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風俗店での「本番行為」は犯罪? 成立する犯罪・逮捕後の流れや注意点
風俗店で「本番行為」をした場合、何らかの犯罪に問われるのでしょうか。
風俗店で強引に本番行為をした場合には、犯罪として逮捕されてしまうおそれがあります。また、本番行為をした結果、風俗店とのトラブルに発展し、店側から高額な金銭の支払いを要求されたというケースも少なくありません。
そこで、この記事では、風俗店で本番行為をした場合に成立する犯罪や、相手方や店側と話し合う場合の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士がわかりやすく解説します。
この記事で分かること
- 本番行為によって問われる可能性がある罪とは
- 風俗店側から賠償金を請求された場合の注意点
- 本番行為で逮捕されたらどうなるのか
1、「本番行為」とは
そもそも「本番行為」とはどのような行為を指すのでしょうか。
「本番行為」とは、性風俗店において、男性器を女性器に挿入する性交行為のことを指す俗称です。法律で定義されている言葉ではありません。
そのため、挿入を伴わない疑似性行為(一般的に「素股(すまた)」と呼ばれます)や、手や口で性器を刺激する行為は、本番行為に該当しません。
なお、風俗店が客から金銭を受け取り、従業員に不特定多数と本番行為をさせることは、本来は店側が売春防止法違反として刑罰を受けることになります。
「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。
・売春防止法第3条
何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない。
本番行為をした客が売春防止法違反で逮捕されることはありませんが、次のような刑罰を受ける可能性があります。
2、風俗店での本番行為で、客側が問われる犯罪
風俗店で本番行為をした場合、客側はどのような罪に問われるのでしょうか。またどのような刑罰を受ける可能性があるのでしょうか。
ここでは、風俗店での本番行為をした場合に問われうる罪とその法定刑を解説します。
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(1)不同意性交等罪
風俗店で、相手の明確な同意がないまま、本番行為を強行・強要したような場合には、「不同意性交等罪」に問われる可能性があります。
・刑法第177条1項
一定の原因により、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」、「性交等」をした場合。
・刑法第177条2項
わいせつな行為でないと誤信させたり、人違いをさせること、または相手がそのような誤信をしていることに乗じて「性交等」をした場合。
「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」は、一定の原因として、次のものが明記されています。
- 暴行若しくは脅迫
- 心身の障害
- アルコールまたは薬物の影響
- 睡眠その他の意識不明瞭
- 同意しない意思を形成、表明または全うするいとまの不存在
- 予想と異なる事態との直面に起因する恐怖または驚愕
- 虐待に起因する心理的反応
- 経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮
「性交等」には、性交・肛門性交・口腔性交のほか、膣や肛門に陰茎以外の身体の一部や物を挿入する行為も含まれます。
そのため、相手が拒否できない状況や、抵抗できない状態で無理やり性交等を行うと、不同意性交等罪に問われる可能性が高いでしょう。
不同意性交等が成立した場合には、婚姻関係の有無にかかわらず、「5年以上の有期拘禁刑」に処せられることになります(刑法第177条1項)。さらに、相手方被害者に怪我を負わせた場合には、不同意性交等致傷罪として「無期」または「6年以上の懲役」に処せられます(同第181条2項)。 -
(2)不同意わいせつ罪
風俗店で無理やりわいせつな行為をしようとした場合には、不同意わいせつ罪に問われる可能性があります(刑法第176条1項)。
不同意わいせつ罪の成立要件となる一定の原因としては、「暴行や脅迫」など上記の不同意性交等罪と同様です。不同意性交等罪との違いは、性交等があるかないかです。
たとえば、相手の同意を得ずに無理やり身体や性器を触る・キスをするなどの行為は、わいせつ行為に該当することになります。
しかし、風俗店は性的なサービスを行うことを前提としていますので、不同意わいせつ罪が成立する可能性は低いでしょう。もっとも、キスなどの行為をオプションとしている店で、オプションを申し込まずに無理やりキスなどをしてしまうと、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
不同意わいせつ罪が成立した場合には、婚姻関係の有無にかかわらず、「6月以上10年以下の拘禁刑」が科されます(刑法第176条1項)。さらに、相手方被害者が怪我をした場合には、不同意わいせつ致傷罪として、「無期」または「3年以上の懲役」が科されることになります(同第181条1項)。 -
(3)暴行罪・脅迫罪・強要罪
風俗店で本番行為を強要する中でトラブルが生じると、暴行罪・脅迫罪・強要罪が疑われる事実が生じてしまう可能性もあります。
・暴行罪
暴行罪とは、身体に対して有形力を行使した場合に成立する犯罪です(刑法第208条)。有形力を行使した結果、相手が傷害を負った場合には、傷害罪に問われることになります(同第204条)。
暴行罪が成立した場合には、「2年以下の懲役」若しくは「30万円以下の罰金」または「拘留」若しくは「科料」が科されます。傷害罪が成立した場合には、「15年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」が科されます。
・脅迫罪
脅迫罪とは、「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者」には脅迫罪が成立します(刑法第222条)。「脅迫」とは、人を畏怖させるに足りる害悪の告知のことをいいます。
脅迫罪が成立した場合には「2年以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が科されます。
・強要罪
強要罪とは、生命・身体・自由・名誉・財産に対して害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、「人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した」場合に成立する犯罪です(刑法第223条)
強要罪が成立した場合には、「3年以下の懲役」が科されます。 -
(4)盗撮していた場合は撮影罪に問われる可能性がある
撮影罪とは、正当な理由がないのに、ひそかに、「性的姿態等」を撮影する犯罪のことです。
「性的姿態等」とは、以下のようなものをさします。
- 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)
- 人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられているもの)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
- わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態
たとえば、相手の同意を得ず、ひそかに相手の下着姿やわいせつな行為を撮影すると、撮影罪に該当する可能性があります。
撮影罪が成立した場合には、「3年以下の拘禁刑」または「300万円以下の罰金」が科されることになります。
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3、刑事罰以外にも賠償金を請求される可能性も
風俗店で本番行為をした場合には、犯罪の成否とは別に、店側から賠償金の支払いを請求されてしまうおそれがあります。
店側から賠償金を請求された場合、以下のような点に注意する必要があります。
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(1)罰金と称して賠償金や慰謝料を請求されても安易に支払わない
店側が請求してきた賠償金や慰謝料の支払いには注意が必要です。悪質な風俗店の場合、不相当に過大な賠償金を請求してきたり、一度支払いに応じると追加でどんどん金銭の支払いを要求してきたりするという店も少なくないからです。
店側と示談をする場合には、事前に弁護士に相談しておくことがトラブル防止に有効です。 -
(2)店側が提示した示談書にすぐサインをしない
店側が用意した示談書に署名・押印してしまうと、もし一方的に不利な内容が書かれてあっても、事後的に示談書の無効・取り消しを主張することは難しくなります。
しつこくサインを要求された場合でも、一度持ち帰って検討すると告げてすぐに弁護士に相談することが重要です。 -
(3)そもそも店は刑事事件の当事者ではない
今回問題となっている行為は、あくまでキャストとの間で生じているものであり、本来示談しなければいけない相手はキャストです。店舗による通報を止めてもらいたいなど、店舗と交渉する意義がある場合もありますが、原則として店はお金を請求する根拠を持たない点にも留意が必要です。
4、本番行為で逮捕された場合の流れ
本番行為で逮捕された場合、刑事事件の手続きは以下のとおりです。
- 逮捕・勾留
- 起訴
- 刑事裁判
犯罪の嫌疑で被疑者が警察官に逮捕された場合には、48時間以内に検察官に事件が送致されます(検察官送致)。そして、送致から24時間以内、逮捕時から72時間以内に勾留されるか判断されます。被疑者が勾留された場合には、逮捕から最大23日間の身体拘束が続く可能性があります。
勾留中に検察官が起訴・不起訴の判断を行います。
検察官が起訴すると、刑事裁判が開かれることになり、最終的な被告人の処遇については、裁判所が判決によって判断することになります。
5、風俗トラブルを弁護士に相談すべき理由
風俗トラブルを適切に解決するためには、弁護士に相談することがおすすめです。
ここでは、風俗トラブルを弁護士に相談すべき代表的な理由をご紹介します。
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(1)風俗店側との示談を任せられる
弁護士に依頼すれば、風俗店や被害者スタッフとの示談交渉を任せておくことができます。早い段階で示談が成立すれば、刑事事件化を回避できる可能性があります。仮に、被疑者として逮捕された場合、あらためて当事者である相手方との示談が成立すれば、釈放や不起訴処分の獲得を期待できます。
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(2)不当な金銭要求・紛争の蒸し返しを回避できる
弁護士に任せておけば、店・被害者との間で適切な合意書を作成してもらえます。
不当に高い賠償金を請求してくる場合には、同種事案の相場を提示して適切に反論してもらうことができます。さらに弁護士が作成した合意書には清算条項が入っているため、事後的に紛争が蒸し返されることも回避することができます。 -
(3)逮捕後の刑事弁護に尽力してくれる
弁護人に選任された弁護士は、被害者の早期釈放・不起訴を獲得できるように、刑事弁護に尽力してくれます。逮捕されて、取り調べを受けるときも、弁護士から取り調べに対する具体的なアドバイスを得ることができます。
前述のとおり、刑事手続きにおいては、明確に時間制限や期間が設けられています。そのため、逮捕後はなるべく早い段階から、刑事弁護を受けることが非常に重要となるのです。
6、まとめ
風俗店で本番行為をした場合には、不同意性交・わいせつ罪、暴行・脅迫罪などの犯罪に問われるおそれがあります。
また、店側と示談する場合には、弁護士を間に入れて、適切な内容で合意書を作成しなければ、トラブルを蒸し返されてしまうおそれがあります。
ベリーベスト法律事務所には、刑事事件や風俗トラブルの解決実績が豊富な弁護士が在籍しておりますので、風俗トラブルでお悩みの方は当事務所へご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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