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高校生の子どもが盗撮で逮捕された! 進学や就職は? 親ができること
盗撮は、重大な犯罪行為です。高校生であっても逮捕される可能性も十分にあります。
ただし、早期に適切な対応を取ることで今後の進学や就職などに対する不利益を最小限にとどめることが期待できます。盗撮行為が発覚したときは速やかに弁護士に相談することが重要です。
この記事では、高校生の子どもが盗撮で逮捕された場合の手続きの流れや今後の進学・就職などへの影響、そして親として取るべき対応ついて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、高校生が盗撮したら何罪になる?
高校生が盗撮して問われる可能性がある罪としては、以下のようなものが挙げられます。
罪名や処分の可能性について詳しく解説します。
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(1)性的姿態撮影等処罰法違反(撮影罪)
盗撮は、原則として「性的姿態等撮影処罰法」に基づく撮影罪によって処罰されます。
この法律は、令和5年7月13日に施行され、同日以降の盗撮については「迷惑防止条例」ではなく、撮影罪が適用されるのが基本です。
撮影罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金とされています(性的姿態等撮影処罰法第3条)。 -
(2)都道府県の迷惑防止条例違反
各都道府県が制定している迷惑防止条例でも、盗撮行為が処罰対象とされています。
現在は、撮影罪がありますので、原則として盗撮行為は撮影罪で処罰されますが、撮影罪の施行日前(令和5年7月12日以前)の盗撮行為については、迷惑防止条例違反として処罰されることになります。
迷惑防止条例違反の罰則は、都道府県によって異なります。
例:東京都の場合
1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される可能性があります(東京都迷惑防止条例第8条等)。 -
(3)軽犯罪法違反
軽犯罪法でも、「のぞき行為」を禁止されており、盗撮の態様がこれに該当する場合には処罰の対象になります(軽犯罪法第1条23号)。
ただし、現在は原則として撮影罪が適用されますので、軽犯罪法違反として扱われるのは、撮影罪の要件を満たさないような事案に限られます。
軽犯罪法違反の法定刑は、拘留または科料です。 -
(4)盗撮対象(未成年or成人)による罪の重さの違い
撮影罪は、盗撮対象が未成年者か成人かによって区別をしておらず、どちらに対しても成立します。
しかし、盗撮対象が18歳未満の未成年者であった場合、その内容によっては「児童買春・児童ポルノ禁止法違反」という犯罪が成立する可能性があります。
この場合、撮影罪に加えて別の罪が問われることとなり、成人を対象とした盗撮よりも罪が重くなるおそれがあります(児童買春・児童ポルノ禁止法第7条等)。 -
(5)高校生でも逮捕される可能性はある?
高校生が盗撮をした場合、成人と同様に警察に逮捕される可能性があります。
逮捕の要件は、「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由(嫌疑)」と「逃亡または証拠隠滅のおそれ(必要性)」が必要です。
高校生であっても盗撮をした疑いが明らかで、逃走の可能性や証拠隠滅のリスクがある場合は、逮捕されることもあります。
特に、被害者の人数が多い、同様の行為を繰り返している、学校内や公共の場での犯行など、悪質性が高い場合には、身柄拘束の可能性は高くなるでしょう。
成人が高校生を盗撮した場合は、こちらの記事をご覧ください。
2、高校生が盗撮で逮捕された後の手続き・流れ
高校生が盗撮で逮捕されるとどのような流れで手続きが進むのでしょうか。
以下では、少年犯罪における逮捕後の流れを説明します。
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(1)警察による逮捕
高校生が盗撮で逮捕された場合は、警察署に連行されて、警察官による取り調べを受けることになります。
逮捕されると「被疑者」として扱われ、警察署内の留置施設で最大72時間まで身柄が拘束されます。
この期間内に、警察と検察は引き続き捜査を行い、勾留の要否が判断されます。 -
(2)検察への送致
警察での取り調べが終わると、被疑者の逮捕から48時間以内に検察官に身柄が送致されます。
検察官は改めて取り調べを行い、このまま身柄拘束を続ける必要があるかどうかを検討します。必要だと判断された場合には、送致から24時間以内かつ逮捕から72時間以内に、裁判官に勾留請求が行われます。 -
(3)勾留
裁判官は、被疑者に対して「勾留質問」を行い、勾留の必要性があるかを判断します。
勾留が認められると原則10日間、必要に応じてさらに最長10日間の身柄拘束をされることになります。
ただし、高校生など未成年者が被疑者である場合、勾留はやむを得ないときに限られ、成人よりも要件が厳しく設定されています。 -
(4)家庭裁判所への送致
成人であれば検察官が事件を起訴するか不起訴にするかの判断を行いますが、20歳未満の未成年者が被疑者である場合、原則として事件は家庭裁判所に送致されます。
少年法では、「全件送致主義」と呼ばれる制度で、少年事件はすべて家庭裁判所が適切な処分を判断するという原則です。
家庭裁判所では、非行の内容や少年の性格、家庭環境、生活状況などを調査し、最も適切な処分を選択することになります。 -
(5)観護措置
家庭裁判所は、審判を適切に行うために必要と判断した場合、少年を少年鑑別所に収容する「観護措置」を決定することがあります。
・観護措置とは?
心理検査や行動観察などを通じて少年の資質や性格、生活環境を調査するための措置です。
・期間は?
期間は原則として2週間ですが、一定の事情がある場合には最長8週間まで延長されることもあります。 -
(6)家庭裁判所の審判
家庭裁判所では、犯罪の内容、家庭環境、少年の性格などを考慮して、審判を経て以下のような処分が決定されます。
① 不処分・審判不開始
十分な証拠がない場合や、処分の必要がないと判断された場合。
② 保護処分
再非行防止のための指導や監督が必要とされる場合。
処分の種類としては以下があります。
- 保護観察:社会内で指導・監督を受ける。
- 少年院送致:更生のための矯正教育を受ける施設に収容される。
- 児童自立支援施設送致:家庭環境の改善や生活指導を行う施設に送られる。
③ 検察官送致(逆送)
重大な事件などの場合、成人と同様の刑事裁判にかけるため、事件が検察に送致されます。
- ※お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- ※被害者からのご相談は有料となる場合があります。
3、高校生でも前科がつく可能性は?
高校生が盗撮をしてしまった場合でも、処分の内容によっては将来に大きな影響を及ぼすことがあります。
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(1)保護処分がついた場合
前項までで解説した通り、原則として20歳未満の少年が起こした事件は、家庭裁判所で審判を受け、保護処分などが決定されます。
この場合、「前科」はつきません(少年法第3条・第24条)。 -
(2)盗撮の内容が悪質・重大である場合
しかし、18歳の高校生は「特定少年」として扱われ、盗撮の内容が悪質・重大である場合には、検察に事件を送致(逆送)され、通常の刑事裁判を受ける可能性があります(少年法第62条)。
このようなケースでは、有罪判決となった場合に前科がつき、将来の進学や就職などに不利な影響が生じるおそれがあります。
そのため、特に18歳の高校生が関与した盗撮事件では、早期に弁護士へ相談し、家庭裁判所での適切な処理を目指すことが重要です。
4、未成年が盗撮で前科がつく影響
未成年者の高校生が盗撮をしてしまった場合、今後の学校生活や社会生活においてどのような影響が生じるのでしょうか。
ここでは、報道の可能性や学校処分、進学・就職への影響などについて詳しく見ていきます。
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(1)実名報道やSNS等で特定される可能性がある
高校生が盗撮で逮捕されたとしても、実名報道される可能性はありません。
少年法では、少年の名誉やプライバシーを保護し、少年の更生の機会を確保する目的から少年の実名や顔写真を報道することが禁止されています(少年法第61条)。
① 社会的な関心が高い場合は匿名報道もあり得る
ただし、
・高校生が女子更衣室を盗撮
・公共の場での常習的な盗撮行為
など社会的関心が高い事件の場合には、匿名の形で学校名や居住地域などが報道される可能性もあります。
② 本人が特定される可能性も
また、報道されなくても、SNSやネット掲示板などで情報が拡散され、本人が特定されてしまうケースもあります。
一度拡散された情報は削除が困難で、いわゆる「デジタルタトゥー」として残り続けるおそれがあります。 -
(2)停学・退学処分の可能性がある
① 停学・退学
高校では、盗撮のようなわいせつ行為は重大な校則違反とされるため、事件が学校に発覚すると停学や退学などの処分を受ける可能性があります。
② 大学への推薦
停学や退学処分を回避できたとしても、内申書に記載されるため、大学への推薦を受けられなくなる可能性もあります。
③ 自主退学せざるを得ない事も
また、盗撮をしたといううわさが学校内に広がってしまうと、本人が精神的に追い詰められ、自主退学を選ばざるを得ないケースも少なくありません。 -
(3)将来の就職や進学に影響する可能性が
高校生が盗撮事件を起こした場合、20歳未満であれば少年法に基づく家庭裁判所の審判の対象となり、原則として成人のように前科はつきません。
ただし、保護処分歴や少年事件記録が残りますので、将来再び犯罪を起こしたときに処分が重くなる可能性があります。
また、保護処分歴や少年事件記録は、就職や進学にも悪影響を及ぼすことがあります。
具体的には、以下のような不利益が生じる可能性があります。
- 公務員、教員、警察官など身元調査がある職業に就けない
- 企業の内部調査で引っかかり、就職活動で不利になる
- 大学や専門学校の推薦入試を受けられない
- 内申書に事実が記載されることで進学が難しくなる
このように盗撮事件による処分は、将来の進学や就職にさまざまな影響を及ぼしますので、盗撮事件を起こしてしまったときは、発覚した段階で迅速に弁護士へ相談し、すぐに適切な対応をすることが重要です。
5、親としてできることは?
自分の子どもが盗撮事件を起こしてしまったときに親はどのようなことをしてあげられるのでしょうか。盗撮事件が発覚後に親がとるべき対応を説明します。
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(1)早期の弁護士への相談
自分の子どもが盗撮事件を起こしてしまったときは、できるだけ早く弁護士に相談することが大切です。
今後どうなるのか、学校や進学、就職にどのような影響があるのかなど、保護者としての不安は尽きませんが、弁護士に相談することで、事件の流れや取るべき対応について具体的なアドバイスを受けることができます。
また、すでに盗撮事件で逮捕されてしまっている状況なら、弁護士がすぐに面会に駆けつけて、逮捕された子どもに対して今後の対応をアドバイスすることができます。
逮捕中に面会できるのは弁護士だけですので、本人の不安を少しでも軽減してあげるためにも早めに弁護士に相談するようにしてください。 -
(2)被害者との示談交渉・慰謝料の支払い
盗撮事件では、被害者との示談が成立することで、家庭裁判所での審判不開始や不処分、早期の身柄解放など、有利な結果につながる可能性があります。
しかし、加害者本人や加害者の親から示談の申し入れをしても、被害者側に心理的な抵抗があることが多く、話が進まないケースも少なくありません。
弁護士が窓口になって示談交渉することで、被害者も安心して対応できるようになり、示談交渉がスムーズに進みやすくなります。
また、弁護士は過去の事例や示談金の相場を理解していますので、適切な条件で示談成立を図ることができます。
保護者としては、交渉自体は弁護士に任せ、示談金の準備や必要な書類対応などに専念するのが望ましいでしょう。 -
(3)再犯防止の対策と心理的ケア
盗撮事件を起こした高校生は、処分の行方や将来への不安を大きく抱えていることが多く、精神的に不安定な状態に陥ることもあります。
そのため、親として子どもに寄り添い、落ち着いて話を聞くなど、精神的なサポートを行うことが非常に重要です。特に、子どもの性格や状態をよく理解している親だからこそ、気づける変化や対応できるサポートがあります。
また、盗撮を繰り返しているような場合は、精神的な病気である可能性も考えられます。
その場合には、心療内科や専門のクリニックなどを受診し、必要な治療やカウンセリングを受けることが再犯防止につながることもあります。
6、盗撮は高校生でも処罰の対象に!早期の弁護活動が重要
高校生であっても、盗撮をすれば「性的姿態等撮影処罰法」などの法律により処罰の対象となり、逮捕や家庭裁判所での審判手続に進む可能性があります。
特に18歳の高校生は「特定少年」として刑事裁判に移行することもあり、事件の内容次第では前科がつくおそれもあります。
こうした処分は将来の進学や就職に影響を及ぼしかねません。
そのため、盗撮事件が発覚した場合は、できるだけ早く弁護士に相談し、示談や環境調整などを通じて、審判不開始や不処分を目指すことが重要です。
高校生の子どもが盗撮をしてしまったと知ったとき、親としては、
・逮捕されてしまうのだろうか
・学校は退学になるのだろうか
・将来の進学や就職に影響が生じるのだろうか
など、子どもの将来に対する強い不安を抱えることでしょう。
そのような場合、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
少年事件の経験豊富な弁護士が、子どもの将来にとって最善の結果となるよう尽力します。
※本コラムは公開日当時の内容です。
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