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青少年健全育成条例とは? 違反にあたる行為と逮捕前にできること
令和3年7月、有名な歌舞伎俳優が17歳の男子学生にわいせつな行為をはたらいた容疑で逮捕されました。罪名は「青少年健全育成条例違反」です。
未成年者に対するわいせつな行為は、さまざまな法律・条例によって規制されています。淫行条例や強制わいせつ罪といった法令に違反するという情報を聞いたことがある方も少なくないでしょう。
本コラムでは「青少年健全育成条例」に違反する行為や罰則などを中心に、未成年者に対するわいせつ行為を罰する法令や逮捕後の流れなどについて解説します。
1、青少年健全育成条例とは?
「青少年健全育成条例」とは、青少年を取り巻く環境の整備を助長し、青少年の福祉を阻害するおそれのある行為を防止することで、青少年の健全な育成を図ることを目的として定められた条例です。条例なので、各都道府県や市町村の単位で独自に定めるものですが、平成28年には全国の各都道府県において制定されています。
名称は都道府県によって異なり、一般的には「◯◯県青少年健全育成条例」といった名称が使用されていますが「青少年の健全な育成に関する条例」「青少年保護条例」「青少年愛護条例」「青少年の健全育成と環境浄化に関する条例」などの名称を使用している自治体も存在します。
また、青少年との淫行を規制することから、俗称として「淫行条例」と呼ばれたり、「子どもを性犯罪から守るための条例」といった名称を使ったりしている自治体もあります。
名称だけでなく、規制内容も都道府県によって多少の違いがありますが、いずれの自治体でもわいせつな行為に対しては厳しい刑罰を規定しています。違反すれば警察の捜査対象となり、逮捕されたり、刑罰を受けて前科がついてしまったりするという点は共通です。
2、「青少年」の定義と、違反の成否要件
青少年健全育成条例が保護する「青少年」にあたるのはどのような年齢なのでしょうか?
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(1)青少年にあたる年齢
青少年健全育成条例の規制内容には都道府県による差があるため、どの年齢を「青少年」と呼ぶのかについての定義にも若干の差があります。
上限はすべての都道府県が「18歳未満の者」としていますが、下限は「6歳以上」または「小学校就学の始期」、あるいは下限を設けないなど、統一されていません。
いずれにしても、青少年健全育成条例が保護する青少年とは、未成年のうち「18歳未満の者」を指すと考えておけばよいでしょう。 -
(2)青少年健全育成条例違反の成否要件
青少年健全育成条例に違反する行為としてもっとも典型的なのが「淫行」です。俗称として「淫行条例」と呼ばれることがあるくらいなので、主に青少年との淫行を規制する条例だと考えてもおおむね間違いではありません。
淫行とは「みだらな行為」を指しますが、とくに青少年健全育成条例においては、青少年を誘惑・威迫・欺罔・困惑させるなど、心身の未成熟に乗じた不当な手段によって、あるいは自己の性的欲望を満足させる対象として性交・性交類似行為をすること、と解釈されています。
ただし、18歳未満の者と性交・性交類似行為をすればすべて淫行となるわけではありません。次のような要素によって、その成否が判断されます。● 相手が18歳未満の者と認識しているか?
相手が18歳未満であると認識していないと淫行とはいえません。
もっとも、条例が過失犯も処罰するとの内容になっている場合には、たとえ相手が18歳未満であるとの認識が全くなかったとしても、そのことについて過失がある限りは処罰を免れることはできません。
● 結婚を前提とした真摯な交際であるか?
たとえ18歳未満の者が相手でも、結婚を前提に真摯な交際をしているのであれば淫行にあたりません。
● 青少年同士の行為であるか?
行為者も青少年であるときは処罰の対象になりません。
なお、援助交際・サポートなどと称して青少年側から金銭の支払いを求められてみだらな行為に及んだ場合でも、淫行としての罪を免れることはできません。
3、青少年健全育成条例違反にあたる行為とその罰則
青少年健全育成条例は、自治体によって多少の差はあるものの、おおむね次の行為を規制しています。
- 青少年を深夜に連れ出し、同伴する行為
- 青少年を深夜にカラオケボックスなどの遊興施設に立ち入らせる行為
- 青少年に有害図書類を販売する行為
- 青少年に有害がん具類を販売する行為
- 青少年が着用した下着を買い取る行為
- 青少年との淫行
東京都の条例では、次のように罰則を設けています。
- 保護者の同意なしに、または正当な理由なく、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、とどめる行為……16歳未満の青少年が対象となった場合、30万円以下の罰金(第15条の4・第26条)
- カラオケボックス・まんが喫茶・インターネットカフェ・映画館・ボーリング場などに、深夜、青少年を立ち入らせる行為……施設経営者に30万円以下の罰金(第16条・第26条)
- 青少年から着用済みの下着を買い取る行為……業者や場所の提供者は50万円以下の罰金、そのほかの者は30万円以下の罰金(第15条の2・第24条の4・第26条)
- 青少年とみだらな性交または性交類似行為をする行為……2年以下の懲役または100万円以下の罰金(第18条の6・第24条の3)
いずれの場合でも、時効は3年です。たとえば、2年前に16歳の女子高生と淫行した事実がある場合はまだ時効が完成していないうえに、すでに相手が18歳になっていても淫行当時の年齢によって犯罪の成否が決まるため「当時16歳の青少年」を相手とした青少年健全育成条例違反として処罰を受ける危険があります。
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4、その他の未成年を保護する関連法律
青少年を含む未成年者とのわいせつな行為は、青少年健全育成条例のほかにも次に挙げるさまざまな法令によって規制されています。
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(1)児童ポルノ禁止法違反
18歳に満たない児童について「買春」をした者は、児童ポルノ禁止法第4条の違反となり、5年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられます。
児童ポルノ禁止法は略称であり、正しくは「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」という名称です。この法律でいう「買春」とは、児童に対して対象を供与または供与を約束したうえで、性交または性交類似行為のほか、性器などを触る、児童に自己の性器を触らせるなどの行為を指します。 -
(2)出会い系サイト規制法違反
いわゆる「出会い系サイト」を使って児童を性交相手や金銭目的の異性交際相手となるように誘引する行為があった場合は、出会い系サイト規制法第6条の違反として、100万円以下の罰金が科せられます。
出会い系サイト規制法とは、正式には「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」といいます。出会い系サイトやマッチングアプリといったインターネット異性紹介事業を利用した児童買春などの犯罪から児童を保護する目的で制定された法律です。
出会い系サイト等を利用して、児童(18歳未満の者)を性交等の相手方となるように誘引した場合や、対償を供与することを示して、児童を異性交際の相手方となるように誘引した場合などには、処罰の対象となります。 -
(3)刑法の強制わいせつ罪
13歳以上の者に対して、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、刑法第176条の「強制わいせつ罪」となり、6か月以上10年以下の懲役が科せられます。
相手に拒絶されているのに抱きつく、無理やりキスをする、衣服のなかに手を差し入れて胸や陰部を触るといった行為があれば、強制わいせつ罪が成立します。
なお、相手が13歳未満であった場合は、たとえ相手の合意があったとしても処罰されます。 -
(4)刑法の強制性交等罪
13歳以上の者に対して、暴行または脅迫を用いて性交・肛門性交・口腔(こうくう)性交をした者は、刑法第177条の「強制性交等罪」となります。平成29年の法改正までは「強姦罪」と呼ばれていた犯罪で、5年以上の有期懲役という非常に重い刑罰が科せられます。
強制わいせつ罪と同様に、13歳未満が相手となった場合はたとえ相手の合意があったとしても本罪が成立します。最低でも5年の懲役となるため、原則として必ず実刑となる重罪です。 -
(5)「未成年保護法」という法律は存在しない
ここで挙げたさまざまな法令のほかにも、青少年や児童を相手としたわいせつ行為・買春・淫行は「未成年保護法」による規制を受けるといった情報もあります。
実は、未成年保護法という法律は存在しません。ただし、青少年・児童を含む未成年者は、青少年健全育成条例をはじめとしてさまざまな法律・条例によって保護されています。刑法においても、13歳未満の者については「同意があっても処罰する」という姿勢であり、精神的に未成熟な年齢にある未成年者は特に強く保護されています。
未成年保護法という特定の法律は存在しないものの、未成年者は複数の法令によって多角的に保護されているのです。
5、青少年健全育成条例違反で逮捕されたらどうなる?
青少年健全育成条例違反の容疑をかけられて逮捕されてしまうと、その後はどうなってしまうのでしょうか?
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(1)逮捕後の刑事手続きの流れ
刑事事件の被疑者として警察に逮捕されると、警察の段階で48時間以内、送致されて検察官の段階で24時間以内、合計72時間以内の身柄拘束を受けます。さらに、検察官の請求によって勾留が決定すれば、最長20日間にわたる身柄拘束を受けます。つまり、逮捕・勾留による身柄拘束の期間は合計で最長23日間であり、この期間は自宅に帰ることも、会社や学校へと通うことも許されません。
加えて、勾留が満期を迎えるまでに検察官が起訴すれば刑事裁判に発展します。証拠をもとに裁判官が有罪・無罪を審理し、最終回となる結審の日には判決が言い渡されます。
わが国の司法制度では、検察官が起訴に踏み切った事件のほとんどが有罪となっているため、起訴されれば刑罰の回避は困難です。青少年健全育成条例によって規制されている行為の多くは罰金刑のみが規定されていますが、たとえ罰金であっても前科になってしまいます。 -
(2)実名報道による不利益を受けるおそれが高い
警察に逮捕されてしまった場合は、新聞やテレビのニュースで実名報道を受けてしまう危険があります。たとえ無実であっても、警察に逮捕されたという事実が実名で報じられてしまえば、社会的な批判を受ける事態は避けられません。身柄拘束を受けて欠勤している状況と相まって会社から解雇されてしまう、学校から退学処分を言い渡されるといった不利益を受けるおそれも高いでしょう。
実名報道をするかの判断は報道各社に委ねられていますが、被疑者自身の社会的地位が高い場合や、犯行の内容がとくに悪質である場合は、積極的に実名で報じられる危険があります。
6、逮捕前、前科をつけないためにできること
自身の行為が青少年健全育成条例に違反すると自覚しているなら、まだ逮捕されていない今だからこそ、逮捕や刑罰・前科を避けるための対策を講じる必要があります。
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(1)被害者との示談成立による解決を目指す
青少年健全育成条違反のうち、とくに淫行にかかわる違反であれば、被害者となった青少年が存在します。警察の捜査が進展して逮捕されてしまうまでに、保護者を含めた青少年との示談交渉を進めて和解すれば、示談成立によって刑事事件化が回避できる可能性が高まります。
警察が捜査を進めるためには、被害者である青少年の協力が不可欠です。しかし、すでに示談が成立している場合は、警察も青少年側の協力は得られないと判断し、捜査を終結させる可能性があります。 -
(2)捜査が始まる前に自首する
出会い系サイトなどを利用した、街頭で声をかけてナンパしたといったケースでは、被害者となる青少年を特定することも、連絡をとって示談交渉を進めるのも困難です。しかし、このような状況でも放置すれば青少年側が警察に相談することで事件が発覚する危険があります。
警察が事件を認知する前にみずから「自首」すれば、捜査に協力する姿勢があり、逃亡や証拠隠滅をはたらくおそれもないと判断されるため、逮捕を回避できる可能性が高まります。また、みずからの罪を認めて素直に処罰を求めることで、真摯に反省している状況がうかがえることから、検察官が不起訴とする、裁判官が刑罰を軽くするといった有利な処分も期待できるでしょう。 -
(3)早期の弁護士への相談が重要
被害者となる青少年との示談交渉は、保護者・親権者も交えて交渉を進めることになります。青少年本人に強い被害意識がなくとも、保護者・親権者が強い憤りを覚えているケースが少なくないため、加害者本人による交渉では相手にされないおそれも高いでしょう。
被害者である青少年側との示談交渉は、公平中立な第三者である弁護士に一任するのが最善です。保護者・親権者の警戒心をやわらげながら、心情に配慮した交渉を進めることで、穏便かつ円滑な解決が期待できます。
また、早期に弁護士のサポートを得ていれば、不起訴などの有利な処分が得られる可能性も高まるでしょう。自首が成立するのかの判断や、自首の同行といったサポートも可能です。
7、まとめ
18歳未満の者とのわいせつな行為は、青少年健全育成条例のほか、さまざまな法令によって規制されます。厳しい刑罰が規定されているだけでなく、逮捕・勾留による身柄拘束や実名報道によって解雇・退学などの不利益な処分を受けてしまうおそれがあるため、早期の解決が大切です。
青少年健全育成条例違反にあたる行為があった、すでに容疑が発覚して警察の捜査を受けているといった状況なら、弁護士のサポートは欠かせません。逮捕や厳しい処分の回避を目指すなら、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にお任せください。
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