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痴漢として罪にあたり得る行為とは? 逮捕されたら何罪になる?
痴漢とは、公共の場所や乗り物などで性的な言動や卑わいな行為をすることをいいます。たとえば、満員電車で異性の身体を触るなどの行為が典型的な痴漢行為にあたります。
このような痴漢行為をすると刑法の不同意わいせつ罪や都道府県の迷惑防止条例違反などにより処罰される可能性があります。また、痴漢をしていないにもかかわらず痴漢を疑われ冤罪になるリスクも高い犯罪ですので、しっかりと知識を得ておくことが大切です。
本コラムでは、痴漢として罪にあたる行為や痴漢行為で逮捕された場合の流れなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
この記事で分かること
- 痴漢にあたる行為と問われる罪
- 痴漢行為をはたらいて逮捕される可能性
- 逮捕された場合に弁護士に相談するべき理由
1、痴漢にあたる行為とは?
法律上痴漢という定義があるわけではありませんが、一般的に痴漢として認識されている行為は犯罪となるものが多いです。
どのような行為が「痴漢」にあたるのでしょうか。以下では、痴漢にあたる代表的な行為について説明します。
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(1)着衣の上から身体を触る
着衣の上から身体を触る行為は、よくある痴漢行為のひとつです。たとえば、電車内で男性が女性の臀部(でんぶ)などを着衣の上から触る行為が痴漢の典型例といえるでしょう。
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(2)下半身を押し付ける
身体に触れる痴漢行為としては、手で相手の身体を触る方法以外にも、下半身を押し付けることで触る方法もあります。このような痴漢を「押し付け痴漢」といいます。
押し付け痴漢も相手に対して不快な思いをさせる行為ですので、痴漢行為に該当します。 -
(3)下着に手をいれて直接身体を触る
着衣の上から身体を触る行為よりもさらに悪質な痴漢行為として、下着に手をいれて直接身体を触る行為が挙げられます。このような悪質な痴漢行為があった場合には、より重い刑罰が適用される可能性があります。
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(4)衣服に精液をかける
相手に直接触れなくても、痴漢行為が成立するケースもあります。たとえば、相手の衣服に精液をかける行為は、性的な不快感を与えるものといえますので痴漢行為になり得るケースです。
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(5)卑わいな言葉をつぶやく
相手の耳元などで卑わいな言葉をつぶやく行為も痴漢行為にあたります。たとえば、電車やバスなどの公共の乗り物で卑わいな言葉をつぶやく行為などは、周囲の人に不快な感情を抱かせるものですので、痴漢を理由に処罰される可能性があります。
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(6)卑わいな画像を送りつける(エアドロップ痴漢)
近年増えてきている新たな痴漢の手口として「エアドロップ痴漢」というものがあります。これは、iPhoneユーザー同士で動画や画像を共有できる機能を利用して、見ず知らずの相手に卑わいな動画や画像を送りつける行為をいいます。
電車内などで卑わいな画像を送りつけて、相手の困惑する表情を見て楽しむというのがエアドロップ痴漢の手口です。
2、痴漢行為はどのような犯罪に該当する?
痴漢行為は、どのような犯罪に該当するのでしょうか。以下では、痴漢行為をした場合に成立し得る犯罪を説明します。
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(1)迷惑防止条例違反
各都道府県では迷惑防止条例と呼ばれる条例が制定されています。都道府県によって、名称や内容は異なりますが、痴漢行為の多くは、この迷惑防止条例によって処罰されています。
たとえば、東京都では「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」を制定し、以下のような行為を取り締まっています。
- 公共の場所または乗り物において、衣服その他の身に着けるものの上からまたは直接に人の身体に触れる行為
- 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
- 人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。
迷惑防止条例に違反した場合には、東京都であれば6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
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(2)不同意わいせつ罪
不同意わいせつ罪とは、以下の行為または事由などにより、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態にあることに乗じてわいせつな行為をすることで成立する犯罪です(刑法176条1項)。
- 暴行もしくは脅迫を用いることまたはそれらを受けたこと
- 心身の障害を生じされることまたはそれがあること
- アルコールもしくは薬物を摂取させることまたはそれらの影響があること
- 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせることまたはその状態にあること
- 同意しない意思を形成し、表明しまたは全うするいとまがないこと
- 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、もしくは驚愕(きょうがく)させることまたはその事態に直面して恐怖し、もしくは驚愕していること
- 虐待に起因する心理的反応を生じさせることまたはそれがあること
- 経済的または社会的関係上における地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させることまたは憂慮していること
以前は、「強制わいせつ罪」と呼ばれていたものになりますが、令和5年の刑法改正により「不同意わいせつ罪」となり、名称をはじめ処罰の対象となる行為の拡大などがされました。不同意わいせつ罪に該当する行為としては、以下の行為などが挙げられます。
- 陰部や乳房などの性的部位を直接触ったりする行為
- 衣服の上からであっても被害者の抵抗を著しく困難にするような態様での接触行為
不同意わいせつ罪が成立すると、6月以上10年以下の拘禁刑に処せられます。
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(3)器物損壊罪
器物損壊罪とは、故意に他人の物を壊してしまったり、傷つけてしまったりして使えなくすることで成立する犯罪です(刑法261条)。
たとえば、衣服に精液をかける行為により、見知らぬ人の精液が衣服に付着すれば心理的にその衣服を着用することは困難になりますので、衣服としての効用を失わせ使用不能にしたとして器物損壊罪が成立する可能性があります。
器物損壊罪が成立すると、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料に処せられます。 -
(4)わいせつ電磁的記録頒布罪
わいせつ電磁的記録頒布罪とは、わいせつな電磁的記録などを電気通信による方法で頒布することによって成立する犯罪です(刑法175条1項)。
頒布とは、不特定または多数の人に交付することをいいますので、エアドロップ痴漢により不特定または多数の人にわいせつな画像をばらまいた場合には、わいせつ電磁的記録頒布罪が成立する可能性があります。
わいせつ電磁的記録頒布罪が成立した場合には、2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料に処せられ、懲役と罰金が併科されることもあります。
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3、痴漢行為で逮捕されることはある?
痴漢行為で逮捕されることはあるのでしょうか。また、痴漢行為で逮捕された場合にはどのような流れで刑事手続きが進むのでしょうか。
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(1)痴漢行為で逮捕される可能性
罪を犯したとしても必ずしも直ちに逮捕されるわけではありません。逮捕をするためには、罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由があり、「証拠隠滅のおそれ」または「逃亡のおそれ」のいずれかが認められる場合に限り行われます。
痴漢行為をしたとしても、その場で痴漢行為を認めているようなケースであれば、警察署で任意の事情聴取が行われた後、釈放され、在宅事件として捜査が進められることもあります。しかし、痴漢を疑われその場から逃走したようなケースや痴漢行為を否認しているようなケースでは、「証拠隠滅のおそれ」または「逃亡のおそれ」があるとして、現行犯逮捕される可能性があります。
また、痴漢行為をした現場から逃走したとしても、防犯カメラの映像や乗車記録などから被疑者が特定されて、後日逮捕となる可能性もあります。 -
(2)痴漢行為で逮捕された後の流れ
痴漢行為で逮捕された場合、以下のような流れで手続きが進んでいきます。
① 逮捕
痴漢行為で逮捕された場合、被疑者の身柄は、警察署の留置施設に拘束されます。被害者は、身柄拘束中は、警察署内で警察官による取り調べを受けることになります。
② 検察官送致
被疑者を逮捕した警察は、48時間以内に被疑者の身柄を検察官に送致しなければなりません。検察官は、被疑者の身柄の送致を受けたときから24時間以内に、必要な取り調べを行い、勾留請求するかどうかを判断します。
③ 勾留
検察官が勾留請求を行い、裁判所が勾留を決定した場合には、勾留請求日から10日間の身柄拘束が続きます。勾留は、延長が認められれば、さらに最長10日間の身柄拘束が続くこともあり、逮捕から最長で23日間の身柄拘束を受ける可能性があります。
④ 起訴または不起訴
検察官は、勾留期限が満了するまでの間に、事件を起訴するか不起訴にするかの判断を行います。事件が起訴された場合には、刑事裁判が行われ、有罪となれば前科が付くことになります。他方、不起訴になれば被疑者の身柄は解放され、前科が付くこともありません。
4、痴漢行為をはたらいて逮捕されたときは早急に弁護士に相談を
痴漢行為をはたらいて逮捕されてしまった場合には、できる限り早めに弁護士に相談するようにしましょう。
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(1)不起訴処分を獲得できる可能性が高くなる
痴漢行為は、被害者がいる犯罪になりますので、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。
しかし、痴漢行為は、行為の性質上、お互いに面識がないのが通常ですので、示談交渉をしたくても痴漢被害を受けた相手の連絡先がわからないことが多いといえます。
そのような場合でも弁護士なら捜査機関を通じて被害者と連絡を取れる可能性もありますので、本人では示談交渉ができないケースでも示談成立に向けて対応することができます。 -
(2)早期の身柄解放が期待できる
痴漢事件により逮捕・勾留されてしまうと、最大で23日間も身柄拘束を受ける可能性があります。長期間の身柄拘束を受けると、仕事や学校にも影響が生じる可能性がありますので、できる限り早期に身柄拘束からの解放を目指すことが重要です。
身柄拘束を受けている被疑者本人が自ら身柄拘束の解放に向けた活動を行うことができませんので、早期の身柄解放を希望する場合には、弁護士のサポートが不可欠となります。 -
(3)取り調べに対するアドバイスができる
捜査機関による取り調べの内容は、供述調書という書面にまとめられ、裁判の証拠となります。一度調書にまとめられた内容については、後日、勘違いだったとして撤回することは困難ですので、慎重に対応することが求められます。
しかし取り調べがどのように進むかなど、わからないことも多いため、捜査機関の誘導に従って不利な調書がとられる可能性も考えられます。そのため早期に弁護士へ依頼し、取り調べに対するアドバイスを受けることが必要です。 -
(4)冤罪を回避するためのサポートができる
痴漢は、冤罪の多い犯罪のひとつです。すぐに解放されたいからといって、やってもいない痴漢を認めてしまうと、解雇や退学など取り返しのつかない事態になることもあります。
痴漢の疑いをかけられた場合、本当にやっていないのであれば、「罪を認めない」、「逃亡しない」という対応が必要です。また、ご自身だけではどのように対応すればよいか判断に迷うケースも多いと思いますので、痴漢を疑われたときはすぐに弁護士に相談することが大切です。
ベリーベスト法律事務所では、痴漢冤罪による被害を少しでも減らしたいという思いから、「痴漢冤罪顧問弁護士 緊急ダイヤルサービス」を提供しています。このサービスを利用していれば、万が一冤罪を疑われた場合でもすぐに弁護士に依頼することができますので、電車通勤の多い方などは利用を検討してみるとよいでしょう。
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5、まとめ
痴漢行為には、さまざまな手口があります。痴漢行為をはたらいて逮捕されれば、最長で23日間の身柄拘束を受ける可能性があり、日常生活にも影響を及ぼすことになります。また起訴されて有罪判決となれば、前科がついてしまうため、前科や重い処分を回避するためには弁護士のサポートが不可欠です。
痴漢行為をしてしまったという方や痴漢行為の疑いをかけられてしまったという方は、刑事弁護の実績が豊富なベリーベスト法律事務所に早めにご相談ください。
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