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下半身を露出すると何罪に問われる? 成立する犯罪と対応方法を解説
路上や公園などの公共の場で、下半身を露出してしまうと、公然わいせつ罪などの罪に問われる可能性があります。下半身の露出により成立する犯罪は、性犯罪の一種になりますので、万が一逮捕されてしまうと、実名報道などにより仕事や私生活に多大な影響が生じてしまいます。
そのため、安易な気持ちで下半身を露出してしまったという方は、警察に逮捕される前に、早めに弁護士に相談することが大切です。
今回は、下半身を露出した場合に成立する犯罪と逮捕・起訴を回避するための対処法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
この記事で分かること
- 下半身の露出によって問われる可能性がある罪
- 逮捕された場合のその後の流れ
- 下半身の露出による逮捕・前科を回避するために取るべき対応
目次
1、下半身を露出するとどのような罪に問われる?
公園や路上などの公共の場において、下半身を露出すると以下のような罪に問われる可能性があります。
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(1)公然わいせつ罪
公然わいせつ罪とは、不特定または多数の人が認識できる状況で、わいせつな行為をした場合に成立する犯罪です(刑法174条)。不特定または多数の人が認識でいる状況であれば、実際にわいせつ行為を目撃した人がいなかったとしても、公然わいせつ罪は成立します。
また、わいせつ行為とは「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」と定義されますが、これだけでは何を指すのかがわかりません。簡単にいえば、わいせつ性は、個人の主観ではなく、社会常識に基づいて判断されるということです。下半身を露出し、性器が見える状態になっていれば、わいせつな行為にあたるといえるでしょう。
公然わいせつ罪が成立し得る行為を挙げるとすると、以下のようなものが挙げられます。
- 公園や路上で下半身を露出する行為
- 路上や駐車場にとめた車内での性行為
- ライブチャットで下半身を露出して配信する行為
- ホテルの室内であるものの、多数で集まって行う乱交行為
なお、公然わいせつ罪が成立した場合、以下のいずれかの刑罰が科されます。
- 6か月以下の懲役
- 30万円以下の罰金
- 拘留
- 科料
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(2)迷惑防止条例違反
具体的な名称は都道府県によって異なりますが、迷惑防止条例として、「公共の場所または公共の乗り物において卑わいな言動をすること」を禁止しています。
公共の場所とは、道路、公園、駅構内などをいい、公共の乗り物とは、電車、バス、地下鉄などをいいます。また、卑わいな言動とは、性的な言動のうち、相手を羞恥させたり、不安を覚えさせたりするような言動をいいます。
迷惑防止条例の「卑わいな言動」は、公然わいせつ罪の「わいせつな行為」よりも広い概念になりますので、公然わいせつ罪が成立しないような下半身の露出行為であっても、迷惑防止条例違反で処罰されるおそれがあります。
たとえば、下半身を露出して下着姿になるような行為は、迷惑防止条例違反にあたるおそれがあります。
なお、迷惑防止条例に違反した場合の罰則は、都道府県によって異なりますが、たとえば、東京都であれば、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。 -
(3)軽犯罪法違反
軽犯罪法では、以下のような行為を禁止しています(軽犯罪法1条20号)。
公衆の目に触れるような場所において、公衆に嫌悪の情を抱かせるような方法により、尻・もも・その他身体の一部をみだりに露出する行為
下半身を露出する行為は、基本的には、公然わいせつ罪または迷惑防止条例により処罰されますが、いずれにも該当しない軽度の露出に関しては、軽犯罪法により処罰されるおそれが生じます。
下半身の露出が軽犯罪法違反にあたる場合には、拘留または科料に処せられます。
2、下半身の露出で逮捕されることはある? 逮捕により生じるデメリットとは?
下半身露出で逮捕されることはあるのでしょうか。以下では、逮捕の可能性と逮捕により生じる主なデメリットを説明します。
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(1)現行犯逮捕されるケース
現行犯逮捕とは、現に犯罪が行われた状況において、裁判所が発付する逮捕状なしで逮捕することをいいます。下半身を露出する行為は、不特定または多数の人が目撃できる状況で行われますので、以下のようなケースでは、現行犯逮捕される可能性があります。
- 下半身の露出を目撃した人たちに、取り押さえられるケース
- 下半身の露出する不審者を目撃した人が警察に通報し、駆けつけた警察官により取り押さえられるケース
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(2)後日逮捕される可能性もある
下半身を露出して現行犯逮捕されなかったからといって、逮捕されないわけではありません。下半身の露出行為による犯罪は、現行犯逮捕されるケースが多いですが、後日逮捕される可能性もありますので注意が必要です。
目撃者からの通報により、周囲の防犯カメラの映像などを精査した結果、下半身を露出した犯人が特定されれば、裁判所の発付した逮捕状に基づいて逮捕される可能性も十分にあります。 -
(3)下半身の露出で逮捕されたことで生じるデメリット
下半身の露出で逮捕されてしまうと、以下のようなデメリットが生じます。
① 新聞やニュースなどで実名報道をされてしまう
下半身の露出事件で逮捕されたという事件は、非常にインパクトがあり社会的関心も高い事件だといえますので、報道機関により実名報道されてしまうおそれがあります。
② 懲戒処分や退学のリスクがある
下半身の露出により逮捕されてしまうと、職場から懲戒解雇されてしまったり、学校から退学処分を受けたりするリスクがあります。
仮に、懲戒解雇や退学処分を受けなかったとしても、下半身の露出容疑により逮捕されたことが周囲に知れ渡ってしまうと、社会的信用を失うことで職場や学校に居づらくなり、自主退職や自主退学をせざるを得ない状況になることもあるでしょう。
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3、下半身の露出で逮捕された場合の流れ
下半身の露出により逮捕されてしまうと、以下のような流れで刑事手続きが進んでいきます。
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(1)逮捕、取り調べ
被疑者に逃亡または罪証隠滅のおそれがある場合には、現行犯逮捕または後日逮捕により、被疑者の身柄が拘束される可能性があります。警察により逮捕されると、被疑者の身柄は、警察署内の留置施設で拘束され、警察による取り調べを受けることになります。
逮捕には時間制限がありますので、被疑者を逮捕した場合には、48時間以内に被疑者の身柄を解放するか、検察官に送致しなければなりません。 -
(2)検察官送致
被疑者の身柄の送致を受けた、検察では、さらに取り調べを行い、勾留請求を行うかどうかを判断します。検察官が勾留請求をする場合には、送致から24時間以内に裁判所に勾留請求をしなければなりません。
下半身の露出による犯罪は、量刑もそこまで重くはなく、目撃者や防犯カメラの映像により証拠も十分にあるといえますので、勾留請求されず釈放される可能性もあります。この時点で弁護士が動いて検察官と接触できていれば、その可能性を高められるかもしれません。この段階で釈放されれば、その後は在宅事件として手続きが進められます。 -
(3)勾留
裁判所は、検察官による勾留請求があった場合、逃亡のおそれまたは罪証隠滅のおそれといった勾留の要件を満たしているかを踏まえて、勾留するかどうかを判断します。裁判所により勾留決定がされた場合には、原則として10日間の身柄拘束が続きます。
また、勾留には、勾留延長という制度もありますので、勾留延長も認められれば、さらに最長10日間の身柄拘束が続きます。 -
(4)起訴または不起訴
検察官は、勾留期間が満了するまでの間に、事件を起訴するか不起訴にするかを判断します。
起訴された場合には、刑事裁判になりますが、公然わいせつ罪の量刑は、罰金刑が相場ですので、公判手続きという正式な手続きではなく、略式手続きという簡易かつ迅速な手続きで処理される可能性もあります。
他方、事件が不起訴になれば、身柄は解放され、前科が付くということもありません。
4、下半身の露出で逮捕や前科を回避するためにできること
下半身の露出で逮捕されたり、前科が付くことを回避するには、以下のような対応が必要になります。
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(1)捜査機関に発覚する前に自首する
自首とは、捜査機関に犯罪事実が発覚する前に、自ら捜査機関に罪を申告して、処罰を求めることをいいます。
自首をすることで、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがないことを示すことができますので、その後の逮捕を回避できる可能性が高くなります。また、自首は、刑の任意的な減軽事由とされていますので、仮に起訴され裁判になったとしても、罪が軽くなる可能性もあります。 -
(2)被害者との間で示談を成立させる
下半身の露出を目撃した人がいる場合には、その人との間で示談を成立させることができれば、逮捕や起訴を回避できる可能性があります。
ただし、公然わいせつ罪は公共の秩序を乱す犯罪であって、目撃者だけの意思が重視されているわけではないことから、示談をしたからといって、必ず逮捕・起訴を回避できるわけではない点に注意が必要です。 -
(3)早期に弁護士に相談をする
下半身の露出により逮捕や前科を回避したいのであれば、早期に弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士に相談をすれば、自首をすべきかどうかをアドバイスしてくれますし、自首をすべきケースであれば、一緒に警察署に同行してもらうこともできます。
また、下半身の露出を目撃した人は、被疑者とは面識のない人であることが多いため、連絡先などがわからないことも多いです。しかし、弁護士であれば、捜査機関を通じて目撃者の連絡先を入手することもできる可能性が高く、被疑者自身では示談が困難な事案でも示談を進められると期待できます。
弁護士が早期に適切な弁護活動を行うことで、逮捕や起訴のリスクを減らすことができますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
5、まとめ
下半身の露出行為は、公然わいせつ罪、迷惑防止条例違反、軽犯罪法違反に問われる可能性のある行為です。このような行為をすると逮捕される可能性も十分にありますので、安易な気持ちから下半身の露出行為をしてしまったという方は、捜査機関に発覚する前に早めに弁護士に相談するようにしましょう。
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