条)。
突然、逮捕状をもった警察官が自宅などを訪ねてきて逮捕されるので、いつ、どのようなタイミングで逮捕されるのか見当もつきません。 -
(3)冤罪(えんざい)の危険も高い
覗きで逮捕されるケースでは、いわゆる「冤罪(えんざい)」の危険も高いという特徴があります。
冤罪とは、本来は無実の罪で刑罰を受けることを指します。
近年では、「痴漢冤罪」などの用語も浸透しており、広く「無実なのに疑いをかけられること」という意味でも使われています。
覗きが発覚するケースでは、被害者や目撃者などが覗きの犯人と誤認して取り押さえてしまうケースや、覗きをしていないのにその場に居ただけで疑いをかけられてしまうケースも少なからず存在します。
「やっていない」「私ではない」と賢明に説明しても聞き入れられない事態も想定されるので、無実の罪で疑いをかけられてしまった場合は、直ちに弁護士に相談して解決までのサポートを依頼するべきでしょう。
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6、覗きで逮捕された後の流れ
「覗き」の疑いで逮捕されてしまった場合、どのような流れで刑事手続きを受けることになるのでしょうか。
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(1)警察による逮捕
警察官に逮捕されると、その時点で身柄を拘束され、自由な行動が大幅に制限されます。自宅へ帰ることも、会社に行くことも許されず、電話やメールなども利用できません。
警察署に連行されると、「弁解録取(弁解の機会が与えられ、それを録取する手続き)」などの手続きを経て留置場に留置されます。留置後は、警察官によって犯行の事実や動機などに関する取り調べがおこなわれます。
警察段階における身柄拘束の限界は、逮捕から48時間です。
警察は、48時間以内に逮捕した被疑者の身柄を検察庁に引き継ぐか、釈放しなくてはなりません。 -
(2)検察官への送致
警察から検察官に被疑者の身柄が引き継がれる手続きを「検察官送致」といいます。ニュースなどでは省略して「送検」とも呼んでいるので、聞いたことがある方も多いでしょう。
送致を受けた検察官は、自らも被疑者を取調べたうえで、送致から24時間以内に起訴・不起訴を判断しなくてはなりません。
ただし、逮捕後のわずかな時間でおこなった捜査や取り調べの情報だけでは、起訴・不起訴を判断するための材料が足りないことが多く、この場合、検察官は、裁判所に対して、「勾留請求」と呼ばれる身柄拘束の延長を求める手続きを取ります。 -
(3)勾留による身柄拘束
検察官からの請求を裁判官が認めた場合、勾留請求の日から原則10日間、延長手続きによっては最長20日間の「勾留」による身体拘束を受けます。
勾留が決定すると、被疑者の身柄は警察に戻されて、検察官の指揮を受けながら警察による捜査・取り調べが続きます。
逮捕された被疑者が家族などとの面会を許されるのは、勾留が決定した後です。 -
(4)起訴・不起訴の判断
勾留期間中におこなった捜査や取り調べの結果を受け、検察官は、勾留が期限を迎える日までに再び起訴・不起訴を判断します。20日を超える延長はないため、この段階で刑事裁判に進むのか、それとも刑事裁判が開かれずに釈放されるのかが決定します。
逮捕から数えて合計23日間にわたる身柄拘束を受けるため、家族・会社・学校など、社会生活への影響は大きなものになるでしょう。
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7、覗きで逮捕された場合の周囲や社会への影響
覗きの疑いをかけられて逮捕された場合、どのような影響を受けるのでしょうか。逮捕後に想定される周囲や社会への影響について見ていきましょう。
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(1)実名報道を受けるおそれがある
覗きの疑いで逮捕されてしまうと、警察からマスコミ各社に対して逮捕の情報が公開されるので、実名報道を受けるおそれがあります。
公開された情報を報道する、しないの判断はマスコミ各社に委ねられます。
その判断次第では、ニュース・新聞などで実名報道が流され、逮捕の事実が広く知られる可能性があります。
これらに加え、地元新聞社などが公開しているサイトでも逮捕情報が掲載されてしまうかもしれません。インターネット上に情報が公開されれば、サイト運営者側が削除しない限り、半永久的に実名報道が公開されてしまう危険もあります。 -
(2)社会生活から隔離されてしまう
警察に逮捕されてしまうと、逮捕から起訴・釈放までに最長で23日間にわたる身柄拘束を受け、社会生活から隔離されます。
会社や学校に通うことも許されず、長期間にわたる欠勤・欠席を余儀なくされるので、急用や急病といった言い訳も通用しないのは言うまでもありません。規則次第では、解雇や退学といった不利益な処分を受けるおそれもあります。
また、逮捕後に釈放されたとしても、身柄の解放には身元引受人が必要です。
家族や会社の上司などに依頼するケースが多いため、「誰にも知られたくない」と思っていても、身近な人には逮捕の事実が露見することになります。
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8、覗きで逮捕されたら前科はついてしまうの?
覗きで逮捕されてしまうと、その後に「前科がついてしまうのか」と不安を感じてしまう方も多いはずです。逮捕と前科の関係について確認しておきましょう。
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(1)「前科」とは
「前科」とは、刑事裁判における有罪判決によって刑罰を受けた経歴を指す用語です。
警察に捕まった、逮捕されたといった段階では、刑罰を受けたわけではないので前科はつきません。逮捕はあくまでも被疑者の逃亡・証拠隠滅を防ぐための身柄措置であり、懲罰を目的としたものではないのです。 -
(2)有罪判決を受けると前科がつく
覗きの疑いで逮捕・起訴されて刑事裁判に発展し、有罪判決を受けると量刑が言い渡されます。量刑とは、各犯罪に規定されている法定刑の範囲内で、裁判官がさまざまな事情を考慮したうえで実際に下す刑罰のことです。
有罪判決を受けて量刑が言い渡されると、その時点で「前科がついた」という状態になります。 -
(3)不起訴になれば前科はつかない
刑事裁判で有罪判決を受けることによって前科がつきます。
つまり、「刑事裁判で無罪判決が下された」、あるいは、「刑事裁判に発展しなかった場合」は、たとえ逮捕されたとしても前科はつかないのです。
わが国の司法制度では、検察官が起訴した事件の有罪率は99%を超えています。
これは、起訴・不起訴を判断する段階で検察官が事件を吟味したうえで、有罪を勝ち取ることができると確信した事件を厳選して起訴しているからです。
起訴された事件について無罪を獲得できる可能性は「限りなく低い」と言わざるを得ません。
前科がついてしまう事態を回避するには、「無罪を主張するよりも不起訴処分の獲得を目指す」ほうが現実的でしょう。
覗き事件では、特に被害者との示談が成立しているかが重視されるので、疑いをかけられてしまったら直ちに示談交渉を進めていくのが賢明です。
決して軽視するわけではありませんが、覗きはわいせつ犯罪のなかでも被害の程度が軽い事件です。被害者との示談が成立していれば、不起訴処分の獲得は十分に期待できます。
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9、覗きで逮捕されてしまった場合に弁護士にできること
覗きの疑いで逮捕されてしまったら、直ちに弁護士に相談してサポートを受けましょう。
弁護士に依頼すれば、長期にわたる身柄拘束や厳しい刑罰を受ける事態の回避が期待できます。
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(1)被害者との示談交渉を一任できる
覗き事件を穏便に解決するためにもっとも効果的なのは、被害者との示談成立です。
ただし、覗きはわいせつ犯罪の一種であり、被害者は加害者に対して強い怒りや嫌悪感を抱いているおそれがあります。
示談交渉を進めようとしても相手にしてもらえないばかりか、連絡先を入手することさえ困難といったケースも少なくありません。
弁護士に示談交渉を一任すれば、捜査機関へのはたらきかけによって被害者とのコンタクトを実現し、公平中立な第三者として被害者の警戒心を解きほぐしながら示談交渉を進めることが可能です。
また、覗き事件の示談では、被害を受けたという立場を利用して、不当に高額な示談金を要求してくる被害者もまれに存在します。
示談交渉を弁護士に任せることで、相場に近い金額で決着できる可能性が高まるでしょう。 -
(2)早期釈放と不起訴処分の獲得を目指せる
覗きの疑いで逮捕されてしまっても、弁護士が「身柄を拘束しなくても任意の取り調べで十分に対応できる」と主張することで、早期に釈放される可能性があります。
また、覗きを裏付ける証拠がないこと、被害者との示談が成立していることなどを主張すれば、検察官が不起訴処分を下す可能性も大いに高くなります。
いずれも、単に「身柄拘束の必要はない」「覗きの証拠がない」と口頭で主張するだけでは、検察官の納得は得られません。
法律の定めに従い、具体的な証拠を提示したうえで主張を展開する必要があるので、弁護士のサポートが重要になります。 -
(3)執行猶予の獲得が期待できる
検察官が起訴に踏み切った場合は、刑事裁判において審理されます。覗きが事実であれば、有罪判決を避けることはできないでしょう。
起訴・有罪判決が回避できない状況でも、弁護士に依頼すれば執行猶予付きの判決や罰金刑など、刑罰の軽減が期待できる可能性があります。
たとえば、悪質性が低い、常習性はない、更生が期待できる、家族などによる監督体制が確立しているなどの主張を展開して、不利益が少ない判決の獲得を目指します。
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10、まとめ
覗きは、軽犯罪法違反・刑法の住居侵入罪・都道府県の迷惑防止条例違反にあたる犯罪です。
発覚すれば逮捕される可能性が高く、検察官が起訴に踏み切れば刑罰の回避は容易ではありません。前科がついてしまえば社会生活において不利益が生じるほか、悪質な犯行であれば実刑判決を受けてしまうおそれも否定できません。
覗きの容疑をかけられてしまったら、直ちにベリーベスト法律事務所へご相談ください。刑事事件の経験を豊富にもつ弁護士が、早期釈放を実現し、不起訴処分や執行猶予の獲得に向けて全力でサポートします。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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