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性交同意年齢の引き上げ|未成年者との性行為は犯罪の可能性あり!
令和5年7月13日施行の改正刑法により、性交同意年齢が13歳未満から16歳未満に引き上げられました。
これにより、被害者が16歳未満だった場合には、被害者の同意の有無にかかわらず、原則として不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立する可能性があります。また、未成年者との性行為は、不同意性交等罪以外にもさまざまな法律や条例に抵触する可能性があることも、広く知られるべき事柄です。
今回は、性交同意年齢の引き上げによる影響や、未成年者と性行為をするリスクなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
この記事で分かること
- 性交同意年齢の引き上げによって、何が変わったのか?
- 性交同意年齢に満たない未成年との性行為で成立し得る犯罪
- 未成年との性行為で逮捕されたら、弁護士に相談するべき理由
1、性交同意年齢の引き上げで何が変わった?
改正刑法の施行により、令和5年7月13日から性交同意年齢が16歳未満に引き上げられています。性交同意年齢とは、性行為への同意を自分で判断できるとみなされる年齢のことです。
従来は、性交同意年齢は13歳未満とされており、13歳未満の被害者に対して性交等があった場合、その事実さえ立証できれば、罪に問われました。
他方、被害者が13歳以上であった場合には、性行為に同意していないことや、暴行または脅迫を用いて性交等があったことを立証しなければ、罪に問うことはできませんでした。
しかし近年、若年者の未成熟さにつけ込んだ性犯罪が増加しています。そのような状況下、従来の規定では被害者の保護に欠けることから、刑法改正により、性交同意年齢が13歳未満から16歳未満に引き上げられることになりました。
これにより、法改正前は同意があれば処罰の対象外となっていた未成年者との性行為も、今後は被害者が16歳未満であった場合、相手の同意に有無にかかわらず処罰の対象となります。
2、性交同意年齢の引き上げによって成立し得る性犯罪
未成年者と性行為をすると、不同意性交等罪や青少年保護育成条例違反、児童福祉法違反、児童買春・児童ポルノ禁止法違反に抵触する可能性があります。
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(1)不同意性交等罪(旧:強制性交等罪)
不同意性交等罪とは、同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態の相手と性交等を行った場合に成立する犯罪です(刑法177条)。以前は、「強制性交等罪」と呼ばれていたものが、令和5年7月の刑法改正で「不同意性交等罪」という名称に変わりました。
同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態となり得る行為および事由としては、以下のものが挙げられます。
- 暴行または脅迫
- 心身の障害
- アルコールまたは薬物の影響
- 睡眠その他の意識不明瞭
- 不意打ち
- フリーズ
- 虐待による無力感や恐怖心
- 経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮
ただし、上記の行為や事由に該当しない場合でも、性交同意年齢引き上げにより、被害者の年齢および加害者の年齢が以下のいずれかである場合には、性交等があれば不同意性交等罪が成立します。
- 被害者が13歳未満の子ども
- 被害者が13歳以上または16歳未満の子どもでかつ、加害者が5歳以上の年長者
なお、不同意性交等罪が成立すると、5年以上の有期拘禁刑に処せられます。
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(2)青少年保護育成条例違反
多くの都道府県では、青少年保護育成条例を制定し、18歳未満の青少年とのみだらな性交または性交類似行為を禁止しています。いわゆる「淫行条例」と呼ばれるのが、この条例です。
条例の内容や罰則は、都道府県によって異なります。
たとえば東京都では、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」を制定しており、青少年とのみだらな性交等があった場合には、2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。 -
(3)児童福祉法違反
児童福祉法では、18歳未満を「児童」と定義し、児童に淫行させる行為を禁止しています。すなわち、未成年者と性交等を行った場合には、児童福祉法違反となります。
従来、青少年保護育成条例との区別では、「淫行をさせる」だけの一定の影響力がある場合に適用されていましたが、不同意性交と児童福祉法との間での影響力の大小による区別はやや不明瞭になっています。
児童福祉法に違反して、児童と淫行をした場合には、10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらが併科される可能性があります。 -
(4)児童買春・児童ポルノ禁止法違反
児童買春・児童ポルノ禁止法では、児童買春や児童ポルノを規制し、児童を性的虐待や性的搾取から保護することを目的として、主に以下のような行為を禁止しています。
- 児童買春……児童に金品を供与して性行為をさせるなど
- 児童ポルノ製造……児童の裸体を撮影するなど
- 児童ポルノ所持……児童と淫行した様子を撮影した写真・動画を所持するなど
未成年者との性交等が児童買春にあたると、児童買春・児童ポルノ禁止法違反となり、5年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます。
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3、性交同意年齢に満たない未成年者と性行為をした場合のリスク
性交同意年齢に満たない未成年者と性行為をすると、逮捕や実名報道、周囲の方に知られるなどのリスクが生じます。
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(1)逮捕されるリスク
未成年者との性交等がさまざまな犯罪に該当することは、前述のとおりです。加害者が逃亡または証拠隠滅のおそれがあると判断された場合、逮捕による身柄拘束を受ける可能性があります。
逮捕後に引き続き勾留されることにあれば、逮捕日から最長で23日間もの身柄拘束を受けることになります。長期間の身柄拘束となれば、仕事や生活に大きな支障が生じることになるでしょう。 -
(2)実名報道されるリスク
性犯罪は、社会的に関心の高い犯罪のひとつです。そのため、性交同意年齢に満たない未成年者と性行為をして逮捕または起訴されると、報道機関により実名報道されるリスクが考えられます。
実名報道をされると、犯罪内容や加害者の氏名などはインターネット上で半永久的に残ってしまうでしょう。そうして、将来の就職・転職で不利になる、婚約者との婚約が破談になるなどの不利益が生じ得ます。 -
(3)職場に知られるリスク
未成年者との性行為で逮捕されたことが報道されると、職場に知られてしまう可能性があります。
未成年者との性行為は業務外の犯罪ですが、社会的影響力が大きく、会社の信用を大きく害することになりかねないため、懲戒解雇などの重い処分を受けるリスクがあるでしょう。
懲戒解雇に至らなかったとしても、職場に居づらくなり、退職せざるを得ない状況に追い込まれるケースも少なくありません。 -
(4)家族や友人に知られるリスク
未成年者との性行為により逮捕・起訴されたことが家族に知られてしまうと、「性犯罪者とは一緒に生活できない」として離婚を突き付けられるリスクがあります。
また、友人に知られてしまうと、これまでどおりの友人関係を続けることが難しくなり、孤立してしまう可能性もあるでしょう。
4、未成年者との性行為で逮捕された場合の流れ
未成年者との性行為で逮捕されてしまった場合、以下のような流れで刑事手続きが進んでいきます。
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(1)逮捕
警察に逮捕されると、警察署の留置施設で身柄拘束をされることになります。逮捕中は、たとえ家族でも面会することができません。
警察での逮捕には時間制限があるため、警察は逮捕から48時間以内に必要な取り調べを終えて、検察官に被害者の身柄を送致する必要があります。 -
(2)検察官送致
警察から被疑者の身柄の送致を受けた検察官は、必要な取り調べを行い、被疑者の身柄拘束を継続するかどうかを判断します。
検察官が被疑者を引き続き身柄拘束する必要性があると判断すると、裁判所に勾留請求を行います。 -
(3)勾留
裁判所は、被疑者に罪を犯したことを疑う相当な理由があり、かつ以下の3つのうち、いずれかの事由に該当する場合には、勾留決定を行います。
- 住所不定
- 証拠隠滅のおそれ
- 逃亡のおそれ
勾留決定後は原則として10日間の身柄拘束となり、勾留延長も認められてしまうと、さらに10日間拘束され、最長で20日間の勾留となる可能性があります。
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(4)起訴または不起訴の判断
検察官は、勾留期間が満了するまでの間に、起訴または不起訴の判断を行います。
不起訴処分となれば、その時点で身柄は解放され、前科が付くこともありません。 -
(5)刑事裁判
検察官により起訴されると、刑事裁判で有罪・無罪の判断がなされます。
日本の刑事司法では、起訴された事件は99%以上の割合で有罪となっているため、前科を付けたくないのであれば、不起訴処分の獲得に向けた行動が重要です。
なお、起訴後も引き続き身柄拘束が続きますが、保釈制度を利用することで釈放してもらうことができます。
5、未成年者との性行為の悩みをすぐに弁護士に相談するべき理由
未成年者との性行為に関するお悩みは、すぐに弁護士の相談することをおすすめします。
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(1)逮捕や勾留を避けられる可能性がある
未成年者との性行為が原因で逮捕・拘留されてしまうと、最長で23日間もの身柄拘束を受けることになります。長期間の身柄拘束となれば、無断欠勤を理由に会社を解雇されてしまう可能性もあるため、身柄拘束から早めに解放してもらうことが必要です。
弁護士であれば、適切な弁護活動を行うことで、捜査機関による逮捕や勾留を回避できる可能性が高まります。
すでに逮捕されているという場合でも、早期に被害者との示談をまとめることができれば、勾留を阻止して、早期の身柄解放を実現することが可能です。 -
(2)被害者との示談により不起訴になる可能性がある
不同意性交等罪などの嫌疑をかけられたときは、すぐに被害者との示談を行うことが重要といえます。被害者と示談が成立し、宥恕(ゆうじょ)の意思が示されれば、不起訴処分となる可能性が高くなるからです。
ただし、被害者の連絡先を知らなければ示談交渉はできず、加害者本人から接触しようとしても被害者に拒否されてしまう可能性があります。このような場合には、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。
弁護士であれば、捜査機関を通じて被害者の連絡先を入手することが可能で、弁護士が示談交渉の窓口になれば、被害者も交渉に応じてくれる可能性があります。
性犯罪の示談交渉を加害者自身で進めるのは非常に困難であるため、早めに弁護士に相談することがおすすめです。 -
(3)逮捕中に面会できるのは弁護士だけ
警察に逮捕されると、その間はたとえ家族であっても被疑者と面会することはできません。
逮捕期間中は警察よる取り調べを受けることになりますが、不利な内容の調書がとられてしまうと、裁判で不利な証拠として扱われるリスクがあります。逮捕期間中に被疑者と面会できるのは弁護士に限られるため、早めに弁護士に依頼し、被疑者との面会を実現することが重要です。
弁護士であれば、警察の取り調べ対応を熟知していますので、適切なアドバイスをすることで、不利な調書がとられるのを回避することができます。
6、まとめ
令和5年7月13日施行の改正刑法により、性交同意年齢が引き上げられ、未成年者との性行為が犯罪となるリスクが高くなりました。
法改正後に未成年者と性行為をした場合、相手の年齢によっては、お互いの合意に基づく性行為であったとしても処罰対象となりますので、早めに弁護士に相談をすることが大切です。
未成年者との性行為によるトラブルは、刑事事件の経験豊富なベリーベスト法律事務所までご相談ください。元特捜検事が所属する刑事事件専門チームの弁護士が、最善を尽くしてサポートいたします。
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