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少年事件で示談は有効? 逮捕された後の流れと示談の有効性
令和元年版の犯罪白書によると、平成30年中に刑法犯・危険運転致死傷・過失運転致死傷などで検挙された未成年の少年は4万4361人、特別法犯で検挙されたのは4354人でした。合計すると5万人弱の少年が、刑事事件の加害者として検挙されたことになります。
少年といえども、一定の年齢を超えれば成人と同じように逮捕されて、刑罰が科せられるおそれがあります。もし自分の子どもが事件を起こしてしまった場合、親としては、「逮捕を回避させてあげたい」「早く釈放させてあげたい」「できる限り処分を軽減させてあげたい」と望むものでしょう。
刑事事件の加害者側は、被害者との「示談」を成立させることで、起訴を免れたり刑罰を軽くできたりする可能性があります。本コラムでは、少年事件と「示談」との関係について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説いたします。
1、少年事件とは?
未成年の子どもが起こした事件は、法律の世界では「少年事件」と呼ばれます。
まず、少年事件の定義や種類について、解説いたします。
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(1)少年事件の定義
「少年事件」とは、性別を問わず、年齢が20歳未満の者が起こした事件のことを指します。つまり、少女が起こした事件であっても、「少年」事件と呼ばれるということです。
少年が刑罰令に触れる行為をはたらくことは、「非行」といいます。20歳未満が起こした非行は、すべて少年事件とされて、成人事件と異なる扱いを受けることになるのです。 -
(2)「少年」の区別
大きな区分けとしては年齢が20歳未満の者を「少年」と呼ばれますが、非行をした少年は、年齢等によってさらに細かく区別されます。
- 犯罪少年:14歳以上で非行のある少年のこと
- 触法少年:14歳未満で非行のある少年のこと
- ぐ犯少年:保護者の監督に服しないなど、性格や環境に照らして、将来罪を犯すおそれのある少年のこと
刑法第41条の定めにより、14歳未満の非行は刑事処罰を受けません。一方で、14歳以上であれば刑事責任があるとみなされて、成人と同様の刑事手続きを受ける場合があるのです。
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(3)少年事件の特徴
少年事件の最大の特徴とは、原則として、刑罰が科せられないことです。成人事件では罪を犯した償いとして刑罰が科せられますが、少年事件では「更生」が目的とされて、性格の矯正や環境の調整を目指した処分が与えられます。
また、成人事件では検察官が裁判所に起訴することで刑罰が決まりますが、少年事件では原則として家庭裁判所にすべての判断が委ねられるのです。
さらに、刑事事件の被疑者や被告人となった成人は弁護人を選任できますが、少年事件では弁護人ではなく「付添人」を選任することになります。
付添人は、「少年が反省していること」や「少年がこれから更生できる可能性がある」ことを、少年審判の場などで第三者に対して説得的に主張する役割を担います。その主張が判決や量刑を左右するという点では、成人事件における弁護人に近い存在です。そのため、付添人になれるのは弁護士に限定されてはいませんが、実際には大半の場合に弁護士が付添人となっております。
2、少年事件の流れとは
少年事件の流れは、少年の年齢が14歳未満であるか、14歳以上であるかによって大きく異なります。
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(1)14歳未満の場合
少年の年齢が14歳に満たない場合、刑法の定めによって刑事責任は問われないので、逮捕もされません。事件を起こしても、児童相談所に通告されて、児童福祉法上の措置をとって事件が終結することが一般的な流れとなっているのです。
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(2)14歳以上の場合
14歳以上の犯罪少年が事件を起こした場合には、成人と同じく逮捕される可能性があります。
逮捕された場合には、48時間以内に、法定刑が罰金以下の事件では家庭裁判所へ、懲役・禁錮などにあたる事件では検察官へと送致されます。
送致を受けた検察官は24時間以内に身柄拘束の要否を検討して、裁判官に勾留または観護措置を請求します。
勾留が認められた場合は、原則10日間、延長によって最長20日間、観護措置となった場合は10日間を限度として、身柄拘束が延長されることになります。
ここまでは、成人事件の場合とおおむね同じ流れになります。
成人事件では、勾留が満期を迎える日までに検察官が起訴・不起訴を決定しますが、少年事件ではすべての事件が家庭裁判所に送致されます。そのため、検察官には少年事件を終結させる権限がないのです。
送致を受けた家庭裁判所は、送致された書類などをもとに調査が実施されて、「少年審判」の要否を検討します。
少年審判とは、成人事件における刑事裁判と同じ位置づけのものとなります。少年の性格や生育環境など、さまざまな事情に照らしたうえで、家庭裁判所が「更生にもっとも適している」と判断した処分が下されるのです。
少年審判で下される可能性のある処分としては、以下のようなものがあります。
- 都道府県知事または児童相談所長送致(18歳未満に限る)
- 保護観察
- 児童自立支援施設送致または児童養護施設送致
- 少年院送致
犯罪の悪質性が高かったり少年の反省が見受けられなかったりして、更生施設に収容して矯正教育を施す必要があると判断された場合には、少年院などに送致されることになります。一方で、「日常生活を送りながらでも、家庭で更生をすることが十分に期待できる」と判断された場合には、保護観察処分で済む場合が多いでしょう。
そして、いずれの処分も必要ないと判断された場合には、「処分なし」(不処分)となるのです。
3、少年事件において示談は有効か?
被害者の存在する刑事事件を起こしてしまった場合、被害者との「示談」を行うことで、事件を穏便に解決させられる可能性が高まります。
少年事件における示談の流れについて、解説いたします。
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(1)示談の意味と重要性
「示談」とは、争いごとを表沙汰にせずに、当事者間の話し合いによって解決することを指します。
刑事事件における示談とは、加害者と被害者が、裁判所の手続きを経ることなく話し合いによって和解して、事件の終結を目指すこととなります。
一般的に、示談では加害者が被害者に対して「示談金」を支払うことで、被害届の取り下げや告訴の取消などの「宥恕(ゆうじょ)」を被害者から得ることになります。
示談金とは、加害者が起こった犯罪によって被害者に発生した損害に対する賠償金のことになります。ケガなどの治療費、休業補償、物的損害の弁済のほか、犯罪によって被害者に発生した精神的苦痛に対する賠償金である「慰謝料」も、示談金の内訳に含まれます。
裁判所で行われる刑事裁判(成人事件の場合)や少年審判(少年審判の場合)は犯罪に関する「刑事責任」を問うものであるのに対して、当事者間で行う示談は損害賠償という「民事責任」に関わるものです。
しかし、示談が成立したということは、被害者が「加害者を許したので、厳しい刑罰を下してほしいという意向はない」とする意思を示したということになります。この事実は、裁判所においても考慮されることになります。
成人事件の場合には、被告人にとって有利な事情としてはたらき、検察官が不起訴処分を下す可能性や、刑罰が軽減される可能性が高まることになるのです。 -
(2)少年事件における示談の効果
少年事件では、検察官が起訴・不起訴を判断するわけではありません。
「全件送致主義」に基づき、すべての事件が家庭裁判所に送致されて、少年審判の要否が検討されます。
そのため、被害者との示談を成立させても、少年審判に付される可能性がゼロになるわけではないのです。
この点については、少年事件における示談は、成人事件の場合と比較すると効果が薄いといえます。
しかし、示談交渉では被害者側と真摯に向き合うことが必要となるため、加害者となった少年自身の更生を促す貴重な機会となります。
少年が被害者に対して謝罪する姿勢を示したという事実は、少年審判においても有利な事情となり、処分を軽くするという結果につながる可能性が高いでしょう。
そのため、少年事件においても、加害者側は被害者側との示談を成立させることを目指すべきなのです。
4、少年事件で示談を検討している場合は弁護士に相談を
子どもが事件を起こしてしまい、被害者との示談を検討している場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)示談成立に向けてのサポートが可能
弁護士であれば、加害者となった少年やその家族の代理人として、示談交渉をすすめることが可能です。
加害者となった少年本人や少年の親が、被害者との示談をすすめることは容易ではありません。被害を受けた相手方は激しく憤っており、感情的になって、示談を拒否することも多いからです。
しかし、公正中立な第三者である弁護士が間に入ることで被害者の警戒心を和らげることができ、示談交渉も開始しやすくなります。
また、示談においては、加害者側の非につけこんで不当に高額な示談金を要求してくる被害者も残念ながら存在します。
示談交渉に弁護士が介在することで、被害者側の不当な要求を退けて、適切な金額で示談を成立させられる可能性が高まるでしょう。 -
(2)逮捕後のサポートも得られる
少年本人が逮捕されている場合には、弁護士によるサポートの必要性がより高まります。
逮捕されて身柄拘束を受けている少年は、慣れない環境と将来への不安から、正常な精神状態を保つことが難しくなります。また、家族といえども、逮捕された当人と面会を行える回数や時間は限られているのです。
しかし、弁護士であれば、いつでも逮捕された少年への接見を行うことができます。そのため、法律的な面だけでなく精神的な面においても、弁護士は少年の支えとなるのです。
また、少年は取調べのプレッシャーや恐怖心から、取調官の言葉に迎合してしまい、不利な供述や事実に反する供述をしてしまうおそれがあります。
弁護士であれば取調べに関する細かなアドバイスを行い、少年が不本意な供述をしてしまった場合でも、毅然として反論を行い少年の権利を守ることができるのです。
5、まとめ
少年事件においては、示談を行うことで、少年の更生を促して、被害者に反省と誠意を伝えることができます。
示談の成立は、少年審判においても少年側にとって有利な事情のひとつとして扱われて、下される処分を軽減できる可能性があります。そのため、もし自分の子どもが逮捕されてしまった場合には、厚生を促すためにも処分を軽減するためにも、被害者との示談交渉をすすめることを検討するべきでしょう。
ベリーベスト法律事務所には、少年事件の解決実績が豊富な弁護士が多数在籍しております。ご子息が逮捕されて不安な方は、まずはベリーベスト法律事務所にまで、お気軽にお問い合わせください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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