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淫行とは? 成立要件や罰則、逮捕を回避する方法を弁護士が解説
昨今はSNSなどを通じて本名や年齢が分からない相手と出会い、犯罪に発展するケースが少なくありませんが、「淫行」もそのひとつでしょう。
出会ったばかりの相手と性的関係を持ち、その相手が18歳未満の児童だった場合は淫行として罰せられるおそれがあります。また本人は真剣交際のつもりでも、18歳未満の児童との性的行為は原則として犯罪が成立することにも留意が必要です。
本コラムでは淫行を取り上げ、犯罪が成立する要件や罰則、逮捕・勾留される可能性について解説します。
1、淫行とは
「淫行」の意味や「児童買春」や「わいせつな行為」との違いについて解説します。
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(1)「淫行」の意味
淫行とは、18歳未満の者を相手とする不健全な「性交」または「性交類似行為」をいいます。性交とは女性器に男性器を挿入する行為、性交類似行為とは口腔性交や肛門性交、その他性的行為を指します。
淫行は各都道府県が定める青少年健全育成条例で禁止されている行為です。相手との合意の有無や手段は問わないので、無理矢理ではなく、相手が性交などに同意している場合でも条例違反として処罰の対象になります。
相手の性別も問いません。同性同士の行為や、女性が18歳未満の男性を相手にする行為も淫行として処罰されます。 -
(2)「児童買春」との違い
18歳未満の児童に対する買春行為を「児童買春」といいます。
児童買春とは、
① 児童本人や児童買春のあっせんをする者、児童の保護者に対し、
② 対償を供与し、またはその供与の約束をして、
③ 性交等をする
ことです(児童買春、児童ポルノ禁止法第2条)。
ここでいう性交等とは、性交もしくは性交類似行為をし、または自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門または乳首)を触り、もしくは児童に自己の性器等を触らせることをいいます。
淫行との大きな違いは「対償の供与またはその約束」が要件となっているか否かです。児童買春は児童などへの対価と引き換えに性交・性交類似行為をすることを指すのに対し、淫行は児童と性交・性交類似行為をすれば成立します。金銭などを与える代わりに性的行為を要求するという点で淫行よりも悪質だと捉えられるため、児童買春は淫行よりも罰則が重く定められています。 -
(3)「わいせつな行為」との違い
わいせつな行為の定義が法律で明文化されているわけではありません。適用される犯罪によって若干解釈が異なりますし、各犯罪で重なる部分もあります。
ただし「わいせつ」とは何かについては、最高裁判所が「いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」と示しています(最高裁判所 昭和26年5月10日)。かみ砕いていうと、一般人が性的に恥ずかしいと感じるようなものという意味です。
わいせつな行為の具体例としては、無理矢理キスをする、下着の中に手を差し入れる、胸や陰部を触るなどの行為があります。淫行とわいせつな行為の違いでいえば、わいせつは、淫行のうち、「性交」等以外とほぼ同義だと考えればよいでしょう。
2、淫行の成立要件・処罰規定
淫行によって成立するおそれがもっとも大きいのが、青少年健全育成条例違反(青少年保護育成条例違反)です。条例違反が成立する要件や罰則を見ていきましょう。
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(1)淫行条例とは
青少年健全育成条例とは、青少年の健全育成を目的に各都道府県に定められた条例の総称です。淫行の処罰規定が設けられていることを取り上げて「淫行条例」と呼ぶ場合もあります。条例名や規制行為、罰則などについては都道府県ごとに多少の違いはありますが、目的や傾向は共通しています。
東京都の条例は「東京都青少年の健全な育成に関する条例」といいます。淫行については「何人も、青少年とみだらな性交または性交類似行為を行ってはならない」と定められており、違反した場合の罰則は「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」です(第18条の6、第24条の3)。 -
(2)条例違反が成立する要件
青少年健全育成条例違反が成立する要件は以下のとおりです。
① 被害者が青少年であること
青少年とは18歳未満の者をいいます。一部、婚姻した18歳未満の者は青少年から除く自治体がありますが、青少年の定義はほとんどの自治体で共通しています。18歳以上を相手とした性交・性交類似行為は淫行とは呼びません。
② 被害者が青少年であることを認識していたこと
行為者は、相手が青少年であることを知っていながら性交・性交類似行為におよんだ場合に処罰されます。したがって、相手が18歳未満だと知らなかった場合は処罰されません。
ただし、「青少年の年齢を知らないことを理由として処罰を免れることはできないが、過失のないときは、その限りではない」という規定が存在する自治体があります。この場合、18歳未満だと知らなかったことについてまったく過失がないことを証明できれば処罰されませんが、その証明は多くのケースで困難です。
たとえば相手に年齢を確認したところ精巧に偽造された健康保険証を見せられたため18歳以上だと信じたなどのケースが該当しますが、明らかに粗雑な作りの保険証だったとか、ただ年齢を聞いただけでうのみにしたといったケースでは過失があったと判断されるでしょう。過失があるかどうかは、児童の見た目や言動、持ち物、年齢確認の有無や方法など客観的事情を総合的に判断されます。
なお、東京都の条例には上記の規定がないため、18歳未満だと知らないことについて過失があっても処罰されません。もっとも、18歳未満だと認識していただろう(故意だろう)と判断されて処罰されるおそれはあります。
③ 淫行をすること
淫行の定義についてさらに詳しく見ると、最高裁判所は以下のように示しています(昭和60年10月23日判決)。
- 青少年を誘惑し、威迫し、欺罔(ぎもう)し、または困惑させるなど、その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交または性交類似行為
- 青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交または性交類似行為
青少年との性交・性交類似行為といっても、真剣交際にもとづくものも含めてすべて禁止するのは法の趣旨に合致しません。そこで最高裁は青少年との性交・性交類似行為のうち、「心身の未成熟に乗じた不当な手段によるもの」「自分の性欲のはけ口としか認められないもの」という条件を付けて、解釈を狭めています。
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(3)淫行条例で処罰されないケース
真剣交際の中で行った性交・性交類似行為は淫行の定義に当てはまらないため、淫行の処罰規定が適用されません。ただし、真剣交際であったことを客観的に示さなければなりません。具体的には以下のような事情がなければ真剣交際とは認められないでしょう。
- 結婚を前提に交際しており、お互いの親にも紹介を済ませてある
- 相手の児童と年齢が近い
- 性交をするだけでなく普通のデートも重ねている
また青少年同士の性交・性交類似行為が淫行として処罰されることはありません。東京都の条例では第30条で「この条例に違反した者が青少年であるときは、この条例の罰則は、当該青少年の違反行為については、これを適用しない」と示されています。
3、淫行が発覚するケース
淫行は相手の児童が性交などに同意しているケースが多く、密室で行われるためなぜ発覚するのかと疑問に感じるかもしれません。しかし淫行は以下のような経緯で発覚します。
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(1)職務質問を受けて発覚
児童と一緒にホテル街や繁華街を歩いているところ、巡回中の警察官から職務質問を受けて発覚するケースです。制服を着た児童と会社員風の人物が一緒に歩いていれば当然ですが、そうでなくても警察官は見た目や動きから不自然さを察知するものです。
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(2)サイバーパトロールによって発覚
警察のサイバーパトロールで発覚するケースもあります。児童がSNSやネット掲示板などで相手を求める書き込みをしていれば、まずは児童が補導され、児童への調査・捜査によって自身も被疑者として特定されるでしょう。
自らが淫行を募集する書き込みをしていたようなケースでも、発信元を特定されて逮捕されるおそれがあります。 -
(3)スマートフォンの記録から芋づる式に発覚
児童が複数の相手と関係を持っていると、別の相手が淫行の容疑で検挙され、そのスマートフォンに登録された情報などから児童が特定されて、芋づる式に発覚する場合があります。
また、淫行の相手となった児童が補導された際に事情聴取を受け、淫行をしている事実が発覚し、そこから自身が特定される場合も考えられるでしょう。 -
(4)児童の保護者や友人に知られてしまい発覚
淫行事件ではお互いに好意があり継続的に何度も会っているというケースも多いため、児童の保護者や友人に知られてしまい、児童本人が追及されて白状したため発覚する可能性があります。
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4、淫行による逮捕・勾留の可能性と公訴時効
淫行をしてしまった人やその家族にとっては、逮捕や勾留されるのかが大きな不安要素でしょう。淫行による逮捕・勾留の可能性はどれくらいあるのか、公訴時効の年数とあわせて解説します。
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(1)淫行で逮捕される可能性
令和2年の検察統計調査によると、淫行を含む青少年保護育成条例違反の人員総数2096人のうち逮捕されたのは530人でした。逮捕率は約25.2%、約4人に1人が逮捕されている計算になります。全体の逮捕率約34.7%と比べると低いですが、逮捕されにくいとは決していえないでしょう。
なお、逮捕されなかった場合も、それをもって事件が解決したわけではありません。事件化されている以上は在宅のまま捜査を受ける在宅事件として扱われ、会社に通うなどの社会生活を送りながら捜査機関からの呼び出しに応じて取り調べを受けることになります。任意捜査ではあるものの、正当な理由もなく呼び出しに応じないなど捜査に協力しなければ、逃亡や証拠隠滅のおそれが高いとして逮捕されてしまうおそれがあります。 -
(2)淫行で勾留される可能性
同じデータで勾留される可能性も確認しましょう。青少年保護育成条例違反による逮捕人員530人のうち、勾留が許可されたのは424人です。勾留率は80%と非常に高く、いったん逮捕されると多くのケースで勾留されてしまうことが分かります。
勾留されると、原則10日間、延長でさらに10日間の身柄拘束を受けます。外部との面会に制限があるだけでなく、外出や会社に通うこともできないので社会生活への影響は必至です。逮捕・勾留の事実のみをもって会社が解雇することは許されませんが、淫行の事実が会社に知られてしまうリスクは高まるでしょう。 -
(3)淫行の公訴時効
青少年健全育成条例違反の公訴時効は「3年」です(刑事訴訟法250条第2項第6号)。公訴時効は犯罪行為が終わったとき、すなわち淫行をした日から進行します。3年の公訴時効が成立すると検察官が起訴できないので、条例違反に問われず、前科がつくこともありません。
ただし、公訴時効は犯罪の法定刑によって異なるため、自身の行為が別の犯罪にあたれば公訴時効も変わります。たとえば児童買春の公訴時効は5年(刑事訴訟法250条第2項第5号)、強制わいせつ罪は7年(同項第4号)です。
5、淫行により成立する関連犯罪
18歳未満の相手との性交・性交類似行為で成立する犯罪は、青少年健全育成条例違反に限られません。事件の内容によっては以下の犯罪が成立する場合があります。
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(1)児童買春罪
18歳未満の児童に対価を渡して性交・性交類似行為をすれば児童買春罪に該当します。児童買春罪における「対償の供与」とは金銭を与えるだけでなく、プレゼントを買ってあげる、食事をおごる、自宅に泊めるなどの行為も含まれます。
児童買春をすると、児童買春、児童ポルノ禁止法第4条の規定により「5年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処せられます。 -
(2)児童淫行罪
児童福祉法第34条1項6号では「児童に淫行をさせる行為」を禁止しています。児童淫行罪といいます。
「児童に淫行をさせる」とは、児童に事実上の影響力をおよぼし、児童が淫行することを助長し、促進する行為のことです。たとえば教師と生徒、児童の親の交際相手と児童、アルバイト先の上司と部下といった関係下で淫行があった場合に成立するおそれがあります。
「させる」という表現からは、児童と第三者に淫行をさせる行為がイメージされますが、そのようなケースに限らず、自らが児童の相手方となって淫行する場合も本罪の適用を受けます。罰則は「10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方」です(同第60条1項)。 -
(3)児童ポルノ所持等罪
「児童ポルノ」とは、次のいずれかに掲げる児童の姿態を、写真や動画といった視覚により認識することができる方法により描写したものをいいます(児童買春、児童ポルノ禁止法第2条3項)。
- 児童が性交または性交類似行為をしているときの児童の姿態
- 他人が児童の性器などを触ったり、児童が他人の性器などを触ったりしているときの児童の姿態であって、性欲を興奮させまたは刺激するもの
- 衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出・強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させまたは刺激するもの
児童ポルノについては、所持や提供、製造、輸出入、公然陳列といった複数の行為が禁止されています。たとえば児童と淫行した際にその様子を撮影すれば児童ポルノ製造にあたり、撮影した写真や動画を所持していれば児童ポルノ所持にあたります。
罰則は児童ポルノ単純所持が「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」、児童ポルノ製造が「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」です(同第7条1項、2項、4項)。 -
(4)強制わいせつ罪・強制性交等罪
暴行や脅迫を用いてわいせつな行為をすれば刑法第176条の強制わいせつ罪が、暴行や脅迫を用いて性交、口腔性交、肛門性交をすれば刑法第177条の強制性交等罪がそれぞれ成立します。
罰則は強制わいせつ罪が「6か月以上10年以下の懲役」、強制性交等罪が「5年以上20年以下の懲役」です。この章で挙げたほかの犯罪は罰金刑の規定がありますが、強制わいせつ罪と強制性交等罪には罰金刑の規定がないため、有罪になれば刑務所に収監されてしまう可能性が高くなります。
また、どちらの犯罪も被害者の年齢を問わず成立しますが、被害者の年齢が13歳未満の場合は暴行や脅迫が要件とされません。すなわち、13歳未満の相手とわいせつな行為や性交等をした事実のみで罪に問われることになります。
6、淫行してしまったら弁護士に相談を
自分のした行為が淫行にあたるかもしれないと不安なら、早急に弁護士に相談しましょう。
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(1)自首の同行で逮捕を避けられる可能性がある
犯罪が捜査機関に発覚する前に自ら告白して処罰を求める「自首」は、逃亡のおそれを否定する方向にはたらくため、逮捕されない可能性があります。
とはいえ、自首をしても必ず逮捕されないわけではありません。自首後の取り調べで事件について的確に供述できなければ逮捕されてしまう場合もあります。
弁護士が自首に同行すれば、捜査機関に対して事件の内容や逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを的確に説明できるので、逮捕を回避できる可能性が高まります。在宅のまま捜査が進められれば会社を休む必要がなく、事件の事実が会社に知られずに済む可能性も十分あるでしょう。
在宅捜査の場合は実名報道もされないケースが多いので、公務員や著名人などを除けば実名報道を避けられる可能性も高まります。
また、有罪判決が出る場合でも、自首により、刑が減軽される可能性もあります。 -
(2)示談の成立に期待できる
逮捕される前に被害者との示談が成立すると、リスクを冒してまであえて逃亡や証拠隠滅を図るおそれが低いと判断されるため、逮捕を回避できる可能性があります。また検察官は起訴・不起訴を判断するにあたって被害者感情を重視するので、不起訴処分となる可能性も高まります。
ただし、淫行事件の場合は被害者が18歳未満の児童なので、示談の相手方は児童の保護者になるケースが多いでしょう。自分の子どもが性犯罪に巻き込まれたことに強い怒りを持つ保護者も多いので、淫行をした本人が直接示談交渉に臨むのは避けるべきです。
弁護士であれば保護者の感情に配慮しながら丁寧に謝罪の意思を伝え、法的な観点を踏まえて保護者にも納得してもらえるよう交渉できます。 -
(3)刑事処分が軽減される可能性がある
再犯のおそれがない旨を主張すれば、不起訴処分や刑の減軽につながる可能性があります。そのためには、ご家族に監督してもらう、児童に対する性的志向を矯正するために医療機関を受診するといった具体的な再犯防止策を示すことが大切です。
弁護士であれば具体的にどのような行動が必要なのかをアドバイスし、その行動を客観的証拠として検察官や裁判官に示すことができます。
弁護士はほかにも、犯罪の成否に関するアドバイスや取り調べ対応のアドバイス、勾留を回避するための活動など多面的のサポートを展開できます。
7、まとめ
18歳未満の相手との不健全な性交や性交類似行為を淫行といい、青少年健全育成条例違反をはじめとした複数の犯罪にあたるおそれがあります。
心身が未成熟な児童を相手とすることから悪質とみなされやすく、逮捕・勾留、起訴のリスクは高いので、身に覚えがあるのなら早急に弁護士に相談してサポートしてもらいましょう。
淫行をしてしまい不安に感じているのならベリーベスト法律事務所へご相談ください。淫行事件の解決実績が豊富な弁護士が全力でサポートします。
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