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強制性交等致死傷罪で逮捕されたら? 勾留中に弁護士ができること
平成29年7月に施行された改正刑法によって、強姦致死傷罪は「強制性交等致死傷罪」へと罪名が変わり、厳罰化されました。
社会的に厳しい視線が注がれる性犯罪の中でも、人が亡くなっている点においてとりわけ結果が重大であり、有罪になれば大変重い罰を受ける可能性が高いものです。
今回は強制性交等致死傷罪について、犯罪の特徴や罰則の内容、逮捕から勾留、裁判までの流れを中心に解説します。
1、強制性交等致死傷罪とは
まず、強制性交等致死傷罪がどのような犯罪なのかについて解説します。
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(1)性犯罪の種類
刑法が定める性犯罪は大きくわけて「強制わいせつ」と「強制性交等」の2つに分類されます。
強制わいせつの「わいせつ」とは、被害者の性的羞恥心を害する行為を意味しています。具体的には胸や陰部を触る、自分の陰部を押し当てる、無理やり抱きつくなどの行為です。
強制性交等の「性交等」とは、性交、肛門性交、口腔性交の3つの行為を指します。 -
(2)強制性交等罪致死傷罪はどんな罪なのか
強制性交等罪致死傷罪は、前提として強制性交等に関する罪が発生しています。そこでまずは、強制性交等罪に関する罪を確認しましょう。
強制性交等罪(刑法第177条)は、13歳以上の者に対して暴行または脅迫を用いて性交等をする犯罪です。13歳未満の者に対しては手段を問わず成立します。
準強制性交等罪(刑法第178条2項)は、人の心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ、またはその状態にさせて性交等をする犯罪です。
監護者性交等罪(刑法第179条2項)は、監護者であることの影響力を利用して性交等をする犯罪です。
そして強制性交等致死傷罪(刑法第181条2項)は、上記3つの強制性交等に関する罪、もしくはその未遂罪に関連して、人を死傷させる犯罪です。たとえば、次のようなケースが該当します。
- 強制性交等の行為そのものによって被害者を死傷させた
- 性交等をしようとして、殴ったり押し倒したりした際に被害者を死傷させた
- 被害者の抵抗にあったために性交等が未遂に終わったが、被害者が逃げる際に転倒してケガをした
- 被害者が被害に遭ったショックで精神障害を発症した
2、性犯罪は厳罰化の傾向
性犯罪は、刑法改正によって大幅な変更(厳罰化)がおこなわれています。ここでは強制性交等致死傷罪に焦点をあて、改正の概要や罰則の内容を解説します。
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(1)法改正の概要
強制性交等致死傷罪は、かつて強姦致死傷罪と呼ばれた犯罪でした。従前の法定刑は無期または5年以上20年以下の有期懲役でしたが、改正によって「無期又は6年以上の有期懲役」に法定刑が引き上げられています。
また、強制性交等に関する罪で処罰対象となる行為について、改正前は女子への姦淫のみに限定されていたのに対し、性別を撤廃したうえで性交、肛門性交、口腔性交へと拡大されています。以前であれば強制わいせつ致死傷罪に該当した行為も、刑罰がいっそう重い強制性交等致死傷罪にあたる可能性があるということです。 -
(2)重い罰則
強制性交等致死傷罪の法定刑は「無期懲役」または「6年以上20年以下の懲役」です。
無期懲役は、仮釈放が許されない限り、死亡するまで懲役に処せられる制度です。
法務省の「無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について」によれば、無期刑新仮釈放者の平均受刑在所期間は、平成21年~平成30年の10年間におけるすべての年で、30年~35年で推移しています。
犯行の悪質さや事件の内容などから、裁判官は量刑を判断します。
強制性交等致死罪の場合、人を死に至らしめていることから、量刑は極めて重いものとなることが想定されます。
3、逮捕から判決が決まるまで
強制性交等致死罪で逮捕されてから裁判で判決の言い渡しを受けるまでの流れを解説します。
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(1)逮捕から起訴まで
逮捕のあと、警察から取り調べを受け、48時間以内に事件と身柄が検察庁に引き継がれます(これを「送致」といいます)。
そこでは検察官からも取り調べを受け、検察官は24時間以内に勾留請求または起訴・不起訴の判断をおこないます。強制性交等致死傷罪のように重大な事件では、逮捕から72時間以内に起訴・不起訴の判断は困難であるため、引き続き捜査を行うために、勾留請求される可能性があります。
裁判官が勾留を認めれば、被疑者は最長で10日間の勾留を受けます。必要な場合にはさらに10日間の延長が認められるため、これも含めれば勾留期間は最長で20日間となります。 -
(2)起訴から判決まで
強制性交等致死傷罪で起訴されると、裁判が開かれます。この時点では起訴後の勾留に切り替わり、引き続き身柄を拘束されます。起訴後の勾留期限は、最初は2か月ですが、1か月ごとの更新が認められているため実質的に期限はありません。裁判で判決が確定するまで続くことになります。
強制性交等致死罪は、裁判員裁判の対象となりますが、裁判員裁判は「公判前整理手続」といって裁判前の準備期間が設けられます。この準備にはおよそ半年かかるため、その分身柄を拘束される期間が長期化することになります。
また、裁判員裁判は一般市民が参加するため、民意が反映された厳しい量刑判断に傾きやすいという特徴があります。
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4、強制性交等致死罪で逮捕されたら弁護士に相談
強制性交等致死罪の容疑で逮捕された際には、弁護士に相談されることをおすすめいたします。
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(1)起訴前の示談成立を目指す
日本では、起訴後の有罪率が約99%以上と非常に高いため、まずは起訴されないことが重要になります。そのために必要なのは、被害者との示談成立です。示談が成立しても必ず不起訴となるわけではありませんが、一定の被害回復と被害者が抱く処罰感情の低下があったと評価され、たとえ起訴されたとしても、量刑が有利に考慮される可能性もあります。
逮捕されている期間と勾留期間をあわせると最長23日間しか猶予がないため、速やかに被害者との示談交渉を進めるためにも、弁護士へ依頼されることをすすめいたします。 -
(2)示談の難しさ
性犯罪における示談は、被害者との交渉が難航するケースは少なくありません。とくに強制性交等致死では、被害者が亡くなっているため、示談の相手方となる遺族の心情を考えれば、極めて難しく繊細な交渉が求められます。
加害者からの直接の示談交渉を拒否されることも考えられますので、弁護士を介したはたらきかけが必要です。 -
(3)再発防止に向けた活動の重要性
示談とともに重要なのは、再発防止に向けた活動です。
まずは、同居のご家族が本人を監督し、再び犯罪に手を染めないための環境づくりが大切です。
また他には、専門医やカウンセラーがいるクリニックに通い、自らの問題と向き合うことで、二度と同じ過ちを繰り返さないよう治療することも考えられます。
もちろんこれは、本人が罪を認めて深く反省し、更生への意欲をもちあわせることが大前提です。見かけだけの再発防止策を講じたところで、裁判官や裁判員の心には届かないと理解しておくべきでしょう。
5、まとめ
刑法改正によって性犯罪は厳罰化されており、強制性交等致死傷罪についても例外ではありません。最長で無期懲役という重い罰則が規定されている犯罪なので、なるべく早く弁護士へ相談することが大切です。
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